1.はじめに
出血は小児科診療で比較的よくみられる症状です。代表的な出血症状として、紫斑、鼻出血、間接内出血、筋肉内出血、口腔内出血、血尿、臍出血などが挙げられます。重篤な出血では頭蓋内出血が最も発生頻度が高いです。出血症状は多くは何らかの外傷が原因で起こりますが、明らかな外傷歴がなくても起こる場合や、出血症状を反復する場合、止血困難な場合は病的な出血傾向(出血素因)を疑います。このような場合、出血を起こす何らかの基礎疾患を有している可能性があります。したがって、出血症状をみたら、病的な出血でないかの判断が必要になります。病的出血では、先天性と後天性の出血性疾患があります。前者では先天性凝固障害症が代表的です。後天性ではでは様々な疾患があります。血友病は先天性凝固障害症で最も発生頻度の高い疾患です。近年、遺伝子工学的テクノロジーや抗体産生技術の進歩により血友病の分子生物学的解析が進んでいます。これは正確な診断にも貢献していますが、遺伝子組み換え凝固因子製剤、抗体製剤あるいは遺伝子治療など、治療面の進歩にも大きく貢献しています。