4.COVID-19が子どもを取り巻く社会に与えた影響

流行初期に発出された緊急事態宣言に伴い、医療機関への受診控えが問題となりました。小児科に普段なら受診するような症状があったのにもかかわらず受診を控えた保護者は44%、予定受診を控えたものも29%に上り、その影響で状態がコロナ以外の病気が悪化した患者も増えました(7,8)。全国一斉休校も行われましたが、学校検診後の歯科・眼科・耳鼻科への受診率も低下していることが2020年学校検診後治療調査から明らかになっています(2021年5月23日全国保険医団体連合会)。COVID-19による保育所閉鎖は未就学児の社会情動的スキルの獲得に悪い影響を与え、感情のコントロール・他者との協働・目的の達成など、学校生活に必要なスキルの醸成に影響が出ました(9)。2021年まではCOVID-19の感染者の多くは成人であり、子ども同士の感染より、大人から子どもへの感染が多いことが判明したこともあり、試行錯誤を経ながら、学校や保育所における濃厚接触者の定義や、休校・休園に関する基準の見直しが繰り返し行われてきました。2022年からは、小児や乳幼児の感染者は増加しましたが、休園を行うことのデメリットを鑑みて、極端な登園・登校の制限は避けるようになったのは正しい判断と思われます。

人流や経済活動の低下、親の失業率の上昇などの影響に子どもは無縁ではいられないのが実情です。COVID-19流行期において、乳幼児をもつ母親の6.6%に新たなうつ・不安症状を認められました(10)。

【参考文献】

  1. 7. 今井 健, 三瓶 舞, Piedvache A, et al. 緊急事態宣言下における子どもの受診控えと保護者の心理社会的因子の関連. 日本小児科学会雑誌 2022;126(1):53-63.
  2. 8. Yamada M, Funaki T, Shoji K, et al. Do Not Delay: Safe Operation for Pediatric Living-donor Liver Transplantation Programs in the COVID-19 Era. Transplantation 2021;105(3):e39-e40. doi: 10.1097/tp.0000000000003594 [published Online First:2021/02/23]
  3. 9. Doi S, Miyamura K, Isumi A, et al. Impact of School Closure Due to COVID-19 on the Social-Emotional Skills of Japanese Pre-school Children. Front Psychiatry 2021;12:739985. doi: 10.3389/fpsyt.2021.739985 [published Online First: 2021/11/09]
  4. 10. Kimura M, Kimura K, Ojima T. Relationships between changes due to COVID-19 pandemic and the depressive and anxiety symptoms among mothers of infants and/or preschoolers: a prospective follow-up study from pre-COVID-19 Japan. BMJ Open 2021;11(2):e044826. doi: 10.1136/bmjopen-2020-044826 [published Online First:2021/02/25]