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第34回母子健康協会シンポジウム 「子どもたちの遊びと体づくり」
2.「子ども達が主体的に遊べる環境とからだ作り」(1)

東京都目黒区立南保育園 園長 工藤恭子先生

工藤皆様、こんにちは。ただいまご紹介いただきました工藤と申します。本日は皆様と一緒に学べる機会になったらいいなと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

私が保育士になって目黒区に勤めて35年ぐらいになります。その間、社会情勢の変化とともに、子どもたちを取り巻く環境も随分変わってきたなと思っています。そんな中でも、子どもたちの発達を見極めながら、一人一人が育ちやすい環境をつくっていくことが大事だと思ってきました。本日のテーマである「子どもたちの遊びと体づくり」は、子どもたちの育ちには欠かせないことだと思っています。

目黒区の保育園は、ほとんどが都市部の住宅地にあります。私が今年度より勤めている保育園は、110名の中規模な保育園で、園庭は決して広くなく、近くには公園もありません。そのために、週2回ほど遠くの広場まで出かけて行き、体を動かしています。元気な体に育ってほしいという願いから、広々とした空間で走ったり、起伏のある道を歩いたり、また、鬼ごっこなどの集団遊びをしたり、全身を使って遊んでいます。でも、やっぱり子どもたちの体の育ちを見ると、ボディイメージがなかなかつかめず、ぶつかったり、転んでも反射的に手が出なかったりなど、怪我しやすいのがとても心配です。

そこで、身近にあるところから遊べないかということで、園庭をもっと遊べる空間にしようと、職員と話し合いながら、園庭改造に取り組んできました。まずは園庭の整備や道具をそろえることから始めてきました。

スライド①が南保育園の園庭です。建物の都合上、園庭が2カ所に分かれています。

これよりパワーポイントの映像でお話しさせていただきたいと思います。

狭い園庭での遊びを充実している乳児の様子です。

保育園の園庭での遊びは、狭い砂場で遊んだり、花壇の虫探しをしたり、ただ走り回ったりという状況がほとんどでした。固定遊具もあるのですが、その遊びは、子どもたちが自由に使って遊ぶという形で、保育士はそれを見守っているという状況だったようです。危ないなと思うことにはすぐ中止したり、ルールや決まり事で制限してしまって、子どもたちが本当に遊びたいという気持ちになるような環境ではなかったのではないかなと思っています。

そこで、固定遊具にはこだわらないで、身近にあるものを置いてみようと、古タイヤ、ビールケース、風呂マット、ござなどを園庭に置いてみました。子どもたちが使いたいものを自由に組み合わせて遊べる環境をつくることから始めました。このことは、以前、こちらにいらっしゃる東間先生にも助言をいただいて、園庭改造をしている園も区内にも幾つかあって実践しているところです。

この映像が、0、1、2歳が園庭で遊んでいる様子です。これは、保育士が一緒に楽しく遊ぶということで、友達との遊びが広がっていくというところの写真を撮りました。1、2歳児の子どもたちは、保育士と一緒にタイヤを転がしたり、引きずったりしながら、並べたり、重ねたその上を渡ったり、中に入り込んだりしています。初めは両手でタイヤに手をつき、片足を上げ、中に入り込んでいたんですが、繰り返しやっていくうちに、タイヤの縁に立ち上がることができるようになったり、そこを歩いてみたりという姿に変わってきています。

写真②—1は、0歳児の子どもたちです。風呂マットをいっぱい重ねて、その下にはタイヤを置いています。
そこの上を這ったり、ちょっと歩ける子は、バランスをとりながら、ふわふわのマットで歩きにくさもあるのですが、すごく楽しんでいるところです。

②—2は1歳児のとてもいい表情の写真です。タイヤの上にマットを置くと、こんなふうにちょっと沈むんですね。それがまた楽しかったり、バランスをとったりすることをすごく楽しんでいます。

②—3の写真は、風呂マットを何枚か重ねたり、この黄色の箱はコンテナケースです。乳児にはこのぐらいの高さがいいねということで、取り寄せました。これをひっくり返すと箱型になるので、その中に入って遊んだり、出たり入ったりという遊びもしています。

②—4の写真は、これは2歳児ですが、先ほども言いましたように、この縁に立つことができるようになってくるのは、繰り返し遊ぶことの大事さなんだなと思っております。保育士も一緒に遊ぶことで、どんどん遊びが広がり好きになっていくという姿が見られました。

こちらも同じですけれども、タイヤをいっぱい重ねています。最初は保育士が重ねていたんですが、そのうち、2歳児のこどもが、③—1のようにタイヤを転がすことができるようになったり、引っ張ったりという姿が見られ、だんだん、みんなで積み上げていくことができるようになりました。③—2は、井戸端会議のように、くつろいだ雰囲気で遊んでいるところです。

③—3は、中をのぞけるぐらい、頭が逆さになっても平気な1歳児の姿も見られてきました。

③—4は、トレーニングのようにも見えますが、タイヤに縄跳びの紐をつけて引っ張るのはかなり力がいります。これも繰り返すことで、すいすいと引っ張り、時には、タイヤに人を乗せて引っ張るということもできるようになってきて、遊んでいます。

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