第34回母子健康協会シンポジウム 「子どもたちの遊びと体づくり」
4.総合討議(2)
今のことに関連して、牛乳パックの話が出ました。皆様からいただいた質問で、「牛乳アレルギーがあるので牛乳パックを使っていません」とか、アレルギーのことが出ていたのですけれども、僕は健診とかいろいろなことをもう30年以上やっていて、絨毯を敷いて子どもの発達を見ていますけれども、子どもの発達を見るのに、牛乳パックがすごく役に立つんです。それを使って牛乳アレルギーになったということはないですね。恐らく先生方も、お使いになって、アレルギーをおこしたことはないと経験しているのでは……。
牛乳パックの中を開いて、牛乳の入っているのをやればなるけれども、普通、開かないでつなげているだけです。そんなことを言ったら、スーパーへ行って牛乳の売り場を歩けないよね。そうでしょう? だって、そういうことは聞いたことがないもの。今、いろいろな食物アレルギーがあるけど、スーパーの牛乳売り場へ行ってショックを起こしたというのは聞いたことがないから、恐らくパックからは問題ないと思います。
今のところ、医学的に言って、普通に使用している牛乳パックの使用の仕方で食物アレルギーの子がどうにかなることは、まず考えられないと僕は思います。もし本当にそういう子がいたら、それこそ専門家に任せて、本当に牛乳の食物アレルギーかどうか聞いてほしいのです。ほかのことがなくて、ただ親が牛乳アレルギーですからということを真に受けるのは間違いだと思います。
もし、そのことについての質問があったら、去年の保育指針に食物アレルギーの話が出ていますので。それでもお読みになれば結果がわかります。よろしいですか。
では、次に工藤先生。
工藤たくさんのご質問、ありがとうございます。やはり一番気になさっているのが、いろいろな物を使うことで怪我につながるのではないか、そのときの保護者対応はどうなんだろう、というご質問が何件かありました。「保護者に怪我したことを伝えた時、なぜそのような遊びをさせるのかと言われたことがありますか」というご質問ですけれども、ありました。
2歳児のお子さんでしたけれども、ビールケースを渡って歩いていったときに、ビールケースを逆さにすると穴があいているところに足が引っかかってしまいまして、そのまま倒れてしまったんですね。頬でしたか、そこを怪我したときに……そのお子さんはバランス感覚が弱かったんです。何度か怪我をしてしまったことがありまして、「怪我が多いですよね」と言われたことはあります。
ただ、お子さんの発達も踏まえながら、どんな遊びをしているかというのは事細かく保護者の方に説明して、受診もしたかと思います。念のための受診ということもありますけれども、専門の先生に診ていただいて、大丈夫だよという確信をいただいたりすることも何回かありました。
子どもの行為を尊重しているところで親の反応がどうか、というところですけれども、年に1回、新年度のときに保護者会をいたします。そのときに、こんなふうな遊びをしていますよ、子どもの発達はこんな状況など話をする中で、説明をしています。その後、クラス懇談会の中で、実際遊んでいる子どもの映像だったり、動画だったり、その中で保護者と懇談しながら、保育園の保育の様子を伝え合いながら進めているところです。
それから、保育参観、保育参加を保護者の方にしていただいて、実際遊んでいる様子を見ていただくことも1年を通してやっています。そうすると、「こんなことができるんですね」「すごくのびのび遊んでいますね」というようなお話もいただいています。
先ほど、片づけの話も出ていましたけれども、うちの園も園庭が狭いというところで、最初の園庭の映像があったと思いますが、ただ隅に寄せているだけなんですね。一応、置く場所は決めていて、そこから子どもたちが運んでくるということをしています。本当に収納場所がないので、園庭の一角を収納場所という形でやっています。
先ほどの片づけはどうなんだろうというところですけれども、先ほどのお話の中にも、年長が遊んだ後——年長が片づけずにそのままお部屋に入ったのですけれども、その後、3歳が遊ぶという姿が見られるというところでは、その状況に応じて、また遊びたいという思いがあった場合はそのままにして、また夕方遊ぼうねというふうにして遊んでいることがほとんどです。
ですから、最終的に片づけるというところは、「もうお部屋に入るよ」と言うと、片づける子もあれば、入ってしまう子もありますけれども、そこは遊んでいく中で、片づけしなければいけないというふうにだんだん育っていくのかなと思っています。
ござも結構使って遊んでいるので、ござも巻けるようになったんですね。なかなかござを巻くという機会がないと思いますけれども、3歳児の子どもに、「もう片づけるよ」と言ったら、ござを巻こうとして、それも両方から巻いてしまったんですね。お互いに巻きたいという思いがあって、両方から巻いてぶつかってしまったのですが、じゃあ、そこは一緒に片づけようねと、自然にそんな姿もあり一緒に片づけるという意識が出てきているかなというのは感じました。
怪我対策について、ヒヤリハットですけれども、毎回、そういう事故や怪我が起きた場合は、クラスなり全体で話をするように意識はしています。ただ、「やらせない」ということではなくて、「何ができるんだろう?」という話をしていきながら、怪我したものを排除するということはしていません。危険な箇所はもう一回見直そうというふうにしながら遊べるようにしているので、そこは保護者にも理解していただきながら進められているかなと感じています。
実際、タイヤ、風呂マット、ビールケース、ござなどを自由に遊ばせられるというところで、職員の意見の統一に要した時間のご質問がありましたけれども、東間先生のお話を伺って、ほかの園の研修に参加したり、自分も実際に経験していますけれども、「みんなでやってみよう」というところからスタートして、最初はやはり怖かったと思うんですね、いろいろな物を使うというところでは。最初はタイヤを二段だけというルールを決めていたのだそうです。でも、二段以上の遊びができないんだと思ったときに、じゃあ、この子たちの遊びはどう発展していくのだろう、というふうに思ったのです。そこから、どういう遊びをしていくことで、子どもたちの遊びが怪我につながらなかったり、いろいろな遊びへと広がっていくんだろうねというような話をしながら、今、自分たちの保育をビデオに撮りながら、大人のかかわり方、子どもの遊び方というのを勉強しています。十分なビデオでなかったりもしますけれども、園の中でみんなで学び合おうというところで、今、実践しているところです。
