2.子どものスキンケア「アトピーを含む子どもの皮膚のケア」(1)

岡先生、紹介ありがとうございます。また、このような機会を頂きました関係者の皆様に感謝いたします。

埼玉県立小児医療センターの皮膚科の科長の玉城です。

今日は、岡先生のほうから、子供のスキンケア、アトピー皮膚炎の子供などを含めて、そういったことをお話ししてほしいというお話がありましたので、今日はそれについて、少し私のほうからお話しさせていただきたいと思います。

本日の内容なんですけれども、基本的には、まず初めに、スキンケアというもの全体についてお話しさせていただきます。

その後に、小児のアトピー性皮膚炎のお話、また、小児のアトピー性皮膚炎の症状がどのように変わっていくかというライフステージによる症状の変化、あるいは、その後に治療や悪化因子の対策のお話をさせていただきます。

スライド2.本日の内容

そのほかに、少しだけですけれども、乳幼児によく見られる皮膚炎として乳児湿疹やおむつ皮膚炎があるので、これについてもお話しさせていただきます。

あとは、こちらのほうは時間があれば、また後でディスカッションのほうで出てくるかもしれないので、お時間があればお話ししますし、なければこちらは割愛させていただきたいと思います。

まず初めに、スキンケアとそのポイントをお話しさせていただきたいと思います。

スキンケアなんですけれども、基本的にはスキンケアというのは、皮膚を健やかに保つためのケア、行為とされております。

スライド4.スキンケア
スライド5.スキンケア:洗浄

具体的にはどういうことかということですけれども、まず1つは、皮膚の汚れ、汗やアレルゲンや菌などを洗い落として清潔に保つ洗浄という行為、2つ目は、保湿によって皮膚のバリア機能の低下を防ぐこと、3つ目に、紫外線から防御することと言われています。

なので、まず初めに、洗浄についてお話しさせていただきたいと思います。

まず、その洗浄の方法なんですけれども、基本的には、洗浄というのは付着したアレルゲンや菌などを落とすことでありまして、水で洗うだけでは不十分だと言われています。なので、固体、液体に関わらず、必ず石けんを十分に泡立ててから使用していただく。可能ならば、あまり小さい子の場合は刺激が強くないほうがいいかなと思います。

そして、ここはよく言われるんですけれども、関節部などは結構汚れがたまりやすいので、そこもしっかり洗う。また、子供は、顔を洗うのを結構嫌がるんですけれども、しっかり洗っていただく。洗うときのイメージは、基本的にはお母さんが自分で顔を洗うようなイメージです。手の指の指腹のほうでしっかりと洗っていただくということが大事です。

また、洗い終わった後は、石けん自体が刺激成分であるために、十分に洗い流すことが必要だと言われます。

あとは、その後の入浴についてなんですけれども、入浴は、皮脂が落ち過ぎるとか、かゆみを誘発するということがありますので、小さい子供、新生児や乳幼児に関しては、熱過ぎず、長過ぎずが大切だと言われていますので、あまり長い時間は控えたほうがいいかもしれないです。

まず1つは、洗浄という行為です。

次に、その後の保湿です。洗浄を行うと、どうしても角層表面の皮膚や角層間の細胞間脂質が溶け出してしまって、乾燥やバリア機能の低下を伴うリスクが上がります。なので、乾燥を防ぐために保湿をしましょうと言いますけれども、そのタイミングはいつがいいですかという話になります。

そうした場合に、グラフのほうに少し出ていますけれども、ちょっと見にくくて小さくて申し訳ないんですけれども、大体三、四十分ぐらいで、入浴前と入浴後の角層内の水分量が同じぐらいになるので、できれば150%ぐらいを保つ15分以内。それに関わらず、入浴直後が一番いいかなと思います。なので、基本的には、保湿は入浴後のすぐにやっていただくのが一番効果的かなと思います。

スライド6.スキンケア:保湿

次に、では、どういう保湿成分を持った薬を使ったほうがいいんだろうか。そういう話になるかなと思います。

こちらに、今、スライド7のグラフに表を出しているんですけれども、基本的には、グラフというか、この表を見ていただければ分かりますけれども、セラミドという天然の保湿因子、これが一番、圧倒的にいいと思います。

ただ、こちらは保険の処方がないということで、やはり非常に高価であるということです。今、実際にかなりいい商品が出始めていますけれども、まだ完全にセラミドの力を発揮できるような完璧な商品は、まだまだ出ていないのかなと思います。

ほかにも、ケラチナミンとか、よく足などに塗る尿素配合薬というものがありまして、こちらも非常にいいんですけれども、いかんせんちょっと刺激が強い。なので、乳幼児の子には、手足以外についてはなかなか使いづらいかなということが挙げられます。

なので、比較的何も考えずに使っていただけるのは、スライド7の下の2つです。下の2つのヘパリン類似物質、よくヒルドイドと言われていますけれども、こちらと、あとはワセリンです。白色ワセリンやプロペトと言われている、この2つが、基本的には使われるということがあります。

