2.子どものスキンケア「アトピーを含む子どもの皮膚のケア」(5)

今が基本的な治療方法。あと、悪化因子ですね。こちらもちょっとだけ簡単に説明します。

悪化因子もいっぱい書きましたけれども、基本的には悪化因子がいろいろあって、かいてしまって、皮膚がぼろぼろになって、そこのところにいろいろな抗原と言われるものが入ってくる。そうすると、皮膚の症状が悪くなって、またかゆくなって、かいてということを繰り返してしまうよという話なので、悪化因子をできるだけ抑えましょう。予防の意味でもやりましょうということです。

スライド41.悪化因子

悪化因子の対策方法ということで、ちょっと出しますけれども、スライド42は、環境因子として乾燥があります。それは、保湿ケアをやりましょう。ダニや、いろいろなハウスダストがあります。こちらは、家をきれいにしましょうという話になると思うんですね。

ただ、これはちょっと問題があって、一生懸命頑張ればいいんですけれども、お母さんによっては頑張り過ぎる。気が狂うほど頑張ってしまうという人もいらっしゃるので、そこそこ、実を言うと、ある程度まで来ると、そこまで大きく変わらないと言われているので、そこそこを目指す。お母さんの感じを見て、そこまでノイローゼになるほど頑張っても、それはあまり費用対効果はないよということを伝えてあげるのもいいかもしれないです。

あとは花粉です。10年、20年ぐらい前までは、あまりアトピー性皮膚炎に花粉の話は出てこなかった気がするんですけれども、実際、4月頃に結構悪くなる子がいて、その子たちに関しては、特に夏は汗、冬は乾燥、4月は時期的に新しい生活になるからと言われていたんですけれども、よくよく聞くと、スギの花粉症が、結構アトピー性皮膚炎に関しては悪さをしているのではないかという話です。なので、4月とかに悪くなる子の多くは、基本的には花粉が関係あるのではないかと言われています。一番いいのはマスクのブロックなんです。

スライド42.悪化因子の対策方法Ⅰ

あとは、これは別に花粉症、アトピーの子、関係ないんですけれども、ワセリンを少しまぶたのところに薄く塗っていただくと、結構目のかゆみがとれますので、これをやっていただくと、よくうまくいったという人を聞くので、試してもいいのかもしれないです。

ほかには、ばい菌です。いわゆる細菌や真菌、カビといったものが悪さをしているのではないか。これに関しては、先ほどのスキンケアのところで話した、しっかりと洗浄しましょう。

ただ、例えば、皮膚のところがちょっとむけていて、ばい菌がくっついていそうだということだと、消毒薬や抗菌薬というのは、基本、あまり要らないと言われています。殺すより洗い流すほうがいいと言われているので、よっぽどの場所、特殊な場所以外に関しては、一番いいのは、まず洗い流すことです。僕たちのほうも、よっぽど症状が強い、感染しているような場所では、抗菌薬などの外用を使いますけれども、基本的には洗い流すことが一番いいと言われているので、洗い流すことが一番いいです。

ほかには、紫外線です。先ほどもちょっと話をしましたけれども、紫外線も、実はアトピー性皮膚炎の治療に使われることもあるんですが、これに関しては、強さを測ったり、時間を計ったり、きちんと管理された上で行っていることが多くて、一般的には、紫外線にいっぱい当たるとかなり症状が悪化することがほとんどです。夏、一番悪くなるのは、屋外のプールにいきなり入ったりするときですね。紫外線を非常に浴びるので、そのときにみんな悪化して帰ってくるということが多いので、そのときは注意してもらう。あとは、症状が強い子に関しては、基本的には皮膚を保護しながら入ってもらうことがいいと思います。

スライド43.悪化因子とその対策方法Ⅱ

あと、汗ですね。汗に関しては、汗は本当にかいたほうがいいと言われています。スライド44に書いています。

アトピー性皮膚炎になると、徐々に発汗能力が落ちてくるので、そうすると、鬱熱という体温の上昇というか、中に籠もっている感じが強くなったりしますし、基本的にはあまりいいことがないです。あと、汗をかくことによって、さっきのばい菌に対する抗菌作用がなくなってしまうのでいいです。

