小児の便秘の薬物療法

便秘は日常診療でしばしば遭遇する疾患ですが、表4(4)に示すyellow flagsを認める場合には食事・生活・排便指導に薬物治療を併用することが推奨されています。Yellow flagsの症状がない場合には、疾患の説明と食事・生活・排便指導を行って1-2週間ほど経過を観察し、治療が奏功しない場合には薬物治療を追加します。便塞栓(impaction)を認め便塊除去(disimpaction)が必要である児には初めから薬物治療を併用します。表5(4)のred flagsは便秘症をきたす基礎疾患を示唆する徴候であり、陽性の場合は専門医への紹介が望ましいです。

表4 Yellow flags 表5 Red flags

薬物療法は、基本的には便秘が改善し週に3回以上の排便があり、便秘による臨床症状が消失するまで続ける必要があります。その期間には個人差がありますが、便秘の期間が長かった場合ほど、薬物療法が必要となる期間は長くなる傾向にあります。症状の改善に従って使用薬剤の量を減量していきますが、スムーズに減量・中止までもっていける場合はむしろ少なく、どこかの時点で再び便の出が悪くなることをしばしば経験します。その場合は再び調子が良かった際の薬剤量まで増量し、しばらく様子を観て再び減量していくことを繰り返して行っていきます(表6)(6)。どうしても減量できない場合は、薬剤の種類を変更してみるのもひとつの手段です。自験例では、disimpactionを行い、酸化Mg(乳児 0.3/日、幼児0.4/日、学童0.5-0.6/日、各分1-2)とピコスルファートNa(乳児2滴/日、幼児3滴/日、学童4-5滴/日 各分1)を併用して連日投与すれば、多くの症例で便秘は改善されますが、最終的にそれらの薬剤を中止することは容易ではないことが多いです。そこで現在酸化Mgをポリエチレングリコール製剤(乳児1包/日、幼児2包/日、学童3-4包/日、各分1-2)に変更してその効果を観ていますが、多くの症例で排便回数が増えピコスルファートNaの減量が可能となっています。注意すべきは、徐々に便秘傾向になり便が滞った状態では、薬剤の効果が十分発揮されない場合が多く、その場合は浣腸や坐薬を使用し便の貯留を解消することが重要です。排便日誌をつけ、薬剤の量と排便の関係とを常に観察することも忘れてはいけません。

表6 便秘の薬物療法(処方例)

【参考文献】

  1. 4. 日本小児栄養消化器肝臓学会、日本小児消化管機能研究会(編):小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン,診断と治療社,東京,2013,pp1-67
  2. 6. 清水俊明:便秘症.小児科臨床74(増)1792-1796,2021