それから、「コンテナについて詳しく知りたい」という質問についてですが、コンテナでも大きさがいろいろあるので、実際見て、これだったらいいかなというものや、強度も大きさによっては薄くなったりする部分があるので、そこは見極めなければいけないのではないかと思います。
それをビールケースと合わせられるとよい、というふうにおっしゃられていますけれども、そこはもう子どもが考えることだと思うんですね。一応、私たちは、こういう物があるよというのは置いておきますけれども、そこから子どもたちがどういうふうに遊びをしていくかというのは、子どもの発想に任せていけたらいいのではないかと思っています。
ただ、乳児に関しては、最初から子どもが、はい、コンテナで遊びましょうというわけにはいかないので、ちょっと設定したり、仕掛けたりしていますかというご質問もありましたが、何気にそこにコンテナをポンと置いておくと、そこの中に入ってみたり、風呂マットなどを敷いていたら、その上に寝ころがってみたりという、そんなところからどんどん遊びが展開していくのではないかというふうに思っています。
東間工藤先生、先ほどの保護者対応のところで、ちょっといいですか。
工藤どうぞ。
東間保護者対応のことで、例えば、園庭でこれだけの遊びをしていたらば、子どもにも、どういう効果があったかということを保育士に自己評価してもらうということをしました。よく遊びます、子どもがよくなりましたとか、そういう言い方もいいのですけれども、より客観的な保育士自身の自己評価ということが言われています。
例えばこの表なんですけれども、園庭のアンケートで職員全部が自己評価をしたわけです。下段がビフォアです。上段がアフターで、これは半年たった後です。皆、さんごらんになるとおわかりだと思いますが、半年たったら、評価が約2倍になっているでしょう。評価は1〜5段階なんです。大体、初めは2ぐらいなのです。2点幾つぐらいなのが、大体、4に近くなっています。半年でこういうふうに上がっています。
自己評価の項目ですけれども、後ろの方、読めませんでしょうか。例えば、「物を大切に使われ、次の日も片づけやすい」「異年齢の交流」「ごっこ遊びが盛り上がる」「遊びがたっぷりできる」、この項目は全部職員がつくったのです。職員が、遊びの効果、つまり、保育の質をどうやったらいいのかということを考えて、この項目をつくって、その項目にしたがって職員が全部評価したのです。それでもってこれだけの効果が出たわけです。これは、都下の保育園です。
こういうものを保護者会に出して、これこれ、子どもの発達に必要なこういうことについて、職員の自己評価ですけれども、でも、「これだけ上がってきました」ということをお伝えすることによって、また、先ほどの工藤先生のいろいろなお話を伝えることによって、保護者が遊びの質というものに目を向けてくれる。自分たちの子どもがこんなに立派になってきているのかということがわかってくれると、ちょっとした怪我があったときなどにも、理解をいただけるということが違ってくるのではないかなというふうに思います。
表②
今度は怪我のことですけれども、平成20年度に東社協に発表された資料です。
新宿区の保育園で、5歳クラス・転倒でちょっとでも怪我をした子が、1年間に41件、次に56件と多かった時期に、園長が考えまして、園庭と保育室を変えて、遊べる物をいっぱい出したんです。いっぱい出して、自由に遊んでいいと。そうしましたら、2年目で逆にちょっと増えるんですね。3年になるとヒュッと下がって……これですね。実はこの後、ずっと7年間まで記録して10件以下ぐらいに少なくなりました。
とにかく遊ぶ物がいっぱいあって、遊ばせる。わりと単純なことですけれども、こんなに怪我が減ってきたということです。
問題は、ここの2年目で、ここでいっぱい用意してみて、ここで用意したと思ったら、2年目に少し増えたのね。これは、ここの保育園だけではなくて、ほかにもこういった傾向があるのです。なぜか。これは仮説ですけれども、要するに、子どもが初めて2年目に体ごと動き出したんだなというふうに思います。それで、身体が良く動くようになりけががずうっと減ってきた。そういうことがここでもって立証されたということです。
こういったことも、いろいろな統計とか観察とか、そういうものでもって一つずつ裏付けをしていくという方法をとっているということです。観察と記録と数字という難しいことではないです。ただこうやって書いたものを集めて足せばいいわけですから、皆さんもきっとできると思います。
工藤実際、この統計を見て私も思ったのですけれども、やはりいろいろな物を園庭に出すことによって、子どもも戸惑い、保育士も戸惑うというところでは、危険につながることが多かったなというのを感じます。今年の春から夏にかけて、怪我は結構多かったです。この時期に来てだいぶ減ってきて、子どもたちも扱い方がわかるようになった、保育士もそれを見守ることができるようになったという姿があるのではないかと、今、東間先生のお話を伺って感じました。
それから、「広くない園庭で0歳児から5歳児までどのように遊ぶのか。全クラスが一緒に遊ぶ日もあるのか」というご質問です。そこは、以前は、何曜日は何歳、何時から何時までは何歳という決まりもあったようですけれども、今はそれは取り払っています。ただ、幼児の子どもたちが遊んでいるところに乳児がポーンと入るときもあるんですね。活動によっては、ちょっと邪魔になってしまうこともありますけれども、そこは保育士同士で、どうするかということを決めるようにしています。
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