1.子どもがCOVID-19にかかった時の症状の特徴

COVID-19はSARS-CoV-2というウイルスによって起こる感染症です。このウイルスが自分自身の遺伝子を増幅するなかで高頻度に遺伝子に変異が入るため、新しいウイルスが作られるのが特徴ですが、その場において生存に適したウイルスが選別されます。結果としてより感染力が高く、過去のウイルスに対する免疫では防げないものに進化していきます。国内でも主要な変異ウイルス株は、オリジナルの武漢株から欧州の流行株、アルファ株、デルタ株、オミクロン株へと変わり、オミクロンの中でもBA1系統からBA5系統へと形を変えてきました。発生当初の株は小児における感染率が成人と比べ約半分程度で、しかも感染する機会が少ない小児の感染者も少ない状況でした(1)。その後は、感染力が増したオミクロン株の影響や、生活の制限の緩和で小児の患者の割合は増え、これにともない重症患者も増えました(図1)。2022年2月半ば以降は10歳未満の患者数が他の年代(10歳区分)より多くなり、20歳未満の感染者は全感染者の3-4割を占めています。

図1.COVID-19患者の推移 左患者数、右重症患者数

図1.COVID-19患者の推移 左患者数、右重症患者数
厚生労働省感染症発生動向情報等 https://covid19.mhlw.go.jp/ より著者作成(2022/9)

小児は成人と比べて、感染した場合の症状が軽いことが知られていますが、これは初めて感染した場合です。ワクチンを接種した若年成人と、ワクチンを接種していない子どもの重症者の割合は同じくらいのようです。実際にオミクロン期になってからは発熱、喉の痛み、倦怠感などの症状は増えていて、熱性けいれんを伴う患者が増えています(図2)。コロナ出現以前の一般的な小児科の診療のなかでは、熱性けいれんを来すのはほとんどの場合は乳幼児でしたが、COVID-19では熱を出してけいれんする学童期の子どもも目立ちます。デルタ期以前に認められていた味覚・嗅覚障害を訴える患者は減少していましたが、オミクロン株も系統によっては訴えのある患者も見かけます。他に、喉頭が腫れて息が吸いにくくなるクループ症候群や、心筋炎、急性脳症、小児多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)など重い合併症を伴う患者もいます(2)。MIS-Cというのは、SARS-CoV-2に感染してから3-6週間後に発症する全身の炎症症候群です。腹痛や下痢、高熱が続き、時に心臓の機能が低下してショック状態になることのある病気ですが、学童期小児に比較的多いことが知られています。この病気は、COVID-19以前は知られていなかった新しい病気です。

図2.小児におけるCOVID-19の症状

図2.小児におけるCOVID-19の症状
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会.「データベースを用いた国内発症小児 Coronavirus Disease 2019(COVID-19) 症例の臨床経過に関する検討」の中間報告:第3報 オミクロン株流行に伴う小児COVID-19症例の臨床症状・重症度の変化:http://:www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=385 より著者作図
①流行初期(2020年2月~2021年7月):2,830(55.2%)
②デルタ株流行期(2021年8月~12月):1,241(24.2%)
③オミクロン流行期(2022年1月~2月20日):1,058(20.6%)

日本国内では、2021年末までは10歳未満の子どもでCOVID-19により亡くなった患者はいませんでしたが、オミクロン株流行後の9か月で、10歳未満で21例、10歳以上で10例の死亡が報告されています(2022年9月20日報告)。情報が確認出来た29例の年齢の内訳は、0歳8例(28%)、1~4歳6例(21%)、5~11歳12例(41%)、12~19歳3例(10%)と全ての年齢層にみられ、基礎疾患のない生来健康な患者が15例(52%)でした(3)。死因として心筋炎、急性脳症、呼吸不全が報告されています。

【参考文献】

  1. 1. Viner RM, Mytton OT, Bonell C, et al. Susceptibility to SARS-CoV-2 Infection Among Children and Adolescents Compared With Adults: A Systematic Review and Metaanalysis.JAMA Pediatr 2021;175(2):143-56. doi: 10.1001/jamapediatrics.2020.4573[published Online First: 2020/09/26]
  2. 2. 日本集中治療医学会小児集中治療委員会日本小児集中治療連絡協議会, ワーキンググループ C-, 日本集中治療医学会小児集中治療委員会. 新型コロナウイルス感染症の小児重症・中等症例発生数と重症小児の診療体制. 日本集中医療医学会雑誌 2022;29:177-80.
  3. 3. 国立感染症研究所実地疫学研究センター, 感染症疫学センター. 新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第一報):2022年8月31日現在.