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第26回 母子健康協会シンポジウム 保育における歯の問題と対応
4.総合討論(4)



− 永久歯ですとどのぐらいからでしょうか

井上 永久歯に生えかわってからという場合も、生えたてというのは、意外と歯が不正に生えてくることが多いのです。上の歯がハの字に生えるとかいうのもわりと正常の範囲です。永久歯への生えかわりが進んで前歯が4本ぐらい出てきても、どうしても並びが悪いというような状況ですと、歯並びのほうの対応を考えることがあります。ただ、余分な歯があるということ、また、脇の歯が少ないとかいうことで歯並びの不正が出ることもあるので、状況的に不安だったら、歯科のほうで相談して、エックス線写真で、余分な歯があるかとか、脇の歯がどうかとか、永久歯の具合もよく観察されるのがよろしいかと思います。

— 「家では食後に歯磨きさせているので園でもお願いします」と保護者から言われましたが、幼稚園での歯磨き、むし歯予防についてどこまですればいいのでしょうか。今はお弁当のあとに水でうがいをさせています

前田 お弁当のあとに白湯を飲むとか、白湯でうがいするということは大変結構だと思います。もっといいのは何かといいますと、機械的に歯ブラシで汚れを取ってもらいたいということですので、歯磨きの回数としては、食事のあと、口の中にものを入れたあとにやるという形を励行すれば、まずむし歯にならないと思います。園で、先生も一緒に子どもたちと歯ブラシを持って、簡単でいいです。そんなに時間をかけることはありません。本当に少しの時間で結構です。ただ、お子さんが暴れながらやっていると、転んだときに歯ブラシがのどに突っ込むという事故も起きます。ですから、座って、子どもたちが暴れないようにしてください。それだけ注意が必要だと思います。たまに、歯ブラシを突っ込んでしまうとか、箸を突っ込んでしまうとか、のどの頭蓋のほうに行ってしまうということもありますので、気をつけられたほうがいいと思います。

— ごく基本的なことですが、乳歯から永久歯に生えかわる順番があるのですか

前田 乳歯が生える順番、それから永久歯は年齢とともにどこから生えてくるかということですが、あえて言うならば、最近ちょっと違ってきたのは、私たちが学生時代、いまから30年ほど前ですが、乳歯から永久歯になって、永久歯が一番最初に生えてくるのは6歳臼歯というふうに講義でも受けましたし、試験にも出たのですけれども、いま、前歯のほうが先に出る頻度が高くなっています。
 これはどういうことが原因かということがいろいろ言われていますけれども、明確な化学的根拠はございません。顎骨が小さくなっているとか、歯が生える場所が少なくなっているのではないかとか、いろいろなことが言われていますけれども、まだEBMは十分ありません。

— よく上唇小帯が切れるのですけれども、これは心配ないのですか

井上 出血がひどかった場合には、縫合といって縫い合わせたほうがいい場合もありますし、ちょっとした切れ方で、すぐ止血するようでしたら、消毒等で、園で様子を見られてもよろしいと思います。切れ方の状況次第ですね。

前田 上唇小帯の役目もまだ十分にデータとしては出ていないのです。真ん中にあるものですから、唇の位置を決定するのではないかと思いますけれども、上唇小帯を外傷で切ってしまってほとんどなくなった子どもは、うまくしゃべれないかというと、しゃべれるんですね。ですから、しゃべるとか、摂食とか、そういうものに対してはそんなに大きな役目はしていないのではないかと思います。けれども、まさか切った群と切らない群などというデータはできませんので、データとしての化学的根拠はありません。小帯が切れてもそんなに心配はありません。いま井上先生がおっしゃったように、出血の問題をしっかりとやってもらうということが大事だと思います。特に新生児等におきましては、ビタミンKの欠乏の問題で出血傾向があるということもありますので、その辺のことがあるかもしれません。

— 以前、研修で、ガムはダラダラ食い、長時間口の中にあるのでむし歯のもとになるということで、むしろ食べないほうがいいという指導を受けたことがありますけれども、短時間であれば噛む力のトレーニングになってよいのでしょうか

前田 最近、ガムの中にキシリトールという糖が入っていまして、実験データで、先ほど言いましたように、不溶性グルカンに置きかえる酵素をミュータンスは持っていますけれども、キシリトールに対しては不溶性グルカンをつくれないということがありまして、確かにむし歯にほとんどならないという形であります。ただ我々としては、日本の文化で、子どもたちがいつもクチャクチャやっているのが本当にいいのかなと思います。歯のためには多少いいかもしれないけれども、キシリトールのガムを頻繁に噛むのは、日本の文化、行儀を考えると、賛成しきれないかなというところでございます。

前川 いま言った理由で、小児歯科と小児科は、あまり小さい子がピチャピチャとガムを噛むのはなじまないので、効果はいざ知らず、あまり勧めてはいないということです。

井上 もう一つ、お子さんのほうに理解力がついてから、ガムを例えば食後にちゃんと噛ませる。フィンランドあたりで齲蝕予防効果があるというのは、食後、ちゃんと5分間しっかりガムを噛むと、そういうデータで齲蝕予防になるというデータが出ているわけです。
 ところが、日本で、単なるおやつに取り入れてちょっとガムを噛んだから本当にむし歯予防になるかというと、かなり疑問がありますし、またお子さんが自分で選んだときに、どちらかというとデンタルガムよりもっと刺激的な、においとか味のいいガムを選んでしまう。ガムを噛むこと自体が習慣づいてしまうと、お子さんがデンタルガムをちゃんと選んでくれるかどうか保証がありません。生活習慣としての面からそういうことを考えられたほうがいいかなと思います。




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