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第28回 母子健康協会シンポジウム 季節と子どもの病気
3.救急よりみた子どもの傷病
北九州市立八幡病院副院長・小児救急センター長 市川 光太郎 先生



4.呼吸器疾患 — 呼吸苦

 次は、呼吸器の病気です。これも非常に多いので、たくさん経験なさっておられると思いますけれども、急な発症ということで言うと、気道異物というのが一番困る病気であります。他には園に預ける時間帯ではなくて、夜中に多いクループという病気があります。クループ症候群と呼んでいます。そういう突然の咳き込みがあるのと、急な発症もありますが、時々そんな症状があった経験があるという、いわゆる喘鳴を伴った喘息性疾患、これは非常に多いので、たくさん経験なさっているだろうと思います。
 そこで、異様にヨダレが出るという場合には、クループだとか、急性喉頭蓋炎という非常に怖い病気も(先ほどのインフルエンザ菌で起こる病気です)あります。現実的に知っておいていただきたい便利なポイント(表7)というのはウロウロ歩き回っているとか、座って遊んでいるとき、すなわち起きている時にはほとんど咳が出ないのに、昼寝の時間になって寝かせたら咳がどんどん出だす。眠ると気管支が細くなって咳が出てしまうというのは、喘息性疾患の特徴ですので、起きているときにはほとんど耳につかなかったのに、寝たらかなり咳き込み出したというときには、そういう病気を家族にサジェスチョンしていただければと思います。

  • 起きている時は元気なのに、横になる(眠る)と咳漱が増悪するのは喘息性疾患である
  • 肺炎など下気道感染症では高熱が出るとは限らないし、元気が良い(ただ、遊びが長続きがしない、夜は元気がなくなるなど微妙な変化はある)肺炎もある
  • 咳き込み嘔吐は一緒に痰も出て、嘔吐後は却って呼吸は楽になることも多く、さほど心配する必要はない(欲しがれば、すぐに飲食させてもよい)
  • 喘息性疾患では急激な(息がはずむような)運動や激しい啼泣、笑い転げることで咳漱が誘発されることがある(運動誘発性喘息)
  • 突然の咳き込み(特に食事中など)は異物誤嚥を考慮すべきで、ピーナッツなどの豆類やキュウリ・セロリなどが多い
  • 臼歯の生えていない3歳未満児にはこれらの食材は与えないこと

表7 知っておくと便利なポイント(呼吸器系疾患)

 肺炎というのは一般的に怖がられるし、救急ではいろいろな思いがあるのですけれども、決して肺炎だから高熱が出るというわけではなくて、日中はほぼ生活可能な微熱ぐらいで、夜になると熱が上がってくる。だから、ある意味で平気で保育園に預けるお母さん方も少なくないと思います。3日、4日たって肺炎がきちっとでき上がって、肺炎だったというのがわかるということがあります。昼間あまり熱が出ずに夜に出るというのは、一般的に体が疲れたときに熱が上がるという形ですので、園の先生方が経験しにくい肺炎もあります。
 喘息性疾患では、急に笑い転げたら、それから咳が止まらなくなるとか、泣き叫んで咳が止まらなくなるとか、急に走り回った後に咳き込むとか、そういう運動誘発性喘息というのがあります。年長児が多いんですけれども、小さいお子さんでもときどき経験しますので、覚えていただきたいと思います。
 「こんにゃくゼリー」で窒息で亡くなったというのをご存知と思いますが、実は厚労省が研究班をこの一月に立ち上げて、昨日、病院に厚労省の方が来られたのですが。私も、どれだけ窒息が起こっているかは知りませんでしたけれども、毎年、日本でお年寄りを含めて四千人亡くなっているそうです。お年寄りがほとんどで、子どもはそんなに多くないのですけれども、なぜこんにゃくゼリーで窒息が起こったかというのを研究し、安全な食品指導をするということです。
 現実的には窒息までいかなくても、もっと小さいかけらを吸い込んで気道異物ということが起こります。これは一番多いのはピーナツとかの豆類です。そして、幼稚園、保育園の食事で出るかどうかわかりませんけれども、ニンジンだとかキュウリだとかセロリだとか、まだ火が通っていない硬い状態での事故は意外と多いですし、小児救急医学会で報告されたのは、東北地方のイクラというのもあります。
 いずれにしても、食事は楽しく食べないといけないですけれども、自分の幼少時を思い出しても、本当に葬式みたいに黙って食べていた思い出があります。外国の人みたいに、話しながら楽しい食事をと言いますが、その度が過ぎると喉に引っかけてしまうということがありますので、注意を散漫させない食事の仕方…そういう意味ではテレビを見ながらとか、ものを食べているときに急に驚かすとか、そういうことはしない。気道異物というのは少なくないことで、肺炎だと思っていたら実はその原因が気道異物だったということがありますので、幼稚園、保育園での食事のときにもそういうところを少し注意して、食事中に突然咳き込み出したら、それを考えていただかないといけないと思います。
 なぜピーナツを小さい子にやってはいけないかというと、臼歯が生えるのが大体三歳過ぎなのです。それが生えてからでないと、かなりの高率で気道異物を起こしてしまうと言われています。だから、気道異物で来られる患者さんはほとんど3歳未満で、1歳代から2歳。発達障害の方は別ですけれども、一般の健康児は3歳以下ですので、3歳を過ぎるまで噛み砕く必要のあるピーナツとかはやってはいけない。それに準じた硬めの食材は使わないようにされていたほうがいいと思います。



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