ワセリンは、どちらかというと、基本的には皮膚の表面に蓋をしてあげるようなイメージがありまして、外からの刺激もブロックしてくれる。中からの水分も抑えてくれるということで、保湿効果がある程度期待できる。

ヘパリン類似物質のヒルドイドに関しましては、どちらかというと皮膚の表面に水分を保ってくれるイメージです。外からの刺激などに関しては、あまり効果はない。一般的には、乾燥メインの症状に使っていただければいいと思います。

また、ワセリンはちょっとベタベタして、なかなか使いづらい面もありますけれども、間擦部やおむつかぶれ、よだれかぶれにも使えますし、いかんせん安いということもあります。

また、今、ここに出ていないんですけれども、ヘパリン類似物質のヒルドイドに関しては、乳児はたまに赤くなる子がいるので、赤くなった場合は、もうちょっと皮膚が強くなる幼児ぐらい、二、三歳以降に、また使っていただいたほうがいいかなと思います。

スライド7.保湿薬の種類と特徴

次に、こういった外用薬、保湿剤を含めて、どのぐらい薬を塗ったらいいんだろうか。これは、時々問題になります。

5年、10年ぐらい前ですかね、Finger Tip Unitという目安がよく言われるようになりまして、これは、大体人指し指の先端から最初の関節のくびれまでにチューブからクリームを出すと、大体1Finger Tip Unitに相当すると言われていて、これが0.5グラム前後と言われています。この0.5グラム前後の薬を両手のひらの範囲ぐらいに塗るのがちょうど適当だと言われています。

ただ、これはなかなかお話ししても難しくて、僕もぼうっとしていると忘れたり、なかなか難しいので、一番いいのは、基本的には、軟膏やクリームなどを使ったときに、体の表面がてかる、あるいはよく分からなかったら、ティッシュをぴたっとつけてみる。そのときにくっつくぐらいの量が一番最適ではないかと言われています。

スライド8.外用薬の塗布量の目安

今、保湿剤の話で、次に、紫外線防御のお話をさせてもらいますね。

紫外線に関しては、今、ここにいろいろ書いていますけれども、UVAとUVBが一番問題になると思いますけれども、利点と欠点をここに書いております。

皮膚科の立場としては、一般的に普通に生活していただければ、そんなに紫外線が取れないということはなかなかないのかなと思いますので、基本的には、無理して頑張って日焼けをしなくてもいいのではないか。紫外線に当たるのを頑張ろうということは、そこまでは必要ないかなと思いますね。特に、どうしても免疫を低下させて、アトピー性皮膚炎の子はヘルペスができたりするので、そういった意味では、無理してあまり頑張って当たらなくていいかなと思います。

スライド9.紫外線防御

では、対策はどうしましょうかという話になると思うんですけれども、紫外線の防御の対策としては、一番簡単なのが、基本的に衣服でお肌の露出を抑えること、それが一番いいと言われています。

特に、乳児は皮膚が弱いので、本当はサンスクリーン剤などを使うというのもいいんですけれども、時々それで皮膚炎が起こることもあるので、肌の弱い乳児の子は、できれば衣服で抑えてあげる。幼児期以降になりますと、多少皮膚が強くなるので、肌の露出を控えることはもちろんですけれども、サンスクリーン剤、日焼け止めを使っていただく。

日焼け止めに関しては、子供用を使っていただければ問題ないと思います。基本的には、サンスクリーン剤、日焼け止めには紫外線吸収剤と散乱剤というものがこちらの表に出ていますけれども、吸収剤というものが入っていると、さらさらして、白くならないといういい面もあるんですけれども、いかんせん化学反応を起こして、皮膚に過度な負担がかかるということで、結構皮膚炎を起こしやすいので、子供に使うときはやはり子供用のものを使っていただく。

スライド10.紫外線防御

そのように使いましょうという話を先ほどしましたけれども、基本的にはSPFとPAというものが出てくると思うんですけれども、特に問題なのはSPFですかね。肌が赤くなるのを避けるのはどうすればいいですかということです。

SPFに関しては、基本的には、大体10から20ぐらい。今のものはほとんど20を超えていますかね。あとは、PAというのは、日焼けの黒ずみを抑えるものなんですけれども、大体1から2程度で十分です。

なので、基本的には、今、出ている市販のものに関しては、ほとんど問題ないかなと思います。よっぽど長時間遠足で出かけるということがなければ、基本的にはかなり低い数値でも問題ないと思います。それよりも、一番問題になるのは、塗りむらと、あとは、落ちてしまう、そちらのほうが問題になりますので、そういった日焼け止めをしっかりと、できれば2回ぐらい同じところに塗っていただく。あとは、二、三時間で汗で落ちてしまうことも結構ありますので、外に出て二、三時間以上遊ぶときは、必ず塗り足していただく、そちらのほうが大切かなと思います。

以上で、簡単にスキンケアのお話は終わらせていただきます。

スライド11.紫外線防御 サンスクリーン剤の選び方と使い方