小児の便秘の治療方針
基本は生活習慣の改善、食事療法および薬物療法です(表3)(1)。まずは患児および家族に対し、便秘の原因や増悪因子および問題点を十分に説明します。登校前に排便の時間を十分にもてるようにすること、学校でも便意があればトイレに行くこと、便秘が悪循環を繰り返してさらに悪化してしまうことなどを説明します。乳児の便秘に対しては、親(特に母親)への説明が大切であり、授乳内容や量、適切な肛門刺激方法などを指導します。
食事療法では、繊維の多い食物を多く摂取し、菓子や清涼飲料水の摂取を控えるよう指導します。野菜、海草、穀類などが良く、野菜は生では水分が多く、炒めたり煮たりしたもののほうが食物繊維を効率よく摂取できます。乳児では、果汁や糖水により腸内の発酵を促して蠕動運動の改善をはかったり、ミルクアレルギーが疑われる場合は、加水分解乳への変更などを行います。
薬物療法は、便秘の原因、程度、年齢などを考慮しながら適切な薬剤を選択し、症状の改善程度から適宜、種類や量の変更を行っていくことが大切です。まずは直腸内から便塊をなくし、排便反射や便意などがスムーズに生じる伸展性のある直腸に戻すことが重要であり、浣腸や坐薬を併用しながら徐々に経口薬のみに移行していきます。親に薬剤の作用機序や正しい使用方法を十分に説明し、排便日誌をつけさせ、薬剤の種類や量を調節していきます。
小児の便秘症では、早期の診断や十分な治療が行われないと、悪循環によってより頑固な便秘に進展することが少なくないため、患児のみならず親の十分な協力のもと、生活指導や食事・薬物療法を適切に行っていくことが肝要です。
【参考文献】
- 1. 清水俊明:便秘.小児科診療ガイドライン第4版,総合医学社,東京,2019,pp11-15