2.ホントはやめたい! スマホ子育て(6)

冒頭の映像の続きをごらんください。


泣き続ける赤ちゃん。見つめる父親。スマホを置き、ぎこちなく赤ちゃんを抱き上げる。あやすと赤ちゃんは泣き止む。スマホ越しに様子を見ていた母親が目頭を押さえる。


“ Technology will never replace love. ”
(タイ携帯電話会社dtacのCMより)


これは、dtacというタイの携帯会社がつくっているコマーシャルです。日本でもそのうち、どこかの携帯電話会社が、浦島太郎と乙姫が結婚してこうなるっていうのをつくってくれないかなと思っています(笑)。

最初の子育ては、大変です。正直、あんなにうまくいかないです。私も我が子を抱っこしましたが、泣き止みません。でも、それを乗り越えて、母親でも父親でも、そういうことを繰り返しているうちに、本当に子どもがかわいいなと思えるし、子どものほうも、こちらをすごく信頼してくれているなというのがわかります。そこに子育ての喜びがある。そこに親としての喜びがあると私は感じています。皆さん方が支えるのはそこだというふうに考えます。

実は子育てを大変にしているのは、安易な「便利」や「簡単」かもしれないというふうに疑ってみてください。子育て情報を得るのにスマホは必要です。今どき、スマホなしに生活するなんて考えられません。「そりゃそうだよね」と言っちゃいますよね。本当にそうかな? と、ちょっと思ってみてください。

特に、子育て情報をネットで検索するというのは実はとても危険なことです。わからないことを検索したら、いっぱい出てきます。山のように情報が出てきます。どれが本当か、専門家でもわからないぐらい。

それが本当かどうかを見極めるのに、情報を読み解く力と、子育てに関する「専門的な知識」が必要です。これはすごい矛盾ですよね。わからないから検索しているのに、専門的知識がないと本当の情報がわからないのです。

結果どうなるかというと、「自分が信じたい情報」だけを選んできます。誤った情報なら子どもの命にかかわっちゃうんです。実際、ハチミツを食べさせた赤ちゃんが大変なことになったなんていうのもありましたね。

しかも、見るだけでとても時間がかるわけです。この情報が必要と思って探すならなおさらです。その間、子どもから目も心も離れている状態です。専門的な内容だったら、お医者さんや保健師さん、保育士さん。日常的なことだったら、親や友達に聞くというその習慣をつけることのほうが、ずっとずっと自分にとって楽になります。

なぜかというと、わからんかったら「ほんと?」と聞けばいいんですね――すみません。ときどき九州弁が出ます。それから、一緒に考えてもらえます。もっと大事なのは、本当に困っているなと相手が思ってくれたら、助けの手を差し伸べてくれます。リアルな人間だから助けの手を差し伸べてくれるんですよ。ネットの人が、「あなた大変そうだから、今から行く!」と言ったら、ちょっと怖いですね。スマホに頼ったら、どうしても孤立した子育てになってしまうのです。

今の保護者が求めている対応はこういうものです。押しつけはいや。自分の苦労をわかってほしい。今、どんな時代であるかをわかってほしい。意味や理由をちゃんとわかりやすく説明してほしい。「わかりやすい」が大事なのです。効果もわかりやすくする。自分にも子どもにもメリットがあるということを示して、信頼できる人だったら、ストレートに言われても聞けるわけです。そして、何が当たり前かちゃんと教えてほしい。

だから、皆さんが保護者と信頼関係があるのだったら、ストレートにズバッと言ったほうが伝わります。変に遠慮して言うと、うまく伝わらないどころか曲がって伝わります。だから、こう言ってあげてください。「乳児・幼児のスマホ、タブレット利用は、将来にわたった発達や健康に対する安全性の証明は全くされていないんだよ。それはちゃんと知っておいたほうがいいよ」と。「じゃあ、本当はどうしたらいいの?」と必ず聞かれると思います。そのときに、【表4】のような取り組みの話をしていただければいいと思います。


【表4】

アウトメディアの取り組みについて(かっこ内は本サイトの参照ページです)

  • 1.子育ての「うれしい」「楽しい」を発見する方法(
  • 2.よびかけてみよう!メディアリセットチャレンジ!(
  • 3.2歳以下の乳児に電子メディアは不要(
  • 4.スマホ時代だからこそ必要な家庭での「テレビの約束」(
  • 5.食事時のテレビOFFで家族が変わる!(
  • 6.テレビ・ゲーム・スマホなしでどう過ごすのか?
    • 体がしっかりしてきたら近所におさんぽ
    • 幼児期は特に外遊びが必要
    • 就寝前は穏やかに
    • 乳児・幼児とも一人で遊ぶ時間を大切に(
    • 幼児期の「かまって!」は1分間声がけで対応(

最後に、すみません、時間オーバーしておりますが、この映像をごらんください。

これは、シンガポールの小学生が書いた作文をもとにした歌だそうです。その小学生、家にただいまと帰ってくるけれども、お父さんもお母さんも返事をしてくれない。ところが、スマホがプルッと鳴ったらパッと反応するんです。遊んでと言うけれど、お父さん、お母さんは遊んでくれない。何をしているのかなと思って覗くと、スマホでゲームをやっているわけです。お父さん、お母さんが、そんなにスマホのことが好き、そんなにスマホのことが大事だったら、僕はお父さん、お母さんに好きになってほしい。大事にされたいから、どうか神様、僕をスマホにしてください――そういう作文なのだそうです。

作文

ちなみに、日本の中高生で、親がスマホを使い過ぎではないかと思っているのは25%だそうです。

この映像は、啓発のために自由にお使いくださいと言われています。必要があれば提供できます。

「時代の流れに流されないことが親と子を守ることです」ということで、話を終わらせていただきます。

どうもありがとうございました。(拍手)

前川どうもありがとうございました。

非常に膨大なデータをもとにして、この問題についてのいろいろなことをお話しいただいたと思います。

特に内容でわからないことはございますか。質問はよろしいですか。

では、これで古野先生のお話を終わらせていただきます。