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第27回 母子健康協会シンポジウム 子どもが育つ保育
3.絵本の読み聞かせ 〜心の処方箋〜
吉村小児科院長・日本小児科医会常任理事 内海 裕美



子どもたちに愛される体験のプレゼント

 「手当て」という言葉があります。お腹痛いよオと言ったときに手を当ててやってあげる、足をさすってあげる、それだけで子どもの痛みがやわらぐ。例えば保育園に園医として行ったとき、何でもない子が「ここが痛いの」とか言って来るわけです。この子はいつもこうなんですと保育士さんが言うんだけれども、ちょっとおいでと言って、全部診てあげて、痛いと訴える場所もじっくり診てあげて、「何でもないよ」と言うと、何でもなくなるんですね。ところが、ちょろちょろっと診て「何でもないよ」と言うと、いつまでも痛い、痛いと言うわけです(笑)。だから、「ここが痛いの」というのは「こっち見て」のサインなんですね。「こっち見て」と言ったら、特に小さいうちはこっちを見てあげてほしいと思います。
 いまの日本の育児は、親子関係を見ていると、抱っこしてほしいときに抱っこしてあげない。早く自立させようとする。ところがひとりで歩きたい、自分で決めたいというときに、はがい締めにして親の言うとおりにしようとするという子育てがものすごく低年齢化しています。
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歳児の男の子がとても反抗するというので、お母さんに来てもらったのですけど、5歳だと言葉をしゃべってくれますので、「どうして?」と言うと、最終的には「お母さんにもっとやさしく怒ってほしい」と言ったんですね。お母さんをちらっと見て、「お母さんそんなに怒るの?」と言ったら、「ハイ、たぶん私はものすごく口うるさいほうだと思います」。「でも、怒ってほしくないらしいよ」と言って、2週間我慢してもらったら、とてもいい子になった。片づけなさいと言わなくても片づけるようになりましたというんですね。やはり言い親が過ぎる。子どもは、信用されたい、大事にされたいという気持ちでいっぱいです。
 私が絵本の読み聞かせを始めたときに年長さんで気になる子がいました。絵本の読み聞かせを始めますよと言うと、パーッと集まって真剣に準備できる子、こんにちはと挨拶すると普通に挨拶のできる子がほとんどなのに、パンチしてきたり、私のお尻をさわってみたり、妙なかかわり方をする男の子です。それで絵本の読み聞かせを始めると、この絵本が興味がなければよそへ行けばいいものを、ほかの絵本を持ってきて、わざと私の目の前で広げて読むんです。それは、上手にかかわれない、でも、かかわってほしいのです。後で園長先生にお聞きしたら、とても複雑なご家庭の事情があって、やはり親子のかかわりが薄い。それで、その子にどうしたかというと、保育園の保育士さんはそんなにえこひいきはできないでしょうけれども、園医はできるんですね。みんなに読み終わったあとに、ちょっとおいでと言って、その子の好きな絵本を2、3冊、ずっとつき合っていたわけです。そうしてしばらくしたら、こんにちはと言ったらこんにちはをするようになりましたし、ちゃんとしたかかわりが出来るように変わってきたのです。わざとしなくても、普通にかかわってもらえるんだということがその子の中でわかってくると、普通になるんですね。
 違うことをしないとかかわってもらえない、目立たないとかかわってもらえないという立場にあった子たちは、そういう態度を示すので、何かおかしなこと、普通の子と違うなといったときには、その子が背負っているものは結構重たいものがあるというふうに考えていただいて、その子の目線に合わせた保育なり絵本なりを探していただいて、そこでかかわる。もちろん手遊びだとか、その子が縄跳びが好きならそれでかかわってあげてもいいと思いますけれども、その子に「自分にしっかり向いてくれる人がいる」ということを感じさせるには、もしみなさんやその子が絵本が好きであれば、読み聞かせを通してその子どもとかかわることで非常に勉強になります。この子は何が好きなんだろうかとか、どういうセリフが好きなんだろうかとか、いい絵本に出会うと子どもの遊びが絵本に変わります。絵本の中の登場人物になったりする。



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