ただ、汗は、放っておくと悪さをします。なので、汗をかくことはいいんですけれども、汗をかいたらすぐに拭いてあげるといったことをしていただくのが一番大切かなと言われます。なので、お風呂に入れればお風呂に入ったほうがいいし、濡れタオルで汗を拭くなどができれば、そういったほうがいいかなと言われています。

スライド44.悪化因子の対策方法Ⅲ

今ので、大体アトピー性皮膚炎のお話はある程度終わらせていただいて、最後、ちょっとだけ乳幼児によく見られるような皮膚炎ということで、乳児湿疹とおむつ皮膚炎について少しお話しさせていただこうと思っています。

乳児湿疹というのは、乳児に起こるいろいろな湿疹性の変化と全体的に言われています。

ただ、多くの場合は、乳児脂漏性湿疹というものが一番多く言われますし、あとはアトピー性皮膚炎の前駆症状と言われることもあります。

スライド46.乳児湿疹

原因としては、お母さんから子供のところにアンドロゲンというものが一過性に増加した状態で、一過性ということなので、一般的には一時的なものであると思います。

症状は、大体生まれてから1か月以内ぐらいから二、三か月ぐらいまでで、特に脂漏部位と言われている顔や頭といった場所に、先ほど見せましたけれども、滲出性紅斑、じゅくじゅくした赤みやぶつぶつがいっぱい出てきます。それが、徐々に乾いてきて、黄色っぽい、ふけの固まりみたいな、かさぶたみたいなものが出てくるようになる。特に、その後、広がっていくと、場合によっては首や脇の下、肘などの間擦部位と言われるところまで拡大することがあります。

治療は、この乳児湿疹に関しては、治療自体は、基本的には放っておいても大丈夫なことが多くて、多くの症例、入浴時にきっちりスキンケアをしてもらうとか、保湿液を使ってもらうとほとんど治ります。

スライド47.乳児湿疹

ただ、その子によって結構症状が強くありまして、そういった場合に関しては、一時的に非常に弱いクラスのステロイド軟膏を使ったり、先ほど言ったサトウザルベや亜鉛華軟膏といった薬を使ったりする場合もあります。

ただ、乳児湿疹単独だった場合は、そういった弱い薬をちょっと使っていただいて、そうすると、一、二週間ぐらいでかなりよくなってきますし、その時期だけ頑張ればいいのかなと思います。

その時、たまに問題になるんですけれども、非常に厚く固着して、がっちりくっついたかさぶたというか、ふけの固まりが頭にべたっとくっつく。たまに外来にいらっしゃいます。

そういった場合、無理に引き剥がすと、割と本当にはげになってしまうかもしれないので、毛根がやられて一時的にはげになってしまうかもしれないので、あまり頑張らずに、引っ張るのはやめたほうがいいです。基本的にワセリンやオリーブオイルなどを垂らして、お風呂の30分、1時間前ぐらいにべとべとにしてあげると、そういったものはふやけます。なので、数日かけて、そのふやけたものを落としていけばとれますので、無理しなくてもいいかなと思います。

場合によっては、石けんを使ってきれいに洗い落とすということも大切です。

スライド48.乳児湿疹

あと一つ、聞かれたことがあるんですけれども、時々、乳児の沐浴に石けんを使わない方法が指導、推奨されていることがあるというお話を聞いたんですが、この乳児脂漏性湿疹がしっかり出ているときは、しっかり使っていたほうがいいですよということなので、あまりやり過ぎるのもよくないですけれども、しっかり石けんなどを使ったほうがいいかなと思います。

