寄稿「子どもの検尿検査と腎疾患について」
徳島大学大学院 発生発達医学講座 小児医学分野 教授 香美 祥二先生
腎臓の働き
腎臓は腹部の背部側に2個ある後腹膜臓器の一つです。各人の握りこぶし大が、その人の腎臓の大きさです(図1)。腎臓の一番の働きは血液を濾過して尿をつくることです。体に要らない余分な水分、電解質、蛋白成分を尿として捨て、体の液体成分(体液成分)を一定に保つことが基本の働きです。二番目は骨を作ります。腎臓の中で活性型ビタミンD3をつくり、腸管からカルシュウムを吸収して骨を成長させます。腎臓が悪くなると成長が止まるというのは、活性型ビタミンD3が減少することが関係しています。三番目は赤血球をつくります。腎臓で作られたエリスロポイエチンが骨髄の細胞を刺激し、赤血球の産生を助けています。腎臓が悪くなると貧血になるのはこのためです。腎臓の一番の働きである尿の産生は、一個の腎臓に約100万個存在するネフロンの糸球体(毛細血管の塊)の血液濾過作用で生じた濾過液(原尿)を尿細管中に捨てていきます(図2)。尿細管は原尿中の水分やナトリウムなどの電解質を必要量だけもう一度体に戻す働きをしています。このようにして、腎臓ネフロンは、一日大量の血液を濾過しそのうちの99%を体に戻して、体液の量と成分を一定に保つ働きをしています。沢山、水分を取っても、あるいは逆にほとんど水分を取らなくても腎臓が尿量、尿成分を調整することにより体の中の体液量や体液組成を一定に調節することができます。
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