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第26回 母子健康協会シンポジウム 保育における歯の問題と対応
4.総合討論(5)



― 現在2歳の男の子、日中ほとんど指しゃぶりをしている。遊びも、短時間なら指を外すときもある。給食時は外していますが

― 指しゃぶりをしている子ども2歳半に声かけでやめさせることは、子どもにとって精神的に苦痛になり、やめさせる効果を逆に悪くしてしまっているということでよろしいでしょうか

― 2歳半でよだれもひどい。母親も気にしていない。情緒、子ども、不安定気味。遊びに誘うようにしているが、常にさせたままでよいのでしょうか


前川 給食時は外しているというのは当たり前ですよね(笑)。指しゃぶりをしていたら御飯食べられないものね。あとの質問は、いずれも年齢が2歳から2歳半です。
 指しゃぶりそのものよりも、こういう子はどうして指しゃぶりをしているのだろうかということからまず考えてほしいのです。一つは、あまり触れ合いをしてもらえなくて寂しいのですね。あるいは、親に「指しゃぶりは悪いものだ、悪いものだ」と言われて、かつあまりかまってもらえないとか、いろいろことがある。そのときにして欲しいのは、皆様の園ではほとんど紙おむつを使っていると思うんです。布おむつを使っている園の方、います? (挙手あり) ああ、うれしいね。
 そうしたら、おむつをかえるときに、かえるだけではなくて、語りかけたり、さすったり、抱っこしたりとか、うんとスキンシップして欲しいのです。そういう子には特におむつをかえるときの触れ合いを、普通だったら1分のところを5分にするようにして下さい。おむつは一日何回も絶対かえますから。そうすると、すごく触れ合いがに良いのです。そういうことで、おむつをかえでほかの遊びに誘うとかです。
 それからさっき言ったように、そういう子どもは昼寝のときに、「何とかちゃん、いらっしゃい」と言って、片方の手で背中をさすりながら子守唄でも歌ってあげると、それだけでだんだん情緒が安定してくるのではないかと思うのです。
 指しゃぶりが悪いもの、やめさせなくてはいけないということよりも、その子がどんな気持ちでいるかということを考えて、それを満たすようなことをやってあげて下さい。それで、ぜひご両親の方に、「何とかちゃん、きょうおむつかえるときに、大好き、大好きだとか、抱っこしたら非常に喜んだのよ、うちでやってみて」とか、「お昼寝のときにさすってあげたらすごく満足そうな顔してよく寝たんだけど」とか言うと、親もだんだん家でかかわり方が変わってくると思うのです。そういうことからアプローチされたらどうでしょうか。

―  1歳過ぎぐらいから離乳食の咀嚼の悪くなる園児がいます。 この子は母乳を2歳まで続けていたり、おしゃぶりしたりします。 食行動と咀嚼との関係はあるのでしょうか

前川 食行動の問題というのは、食事の雰囲気を楽しくして周りがそれをやっていると、自然と治ってくるものなのです。一番いけないのは、食事のたびに、こうしちゃいけない、こうしちゃいけないと言うと、子どもはますます嫌になってしまう。
 それから、食欲は子どもが決めるもので、保育士さんとか親が決めるものではないのです。たくさん食べる子、少ない子というのも、あまりそれを評価の対象にしないで欲しいのです。たくさん食べる子は逆に効率が悪いのですね。たくさん食べてウンチばかりしていて(笑)。逆に少ししか食べない子は、ガソリンが少しで燃費がいい車だと思っていればいい。ものの見方と考え方ですから、食欲だけは、子どもが元気で走り回っていればあまり気にしないで欲しいというのが私の考え方ですけれども、いかがでしょう。

井上 私どもで、食べ方の問題とお子さんの状況を調査しますと、日常生活で遊びにうまく集中できないとか、普段いろいろなことにとけ込みにくいとか、不活発なお子さんというのは、食欲も出ないし、いつまでも口にためているとか、そういう食べ方をするお子さんが結構多い。そういうお子さんは、夜寝るのが遅い場合が多く、日常の生活リズムをうまく整えてあげると、かなり食欲も改善することがありますので、そこら辺を見ていただくとよろしいかと思います。特に食欲がなくて、食べたくなくて、しょっちゅう言われないと食べる気もなくて、いつまでもためているようなお子さんは、全体に、少食とか、食べ過ぎとか、そういう問題ではなくて、生活全般にアプローチが必要かなと思っています。

