2.子どものスキンケア「アトピーを含む子どもの皮膚のケア」(4)

今までがステロイドの話で、あとほんの少しなんですけれども、別の塗り薬もありますよという話です。

タクロリムス軟膏、プロトピックと呼ばれていますけれども、こういったものが10年ぐらい前に出てきたお薬なんです。先ほどのステロイドの副作用は皮膚でも多少ありましたけれども、こういったものがほとんどなくて、唯一、ニキビなどの感染症にはちょっとだけ弱くなりますが、それ以外に関しては副作用がほとんどないということで、非常に使いやすいです。

強さとしては、「strong」、「medium」と言われて、小児で使うようなレベルのものとほとんど強さが同じなので、今後、ステロイドを長期に使うのが怖ければ、こちらのほうに移行していただいても十分かなと思います。

刺激が少し強くて、初めの1週間だけぴりぴりして痛いということもよくあるので、そこはお話ししたほうがいいかもしれないです。

今言ったように、ステロイド、あるいはタクロリムス、こういった薬を使って、まず初めに治療を頑張りました。

スライド31.タクロリムス軟膏(プロトピックR軟膏)

では、次に、一時的によくなった。どのように維持していきましょうかといつも言われるんですけれども、今までは、かなり昔では、リアクティブ療法といって、左側のように皮膚の症状が出てきたら一生懸命塗り薬を塗りましょう。

よくなってきたら、やめてしまいます。そうすると、実はくすぶって目に見えないような炎症が残っているのではないかと言われて、この炎症が残っていると、またすぐにぶり返す。それで、また強い薬をいっぱい使うということを何回も繰り返して、皮膚にかなり負担をかけてしまうのではないかという方法です。

今では、プロアクティブ療法といって、まず初めに、しっかりと塗り薬をこまめに塗って症状を抑える。症状が見えなくなっても、実はくすぶっている部分があるので、それに関しては、薬の回数や強さを少し落としていきながら、定期的に行う。本当にそれでも大丈夫だったらやめてもいいと思うんですけれども、やめるときにゆっくりやめていく。それが非常に大切だなと言われています。

スライド32.プロアクティブ療法

今、皮膚科が一番使う外用薬は、このステロイドとタクロリムスだったんですけれども、最近、新しく別の薬も出てきました。

これも、基本的にはタクロリムスと同じような使い方をすることが多いんですけれども、特徴の1つとしては、ここに書いていますとおり、刺激が少ないので、先ほどのタクロリムスより使いやすいと言ったら変ですけれども、基本的にはそういうことかなと思います。ほとんど使い方はステロイドやタクロリムスと同じかなと思います。

スライド33.デルゴシチニブ軟膏(コレクチムR軟膏)

あとは、スライド34は皮膚科としてはあまり使ってほしくないと言ったら変ですけれども、使い方を注意してほしいよという薬の1つです。

通称NSAIDsと言われている抗炎症外用薬なんですけれども、こちらに関しては、僕らが使っているのはオイラックスが疥癬のときに使えますよとか、アズノールというお薬ですね。やけどのときなど、それ以外はなかなか使わないです。なので、NSAIDsと呼ばれている外用薬は、抗炎症作用がステロイドに比べるとめちゃくちゃ低いです。

さらに、なぜか知らないですけれども、かぶれる可能性がそこそこあって、効果は弱いのにかぶれる可能性が高いのであれば、別にこういうものを使わなくて、必要だったらステロイドとか、先ほど言ったタクロリムス、プロトピックといったお薬を使えばよくて、それほど症状が強くなければ、むしろワセリンなどでもいいのではないかというぐらいなので、アズノールはいいと思いますけれども、ほかのお薬はあまり使わなくてもいいのかなと思います。

スライド34.非ステロイド系(NSAIDs)抗炎症外用薬

スライド35はプラスでちょっとだけ。ほかには、少し毛色の違う感じで、亜鉛華単軟膏、サトウザルベと言われている亜鉛系の塗り薬もあります。

これは、いろいろ効能、効果を書いていますけれども、一番大きな効果というか、恐らく一番大きな効果は、皮膚にちゃんとくっついてくる。皮膚にくっついてくれるので、外からの刺激をブロックしてくれるといったことが一番大切かなと思うので、使い方としては、よくよだれかぶれを起こす口の回りとか、あとは、下痢をしたときによくおむつかぶれになりますけれども、そういったおむつかぶれなどに非常に使えるものがあります。これも、別にアトピー性皮膚炎の子に限らず、かなり使わせていただきます。

スライド35.亜鉛華単軟膏(サトウザルベ)とCMC-ZnS

ただ、ちょっと落としづらいので、そこのところだけ気をつけていただければいいかなと思います。こういうものもありますということです。

あとは、今は塗り薬の話をしましたけれども、次は、飲み薬。実は、これはちょっと前に作ったスライドなので、本当は内服療法として、子供に使える新しい薬も、本当の最近に出始めています。

僕も経験がほとんどないので、これに関しては割愛させていただきますけれども、ちょっと前までは、基本的に内服療法としてアトピー性皮膚炎に本当に効く薬というのは、特に子供では出ていなかったです。上にあるように、ステロイドの内服療法は成長障害があったり、シクロスポリンという免疫抑制薬も、16歳未満で使っては駄目だよと言われていたので、基本的にはかゆみを抑えるということが一番大きいんですけれども、抗ヒスタミン薬を使うことがあります。

よく知っているのはアレロックや、アレジオンやクラリチン、書いていますけれども、アレグラなどといった飲み薬というのは、飲んでいただくとかゆみをある程度抑えるので、これを塗り薬と併用させることが非常に重要かなと思います。

スライド36.内服療法

ただ、よくあるのが、かゆみ止めの飲み薬だけ飲まれるという方法。それは、基本的には皮膚の炎症を抑えることにならないので、単純に症状を一時的にちょっとだけましにさせているだけであまり意味がないので、ちゃんと飲み薬を使うときは、塗り薬と一緒に使う、そこのところが大切かなと思います。

あと、使う薬は、一応、書いていますけれども、非鎮静性の第2世代。新しめの抗ヒスタミン役を飲んでもらうほうがいいかなと思います。

治療例なんですけれども、先ほどの子です。

これは4日で、めちゃくちゃ強い薬を使ったわけではないんですけれども、特に乳児はかなり反応がよくて、八、九割ぐらいの子が、これだけの症状を持ってきても、4日でこんなになりました。顔も体もかなりよくなります。なので、特に乳児や幼児、一、二歳ぐらいであれば、結構ステロイドやほかの薬の反応も非常に強くて、非常にきれいになったところです。

スライド37.治療例1

これは、先ほどの子かな

これは、もうちょっと大きくなってからですね。この子たちは、少し強い薬を使わせていただきました。それで、3週間ぐらい治療をして、体のごわごわはかなりよくなって、足のほうも完全ではないけれども、ある程度まではよくなりました。

ただ、だんだん年齢がいけばいくほど、薬の反応性とか、治療に関しては抵抗するようになるので、できれば早めのうちから治療を始めたほうがいいのかなと思っています。

スライド38.治療例2

この子は3人目ですね。この子も同じような感じですね。

やはり頑張れば、かなりいいところまで来ます。基本的に、頑張れば、僕のところに来る結構難しい子でも、七、八割ぐらいは、一時的にはかなり改善します。

ただ、あと問題なのは、これを続けることです。継続が結構大変なので、そこのところは、あらかじめお母さんたちにも言ったほうがいいかなと思います。

スライド39.治療例3