予防接種の接種方法、なぜ必要か。
防衛医科大学校 小児科講座 教授 野々山 恵章 先生
予防接種の接種方法
(1)接種経路
皮下注、筋注、経口がある。日本では、予防接種は皮下注が原則となっている。上腕伸側に接種する。ヒトパピローマウイルスワクチンは筋注である。１歳以上では三角筋に垂直に接種する。なお、１歳未満では、三角筋の発達が未熟であるため大腿外側に接種することが、アメリカでは勧められている。生ポリオ、ロタウイルスワクチンは経口である。
筋注の方が、局所反応が少ない、免疫原性が高いなどの利点が有り、本来は筋注で行うべきワクチンが皮下接種で行われており、日本独特の習慣である。改善が求められる。
(2)接種間隔
不活化ワクチンの後は、６日あける（ただしＤＰＴワクチンは６日では接種しないこと）。生ワクチンの場合は27日あける。ただし、いずれも接種翌日を起算とする。すなわち６日あける場合は、例えば月曜日に接種すれば、翌日から６日あいた次週の月曜日には次の接種が可能である。
(3)同時接種ワクチン接種スケジュールについて
国内での現状は、原則１回に１ワクチンである。ただし、あらかじめ混合されていない２種以上のワクチンについて、医師が必要と認めた場合には、同時に接種を行うことができるとされている（予防接種ガイドラインより）。
一方、諸外国では、同時接種は通常に行われている。アメリカのガイドラインでは、不活化ワクチン＋不活化ワクチン、生ワクチン＋生ワクチン、生ワクチン＋不活化ワクチン、という組み合わせでも、特殊な場合を除き、全て同時接種可とされている。同時接種で予防接種の効果は変わらず、副反応の増加もないとされている。
こうした現状を受け、日本小児科学会は、通常の医療として行って良いという同時接種に関する考え方を公表した。学会ホームページで確認されたい。ただし、異なるワクチンを１本の注射器に混合して接種してはいけない、異なる部位に個別に接種する、同じ上腕なら、1inch (２・５㎝) 離すという規定がある。なお、以下のような特殊な条件では同時接種不可とされている。コレラ（不活化）接種３週間以内の黄熱病ワクチン接種不可。ポリオ（経口生ワクチン）＋腸チフス（経口生ワクチン）の同時接種不可。
さらに、日本小児科学会は、同時接種をもとにした接種スケジュール推奨案をホームページに公表している。任意接種と定期接種を区別せず、確実に免疫を付けるために考慮された、専門家からの提言であり、参考にされたい。
なお、スケジュールは以下のホームページで確認できる。
- 国立感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/vaccine/dschedule.html - 日本小児科学会推奨スケジュール
http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_110427.pdf - ”ＶＰＤを知って、子どもを守ろう”の会のスケジュール
http://www.know-vpd.jp/children/index.htm - アメリカＣＤＣのスケジュール
http://www.cdc.gov/vaccines/recs/schedules/default.htm
Pink Bookと呼ばれ、アメリカでの予防接種のバイブルとされている。ネットでも多くの内容が得られる。 - 英国・ニュージーランドのスケジュール
http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/eiken/idsc/disease/ukimmunization1.html
文献
- 『平成26年 予防接種に関するＱ＆Ａ集』 発行：社団法人細菌製剤協会
- 『予防接種ガイドライン ２０１４年度版』 発行：財団法人予防接種リサーチセンター
（執筆・監修：予防接種ガイドライン等検討委員会） - Epidemiology and Prevention of Vaccine-Pre- ventable Diseases (CDC)12th edition (Revised May 2012). The Education, Information and Partnership Branch, National Center for Immunization and Respiratory Diseases, Centers for Disease Control and Prevention.
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