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第27回 母子健康協会シンポジウム 子どもが育つ保育
3.絵本の読み聞かせ 〜心の処方箋〜
吉村小児科院長・日本小児科医会常任理事 内海 裕美



豊かな言葉を生み出す

 夕暮れになってスーッと暗くなったときに、4歳の子が、「ねえねえ、ママ、墨を流したような夕方になったね」と言ったんです。『すてきなさんにんぐみ』(偕成社)と言うのは誘拐される子どもの話ですけれども、その中にそういうフレーズがあるんですね。とても選ばれた素敵ないい絵本を選べば、素敵な絵の情景と言葉があって、豊かな言葉の世界が広がります。ものすごく簡単な言葉のやり取り、例えばムカつくとか、キモいとか、そういう言葉が横行している中で、きれいな丁寧な日本語というのはものすごく使われなくなっています。おうちの会話でも「早く、早く」で、「何してるの!」みたいな、指示語とか命令語ばかりになっている中で、例えば風が吹いたときの様子を、どの程度豊かな言葉で子どもにかかわる人たちが表現しているのか。「そよそよ」なのか、「さやさや」なのか、「ゴーゴー吹いている」なのか、同じ雨でも、「シトシト降っている」のか、「ザアザア降っている」のか、「すごいね」と言うのか、その体験とその場面と言葉を一致させるような豊かな体験があることのほうが、言葉も豊かなんですね。
 「こわいッ」というのと「恐ろしい」のでは違うわけです。「おいしい」というのと、「うまいッ」というのと、「サクサク」とか、全然違うわけです。だから食べているときでも、その気持ちを言葉に変えていく、情景を言葉に変えていく。子どもにかかわっている人たちがどれほどの豊かな言葉で子どもにかかわるかということが、子どものその後の、自分の気持ちをどう表現していくか。悲しいよ〜と言ったときに、悲しいよだけではなくて、どんなふうに悲しいのか、どんなふうに悔しいのか。うれしいよ、楽しいよだけではなくて、怒りだとか、悔しさだとか、情けなさだとか、そういうものも絵本の中にはたくさんの言葉があります。喧嘩の気持ちだとか、喧嘩しても仲直りできるんだよというメッセージもありますし、いろいろな言葉があります。



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