これが乳児の脂漏性湿疹の典型例ですね。顔に赤い感じがあって、かなりてかっていますよね。

そこに眼瞼のところに黄色いかさぶたみたいなものがついている。こういった状況が続きますけれども、この子は症状がかなり強かったので、本当に弱いステロイドを使わせてもらって、一、二週間でよくなって、その後はスキンケアしてもらって、特に問題なかったです。

スライド49.乳児脂漏性皮膚炎生後1ヶ月

あとは、おむつ皮膚炎です。おむつかぶれ。これは、基本的にはおむつの場所に出てくる、先ほどの乳児湿疹と同じように、そういったおむつのところに出てくる湿疹や皮膚炎全体を指すことが多いです。

ただ、ほとんどの場合は尿やうんちによる接触皮膚炎、かぶれのことを指す場合が多いと言われています。原因に関しましては、やはり乳幼児は、大人に比較するとかなり皮膚が薄くて刺激に弱いときなので、そういった皮膚のバリア機能が未熟であるということがあります。

あと一つは、おむつ内は尿や、便や、汗がめちゃくちゃいっぱいありますので、刺激といったもので、機械的な刺激、あとはアンモニア、便中の酵素、いろいろな化学的刺激が混じってくるので、どうしても荒れやすいということです。

症状としては、おむつ自体によるかぶれ、あるいは、今言った、ほかの要因によるかぶれ。一番多いのは、おむつが皮膚にくっつく場所、凸面、盛り上がっている場所に多いと言われています。

逆に、皮膚がへこんでいるような場所、そういったしわなどは裂けることが多いと言われています。

あとは、意外とおむつかぶれが結構ひどくなると、びらんや潰瘍といって、皮膚がむけることも結構あるので、場合によっては侮れないこともあります。

スライド50.おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)

鑑別疾患と出ていますけれども、カンジタという、カビがくっつくと言われますけれども、カビの場合、逆にそこまで症状がひどくなることはないんですけれども、結構合併すると訳が分からなくなるので、いずれにしても、場合によっては、なかなか治らない場合は、やはり皮膚科の先生に見てもらったほうがいいかなと思います。

スライド51.おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)

治療は、おむつかぶれの場合も、先ほど言った亜鉛華軟膏といった薬などで、ほとんどよくなります。

場合によっては、亜鉛華軟膏の前に弱いステロイドということもあります。

場合によっては、僕らの病院の中では、先ほどあまり紹介しなかったんですけれども、もっと亜鉛華軟膏がくっつくCMCというものがあるんですが、そういったものを使っていただく。そういったもの使うとよくなります。

また、ほかに、褥瘡、床擦れといったもので使うような製剤もあります。そういうものを使うこともありますし、それはよく効くみたいです。

あとは、予防やスキンケアに関しては、一番いいのは、やはり小まめにおむつを替えていただくことがあります。なので、こまめにおむつをしっかり取り替えていただくことが一番いいのかなと思います。

あとは、先ほど言ったサトウベルベといったお薬を使う場合は、塗り足すことが大切であります。ステロイドなどと違って、回数はあまり決まっていないので、何回も塗っていただいたほうが、そういった便や尿が直接お尻にひっつくことがなくて、おむつかぶれを予防してくれることになると言われています。

スライド52.おむつ皮膚炎(おむつかぶれ)

これは、典型例です。

スライド53.おむつ皮膚炎生後11ヶ月

やはり全体的として赤くて、あまりしわなどがどうこうというのは、これでは分からないですけれども、こういったおむつかぶれのこの子も、基本的には、今言ったような亜鉛華軟膏というものを使わせていただいて、様子を見ていたら、一、二週間ぐらいでかなりよくなった記憶があります。

これもおむつ皮膚炎ですね。

スライド54.おおむつ皮膚炎

多少バリエーションがあるかなと思いますけれども、おむつ部位に赤みがあるということが特徴です。

こういったものは、ごくたまにステロイドを使いますけれども、ほとんどの場合はサトウザルベや亜鉛華軟膏というものをしっかり使っていただいたら、ほとんどきれいになりましたということです。

これで大体終わりかな。あとは、まとめのほうですね。