前川 まさにその通りです。「生活リズム」なのですね。それから夜更かし。日本の子どもは世界一夜更かしですから。悪いということよりも、こういうふうにお母さんに話してください。人間の子どもというのは「寝る子は育つ」というでしょう。夜寝ると成長ホルモンが出て大きくなるのです。それから、昼間活発に遊ぶというのも、メラトニンとか、コルチゾールとか、いろいろホルモンが関係しているので、暗くなったら寝て、夜が明けたら起きて走り回るというのが子どもが大きくなるコツなのです。
 地球リズムが24時間で、生体リズムが25時間です。それは朝起きて光を見ることによって調節しているのです。それが狂うと、昼間起きていても寝ている状態、寝ていて今度は起きている状態になって、狂ってしまう。そうすると、大きくなって学校とか社会に出ても、使いものにならなくなってしまうのです。それが困るから、夜更かしは悪いんだよということを、よく言ってほしいのです。とにかく子どもは早く寝かせるというのはそういうことなので。いま一番困っているのは「生活のリズム」なのです。活発に遊ばせる。結局、座ってテレビを見ていれば楽ですからね。そういうことで動かない子どもがいる。さっき先生おっしゃったように、食欲がないとか、食べないとか、そりゃそうですよね、そういうことになっている。ですから、園でもぜひ、暴れさせて、けじめをつけるように、せめて心がけてください。
 親を変えるというのはなかなか難しい問題です。ですけれども、それは話し合って相手の立場を聞いて、何かするには必ずそれなりの理由があるのです。ですから、そういう親がいたら、親の状態とか気持ちを聞いて、ゆっくり話し合って、話し合っているうちに、ああ、こういうことが子どもにこういうふうに影響しているのか、と気がつくようにするのが一番良いのです。親を、犯人捜しで悪者にしたら、親は二度と乗ってきませんから、それらのことがなかなか難しいと思いますけれども、むしろそういうときには、園長さんとか年上の主任さんに任せられたらいいと思います。

― 齲蝕の発症の四大要因のところで、齲歯の因子として、周産期の影響ということで話されましたが、具体的にはどういうことでしょうか

前田 歯の芽のところから石灰化というのは、ちょうど周産期の頃に起きますので、周産期異常です。例えば脳性麻痺のお子さんになりますと、歯が非常に弱い。石灰化の状態で歯が出てくる。歯がボソボソの小さな欠損の状態がよくあるわけです。また、歯がちょうどできてくる周産期の頃、またはその後もありますけれども、非常に高い熱が出たということになりますと、歯の帯状に石灰化の悪い層が出てきます。ですから我々が歯を診ますと、「このお子さんは何歳頃に大きな病気をしましたね」ということを聞くと、合うわけです。そういう意味では歯の石灰化は既往歴になります。
 また、副甲状腺機能低下症という病気になりますと、カルシウムとリンのバランスが狂いますので、そういうお子さんは歯がボロボロになります。それからエナメル質形成不全症、これは、染色体の上での位置も塩基配列もわかっていまして、ごく稀ですが遺伝的にエナメル質の形成不全が起きるという病気もございます。

― ミュータンス連鎖球菌の親子間の相同性について、母親ばかりでなくて周りの大人も歯を清潔に、ということをもっと詳しく教えて下さい

前田 主に、相同性から見ますと、母親とお子さんの遺伝子は非常に似ている、同じということです。母親からだいたいミュータンス連鎖球菌は来るという理解でいいと思いますけれども、これは絶対母親だけではなくて、父親、あるいはおじいちゃんおばあちゃん、 特におじいちゃんおばあちゃんが食べたものを直接あげるなんていうことをやりますと、おじいちゃんおばあちゃんは口の中があまりきれいではない人がたまにいますから、子どもに接種しているみたいもので、我々がマウスに細菌を入れているみたいなことをやるわけです(笑)。それはちょっとやめたほうがいいかなということです。



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