3.気になる子どもとその対応「発達に課題がある子どもや家庭に問題がある子どもへの対応」(3)

まず、場所見知や人見知りがある場合、園になかなかなじめない、初めてのことが苦手なお子さんには、1日の予定や次の行動を予告しながら、生活に見通しを持たせるようにしてみます。例えば、前の晩、あるいは前の日に、あしたの予定を毎日話していきます。そうすることによって、心の準備ができるようになります。

次に、外出先で話さない、担任の先生にしか話さない、日常生活でも話さないときには、無理に話させようとするのではなく、場面に応じた言葉を大人が代弁してあげ、子供が安心する環境をつくるように助言をします。

スライド19.

落ち着きがない、多動が考えられる場合には、好きな遊びを見つけ、集中する時間を増やしていくことや、大人の膝の上に子供を抱いて落ち着く時間を少しずつ増やします。そのときに、数を数えたり、砂時計で一定の時間じっとしておく経験をさせてみるようにします。そして、少しでもじっとしていられたら、大いに褒めます。褒めることがとても大事です。

パニックやかんしゃくを起こしているとき、自分の思うようにならずかんしゃくを起こす場合には、静かにその場から離れて、気持ちを切替えさせるようにして、静かになったときに、「何々したかったのかな?」と、子供の気持ちを酌み取ります。ただし、子供の要求をそのまま通さないようにします。

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ここでもう一度、パニックやかんしゃくの対応を紹介します。なぜならば、1歳6か月健診頃に、しつけの仕方、叱り方、怒っていいですかという質問が多いからです。

パニックやかんしゃくを起こしている最中の対応として、なだめないほうがいい、叱ったりしない、場所をほかへ移す、移動しているときに叱らない、パニックが収まるのを待って、穏やかに声かけをする、いけないことの要求は通さないことです。

スライド21.パニック、かんしゃくを起こした時の対応

お子さんが1歳を過ぎた頃に、お子さんのかんしゃくの対応を知っていますかとさらりと聞いて、アドバイスしてあげるといいと思います。

お子さんたちのいやいや期の対応として、困る行動への働きかけについて紹介したいと思います。

園では見られない姿だとしても、家庭では大変困っている場合があります。ある場面を想定して説明をします。

Aは前の状況、Bは子供の行動、Cは結果です。

A、子供「お菓子を買って」、お父さん「今日は買いません」。

子供は、要求が通らないので泣きます。

結果として、父が仕方なく買い与え、子供は泣きやみますという場面が想像できるかと思います。

スライド22.困る行動への働きかけ

そこで、Aの前の状況に働きかける方法です。

前の状況として、お店に入る前に事前に予告をします。「今日はお菓子は買いません。泣いたら外に出ます」。

そして、次の場面が考えられます。

子供の行動として、泣かずにいられた。

すると、結果として、泣かずに我慢できたことが褒められるという方法です。

また、次の場面も考えられます。

Bが泣いてしまいます。

そうすると、Cは約束どおりにお父さんから外に連れ出されます。そして、泣きやんだら褒めます。

どちらも、お菓子は買わない、泣いたら外に出るという、事前に予告しておいたことを予告どおりに親が方針を変えないことが大事になります。

次に、C、結果に働きかける方法です。

A、前の状況で子供が「お菓子を買って」、父親「今日は買いません」。

行動として、子供は要求が通らないので泣きます。

Cは、結果として、買ってもらえず激しく泣くが、親は方針を変えない。もし親がお菓子を買ってしまったら、子供は泣いて要求を通すということを学びます。

お菓子を買わずに、子供が泣いても、泣きやんだときに我慢したことを褒めると、我慢するということを学習していきます。

子供の困る行動に出会ったときに、子供に届く指示の出し方です。

スライド23.A (前の状況)に働きかける
スライド24.C (結果)に働きかける

できるだけ肯定的な言葉かけをします。「何々しなさい」、「何々しないで」の命令ではなく、「何々してね」、「何々してください」、「何々します」、非言語でも伝えます。「ちゃんと片づけなさい」ではなく、「積み木を箱に入れようね」と、子供への指示は簡潔具体的に伝えます。

また、先ほど紹介したように、予告で「家に帰ったらおやつにするよ」などと、事前にやるべきことを伝えておくと、子供は心の準備ができ、また、楽しみに言うことを聞きます。

スライド25.子どもに届く指示の出し方

そして、子供たちには褒めることが一番大事です。

「格好いい」、「天才」、「すごい」、「さすが」と、できたことを褒めます。できたことを定着・強化させるためです。「頑張っているね」、「大丈夫」、「さっきよりも上手」と、頑張っている過程を褒めます。できていなくても、モチベーションが上がります。

「○○ちゃん、大好き」、「笑顔かわいいね」、「ママ、うれしい。ありがとう」、子供の自己肯定感をアップさせます。1番にならないと気に入らないお子さんには、自分が負けたときに、自分自身に「まあ、いいか」と思えるように、また、自分が勝ったときに、相手に「惜しかったね」と言えるといいと思います。

この『おこだでませんように』という絵本を皆さん御存じでしょうか。いつも怒られている子供の心の本です。子供たちは、褒められたいのです。

スライド26.「ほめる」ことが一番大事!

しかし、「昔はそうだった」、「自分もそれで育った」、「しつけのつもり」、「教育の一環」と、怒って育てるべきだという声があります。知らず知らずに、子供の心を傷つけていないでしょうか。

中には、園や学校で怒られ、そして、同じことを家庭でも怒られ、1日何度も怒られる子供たちがいます。

いつも怒られてばかりいるお子さんは周りにいないでしょうか。子供たちは、たくさん失敗します。同じ失敗をさせないように、大人が一緒に考え、守ってあげたいと思います。

スライド27.おこだでませんように