寄稿「子どもの検尿検査と腎疾患について」
徳島大学大学院 発生発達医学講座 小児医学分野 教授 香美 祥二先生
子どもの腎疾患の精密検査(確定診断)と治療
子どもの定期検尿で異常が見つかった場合、まず近くの病院や診療所を受診することを勧められます。そこで診察した医師が子どもの腎疾患の診療指針(ガイドラインなど)に沿って、今後どのようにすれば良いか説明してくれます。重症の尿所見(高度の蛋白尿、血尿、白血球尿や赤血球円柱、白血球円柱、脂肪円柱、鑞様円柱などの尿沈渣異常、低比重尿)や注意すべき症状がある場合は確定診断や治療のために子どもの腎疾患を専門に診療している施設に紹介することになっています。専門施設では、尿を詳しく分析し腎尿路の画像検査や腎生検による組織検査を行い病気の原因を検討し確定診断を行います。
慢性腎炎の代表格、IgA腎症は重症の組織病型であれば、ス剤、免疫抑制剤、抗凝固剤、抗血小板薬を使った多剤併用療法で治療します。一般的に治療効果は良好で時間は要しますが組織病変、尿所見を含む臨床症状は改善し腎不全に進行することを阻止することができます。軽症の場合は、腎機能、蛋白尿をモニターしながらレニン・アンギオテンシン系を阻害する薬剤(抗圧薬の一種)を用いて治療しています。FSGSでス剤抵抗性NSも腎不全に進行する確率が高いので様々な治療を行います。大量のス剤の静脈内投与法(パルス療法)、血漿交換療法、LDL—アフェレーシス、リンパ球(B cell)を枯渇させるリツキシマブ療法などを組み合わせて治療します。進行した先天性腎尿路奇形やネフロン癆では末期腎不全への進行を阻止する薬物は無く、透析治療を受けながら、あるいは透析開始前に腎移植治療を目指すことが一般的です。
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