2.子どものスキンケア「アトピーを含む子どもの皮膚のケア」(3)

次に、治療と悪化因子の対策についても少しお話しさせていただこうと思います。

まず初めに、アトピー性皮膚炎の治療に関しては、今、こちらに出していますとおり、大きく分けて4つ、3番目はちょっと小さいんですけれども、その4つかなと思っています。

初めに、スキンケアに関しましては、先ほどお話しさせていただいたので、初めに外用療法、塗り薬についてお話しさせていただこうと思います。

塗り薬に関しては、一番有名なステロイドと、あとは、ちょぼちょぼほかの免疫抑制薬というものがあるので、そちらについてお話しさせてもらいます。

まず、外用薬について、少しお話しさせてもらおうと思います。

外用薬というのは、基本的にほかの内服薬も同じと思いますけれども、効果を示す主薬というものと、それを溶かす基剤というものに分けられます。この基剤によって特徴がいろいろある。基本的に、白色ワセリンなどの油脂性基剤、軟膏があったり、それを、うまく水と油を混ぜていただくクリームやローションといったものに分けられますという話です。

スライド24.外用薬

おのおの特徴があって、どのように使うかというのも1つの手かなと思いますけれども、そういった剤形によっていろいろな違いがあるということも少し頭に入れていただいてもいいかなと思います。

まず、剤形による外用薬の特徴をいろいろ書いていますけれども、軟膏の場合は、長所として、角質・痂皮の軟化・除去と書いていますけれども、かさぶた、あるいはふけの固まりみたいなものもとれていますし、皮膚も保護しますし、外からの刺激もとってくれますし、刺激も少ないからいろいろなところにも使えますよという長所があります。

短所は、べとつくとか、洗い落としにくいとか、これは結構本当は大変なんですけれども、効果の面から言うとかなり高くて、短所は少ない。あとは、強いて挙げれば、夏暑いときにいっぱい使うと、ちょっとあせもができやすいというのは、短所の1つかなと思っています。

それに対してクリームは、非常に皮膚の中に入っていきやすい。あとは、伸びがよくて、使用感に優れて、軟膏と比べると非常に使いやすいイメージがあります。

ただ、クリームの場合は、刺激が強いこともあって、けがしたところ、びらん面や湿潤面と書いていますけれども、じゅくじゅくしているところや、少し皮膚がむけているところに使うと痛いんです。なので、使えないということで、そこのところは注意しなければいけないかなと。

ローションは、そのクリームの特性をさらに高めたような感じですね。そういったところには、まだまだ使えないです。そういった違いがあります。

なので、よく分からない、どうしていいか分からない、基剤をどうしようかと考えたら、一応、軟膏を使っていただければいいのかなと思います。軟膏を使えば、先ほど言ったように、夏の暑い時期にすごく汗をかく子に使うとかでなければ、軟膏で間違いはないのかなと思っています。

スライド25.剤形による外用薬の特徴

今は、外用薬の主剤、基剤について話したんですけれども、次に、ステロイドのお話に入っていこうかなと思います。

有名なステロイドなんですけれども、1つ大切なことは、強さがあるということです。塗り薬にランクというものがあって、Ⅰ群からⅤ群ぐらいに分かれております。Ⅰから順に「strongest」、「very strong」、「strong」、「mild・medium」、「weak」と、基本的に「最強に強い」、「非常に強い」、「強い」、「そこそこ」、「弱い」、そんな感じになっているんですけれども、この強さのことをよく分からないで一緒くたにすると、副作用がどうなのといった話になりますので、強さがいろいろあるよということを理解していただくことがいいと思います。

このように商品名も、最近は後発の薬品がいっぱい出てきて、僕も名前を覚え切れないので、何とも言えないんですけれども、基本的に乳幼児に使うのは、一般的には赤(波線部分)く書いてある、リドメックスからロコイド、あとはリンデロン、その辺ぐらいまでは使うことがありますけれども、一般的にはこの程度で抑えることが多いんです。

スライド26.ステロイド外用薬の種類と強さ

ただ、問題は、ステロイドで強いものを使うのはやはり怖いなと考えて、弱いものから始めてしまうと、なかなか効果が上がらないとか、治すのに時間がかかるとか、その間に結構じゅくじゅくしてしまうということがあるので、慣れていれば、本当のことを言うと、今言った赤(波線部分)よりもう少し上のほうを先に使わせていただいて、落ち着いてきたら、今のⅣ群、「medium」と書いてあるところを使わせていただくことのほうが多いかなと思います。

