4.総合討論(11)
前川あと時間が15分ほど余っていますので、こういうことを聞きたいという方がいらしたら、どんなことでも結構です。手を上げて質問してください。
質問者埼玉の保育園の園長をしております。何回かこのセミナーに出させていただいております。昨年はオキシトシンを中心にお話をお伺いしました。オキシトシンは、今回のテーマの大きな役割になるというふうに私は思えるのですが、その点を改めてお伺いできればと思います。
それから、村田先生、脳(ブレイン)のことで、テレビゲームやスマホで脳に損傷が起きているということも聞いていますけれども、その辺も少し触れていただければと思います。
もう1点は、今、これだけ乳幼児期の大切さが損傷され、育ちにくい世の中になっているということですね。これはもっと社会的にも広げていくべきではないかと私は考えますけれども、前川先生、その辺のこともお伺いできればと思います。
以上です。
村田後の質問、私の名前が出ましたので答えますが、一番最初に大きく問題になったのが、ゲーム脳ということです。ただし、ゲーム脳はいろいろ検討した結果、その真偽のほどについてはサスペンド(決定の保留)であるという状況で終わっている。賛否両論で、どちらかというと否定的な意見のほうが強い形で終わっているのではないかと思っています。その後の進歩については、私、十分な知識を持っていないのですけれども、今後、技術的に研究しようとすれば、どういう状況を与えれば脳の部分がどう働いていて、その働き方が通常の状態とどう違うのかというのは、かなり鮮明に見ることができるように技術的にはなってきています。
ただ、成長段階の乳幼児期にそういうことを実験的に対応できるかどうかということが、非常に大きな問題です。これからは、技術的・理論的にはかなり実証性をもって、どういう影響を与えるのか、それから、小さい子どもの発達年齢によって、同じゲームを与えても脳のどの部分にどういう影響を与えているのかということは、かなり鮮明に解析できると思いますが、対象が対象だけに、実証的な証拠が上がってくることは難しいのではないかと考えています。
古野先生、間違いがなければ、ゲーム脳はどうなったのでしょうか。補足していただけますか。
古野ちょっと補足します。【参考3参照】
子どもの脳イメージを撮ってその画像解析をするということを、東北大学が非常に熱心にやっています。川島隆太教授、それから、ここに名前が出ています竹内光准教授などです。テレビの影響に関して、2013年11月に論文発表をしています。言語脳だとか、高次認知――要するに、リンゴと言ったときに、リンゴが頭に思い浮かぶかという話で、そこに発達の遅滞が見られるということが、脳の形、脳の画像からわかってきている。
それから、ゲームに関しては、2016年1月に、小児の脳のいろいろなところに悪影響が出ているということを、これもやはり論文発表をしています。
だから、先ほどの「損傷か」ということについては、損傷ではないですが、発達に対しての遅滞が見られたり、定型と違うような発達の仕方が見られたりということが起きているということが、少なくとも東北大学の研究として発表されています。
質問者しかし、先生、それは乳幼児にはないのではないでしょうか。
古野これは、対象としている年齢が8歳~18歳です。
村田私もそう思います。その研究は私も知っていますが、乳幼児にはそういう研究をやっていないと思うんですね。
古野はい。乳幼児を対象にした研究は多分ないと思います。おっしゃるように、難しいと思います。
前川乳幼児はないですね。