2.子どものスキンケア「アトピーを含む子どもの皮膚のケア」(2)
そうしたら、次に、小児のアトピー性皮膚炎というところでお話をさせていただこうと思います。
アトピー性皮膚炎は、皮膚科でいうと、このように定義されています。搔痒を伴って、特徴的な皮疹が左右対称に特徴的な分布をとって慢性的な経過をとる。乳児では2か月以上、それ以外では6か月以上と言われています。
参考所見として、アトピー素因は家族歴がありますよとか、ほかのアレルギーの要素を持っていますよとか、IgE抗体を産生しやすいですよとあります。
基本的には、皮膚の状態や経過で決まると思っていただいていいと思います。
病気の原因は、いろいろここに書いていますけれども、アレルギー性側面や、皮膚のバリア機能の話や、遺伝学的側面など、いろいろあると思います。
今回は、あまり深掘りせずに、アトピー性皮膚炎の症状の移り変わりをお話しさせていただこうと思っています。
まず初めに、乳児期なんですけれども、乳児期は、口の周り、ほっぺから紅斑、赤くなってきて、ぶつぶつが出てくる。次第に、耳の周囲に広がって、頭のところに広がっていくということが起こって、浸出液という、じゅくじゅくしたもの、紅斑、赤い局面が出てきて、特によだれが付着する口の周り、耳切れが見られるようになります。
あとは、乳児脂漏性皮膚炎から移行することも多いと思いますけれども、乳児の場合は、初めの頃は乳児脂漏性皮膚炎や乳児湿疹と言われるものと、かなり判別は難しいですし、移行も多いですので、初めは乳児期特有のものかなと思っていると、徐々に体に広がっていく。特にむれる場所に多いと言われています。
乳児期の後期になると、だんだんひっかくようになってくるので、そこのところに鱗屑というふけの固まりみたいなものや、皮膚がむけたところ、痂皮というのはかさぶたですね。そういったものが見られるようになってきて、場合によっては、とびひなどの二次感染を伴うことも多いと言われています。
それが1例なんですけれども、乳児のアトピーです。生後4か月の子です。
この写真は初診時で、実は同じ子なんですけれども、お母さんに聞くと、やはり初めの頃は顔から出てきましたと。それからどんどん体のほうに広がっていって、最後は肘や膝、四肢のほうに広がっていったというふうになっています。見ていただきますと分かるとおり、かなり赤みが目立って、かゆそうな感じがよく分かると思います。
今のものが乳児期です。アトピー性皮膚炎の症状なんですけれども、次は、もう少し大きくなって、幼少児期です。その頃には、連続して症状が起こってくるんですけれども、徐々に体の中心部や、有名な肘や膝の裏、いわゆる関節屈側部や頸部、首や手足、手首、足首、意外と初めの二、三歳の頃は、実を言うと肘や膝よりも手首、足首のほうが何だか知らないけれども多いです。なので、手首、足首のほうを中心に、今みたいな紅斑、湿疹様の変化が起こってくるということがよく見られます。
また、乳児期に比較すると、頭のほうや耳のほうに関しては、耳切れなどはあるんですけれども、若干落ち着いてくることが多いかなという気がします。
そのほかに、徐々にその状態が変化していきまして、体幹のほうの赤みが強いというよりは、どんどん「鳥肌様」と言われるようなざらざらした、毛穴に沿ったようなぶつぶつした丘疹が出てきて、触った感じが鳥肌に見えるような感じ、もっといくと鮫肌と言われるんですけれども、そういったごわごわしたような感じ、ざらざらした感じに変わってきます。
また、今、書いていますけれども、苔癬化病変、もっとごわごわした形で、皮膚が厚ぼったくなった状態が目立ってくるようになって、一部には、痒疹結節といって、非常にかゆみの強い、虫刺されというんですかね。本当にごりっと盛り上がったようなぶつぶつしたものが見られるようになります。
これが9歳の子なんですけれども、膝の苔癬化。膝がかなりごわごわして、しわが目立つような感じです。触ると厚ぼったい感じが非常に目立つようになってきます。体のほうも鳥肌様で、触るとざらざらしているという局面が非常に目立つようになってくると思います。
次は、これは7歳の別の子です。この子は、比較的顔のほうはそれなりにひどいんですけれども、体に比べるとそこまでではなかったです。
ただ、問題は、この痒疹結節という、盛り上がったような、ごりごり皮膚が盛り上がったところをひっかいた跡がいっぱい見られます。これがアトピー痒疹と言われているものなんですけれども、これが、僕ら皮膚科医としては一番の難敵というか、これが出てくると、この後、治療に難渋してしまうということです。基本的に赤みやざらざらぐらいは何とかなることが多いんですけれども、このごりごりが出てくると非常に難渋していくので、正直、これが出てくる前に対応していただくのが一番いいのかなと思います。
これは11歳の子です。この子は、先ほど「顔は大丈夫」と言いましたけれども、人によっては顔も結構症状が出てくる子もいますし、やはり鳥肌様でざらざらした局面が見られる子もいますし、11歳ぐらい、この辺になってくると、関節の肘や膝などの症状もかなり強くなってくることがあります。
あとは、思春期以降、これも基本的には学童期と同じです。
ただ、逆に顔や首などの上半身の症状が非常に強くなってくることが特徴です。さらに、先ほど言ったようなぶつぶつの痒疹というものや、ざらざらした症状が非常に強くなって、範囲も広範囲に見られるようになる。
また、顔や体が全体的に赤くなったり、あるいは、色が完全についてしまって、色素沈着というんですけれども、茶色くなってしまうとか、あとは、逆に色が抜けてしまう。炎症が起きて、その後に症状が強かった後などは、色が逆に抜けてしまうということがあります。
また、本当に症状が強い人は、紅皮症といって、全身真っ赤っかというケースも、非常にまれですけれども、見ることはあります。
これは二十歳の子です。僕らは普通、二十歳とかは見ないんですけれども、長年見ていて、二十歳でちょうどほかの病院に紹介させていただいた子なんですけれども、二十歳まで見ていた子で、この子は、基本的にはかなり強い薬を使わせていただいて、治療を頑張っていただいたんですけれども、どうしても顔の赤みと、手の届く場所、ひっかいている場所、あとは、この痒疹結節をどうしても最後まで消すことができなくて、本人に頑張ってもらったんですけれども、かなりこの辺は苦しかったと思います。
以上が、アトピー性皮膚炎が大体どのような感じにライフステージで症状を持ってくるかということについてお話しさせてもらいました。