まず初めに、少し強めから行くほうがうまく行くことが多いよと、僕たち皮膚科はそのように使うことが多いです。

次に、ステロイドは、体の各部位によって経皮吸収の割合が違うこともよく言われております。

スライド27.ステロイド外用薬の経皮吸収

こちらかなり昔の資料なんですけれども、基本的には、手の前腕を1とした場合、その吸収率がどれだけ比率があるかというのがこの表なんです。見れば分かると思うんですけれども、顔と陰部はステロイドの吸収率は非常に高いです。なので、この2つに関しては、ちょっと気をつけたほうがいい。

逆に、足の裏はほとんど吸収しないんです。10分の1近くなので、逆に、そこにはちょっとぐらい強い薬を使ってみようと。そういったステロイドの外用薬を出すときに、顔・陰部と体は別々にするということはよく使わせていただきますので、そこら辺のイメージは少し持っていていただいてもいいかなと思います。

こちらにも「適応と使い方」と書いていますけれども、ほとんどⅡ群、Ⅲ群の場合が多いです。先ほど言った、特にアトピー性皮膚炎の子に使うとしたら、このⅢ群ぐらいまでが多くて、乳幼児であると、ほとんどの場合がⅣ群、「ロコイド」と書いていますけれども、その辺ぐらいで、もう落ち着きます。

ただ、先ほど言った痒疹結節、ごりごり。これは、めちゃくちゃ強い薬を使わなければいけない。それでも抑え込めるかどうかという話になりますし、あとは、虫刺され。例外的には、虫刺されだけは、どんなステロイドも、普通のものを使っても全然効かないです。なので、虫刺されは、放っておくと、先ほど出た痒疹結節、ごりごりになることもあるので、そのときだけは特別にかなり強い薬を使う。

スライド28.ステロイド外用薬の適応と使い方

一般的には、小児の皮膚は吸収されやすいと言われていますので、大人で使うよりは1段下げていただくことがいいかなと思っています。

ただ、最近、アトピー皮膚炎のガイドラインが少し変わったんですかね。そこでは、基本的に期間を短くすれば、かなり強い薬を使っても問題ないよと提言されているので、長期でなければ、多少強い薬を使ってもいいのかもしれないです。

すみません。これは、昔の2012年で少し古いんですけれども、見ていただければ分かります。

アトピー性皮膚炎の子では、大体使い方として、まず初めに、保湿薬はどういう状況で、症状がどれだけあっても、基本的に保湿薬は使いましょう。あとは、年齢によって、操作を少し変えていきましょうと。そのようにやっていくことが多いですね。やはり最重症の子になると、治療としては結構大変かなと思いますし、場合によっては、一時的に入院してもらって、塗り薬の治療などをしなければいけないぐらい大変な子もいます。そういった子には、やはり強い薬を少し使う。使い方が慣れてくれば、そういう薬を使うこともできますというお話です。

スライド29.小児のステロイド外用薬の使い方

あとは、僕ら皮膚科が必ず言われるのは、副作用。ステロイドは怖いよね。やはり副作用が怖いから使えないよねと言われることがあります。実際に、外用薬でも副作用はあります。

ただ、イメージが違うことは結構ありまして、患者さんのイメージで一番多いのは、黒ずみ、皮膚が黒くなりますよねということがあります。基本的には、よく使われる例えなんですけれども、皮膚炎というのは、火事に例えられることが多いですね。火事があると、基本的には赤々しい面が見えて、その下に消し炭として、炭がもう出てきているよと。火事が強ければ強いほど後に残る消し炭がいっぱい出てきますよと言われます。

なので、この火事を早めに消してあげないと、黒ずみもいっぱい出てくる。黒ずみは、火事を消した後の残りなんだよということを説明していただくと、多少分かっていただけるし、火事を早めに抑えれば黒ずみは少なくなりますよと伝えると、多少使ってもいいと。

ほかの糖尿病など、いろいろ書いていますけれども、こちらは内服薬のイメージ。内服薬の副作用ので、これはないですよと。実際に副作用として見かけるのは、やはり感染症ですね。ニキビみたいなもの、あるいは、ここに書いていないんですけれども、カビですね。カビなどは実際に見ます。あとは、ちょっとそこのところの毛が多くなったり、皮膚が薄くなったりすることがありますし、目の回りに強いものを使うと、ステロイドの緑内障で眼圧が上がる。これは実際にあり得ます。

ただ、今ここに書いていますとおり、全身的な副作用はほとんどないので、強さと塗布する場所、あとは期間、年齢、そういったものをうまく考えれば、基本的には副作用はかなり回避できることが多いので、そういったことを注意しましょうということです。

スライド30.ステロイド外用薬の副作用