3.臨床医からみた乳幼児が育つ基本とスマホへの対応(3)

それを前提として次にお話ししたいのですが、スマホというのは人間になる要因に満ちているわけであります。人とスマホとのつき合いは、人と人とのつき合いそのものであります。VRが出てくるのは、感覚提示というのがありますね。画面、スクリーンにものがあらわれるわけです。人と人とのつき合いは視線が合うという行動と同じです。ここで人とのつき合いが始まるわけです。

それから、シミュレーションのシステムが動き出します。シミュレーションのシステムは決して我々に不利になるような状況を醸し出さないわけです。

皆さん、ワープロを使っていらっしゃいますね。なぜワープロを使うのか。「きょうは」と打ったら「あすは」と出てきたり、「どこへ行こうか」と打って「何を買いますか」と変換されるようなら、誰も使いませんね。自分が思ったとおりに変換してくれるから使っていくわけです。こういう状況をメディアのシステムは醸し出すわけです。

そして、触れ合うこと。触れ合うというのは操作をするということですが、視線が合って、微笑みがあって、触れ合う。これは、みんな人とのつき合いをする最初の行動ですね。人とつき合って微笑んで握手をするわけです。

ちなみに、ここに示しているスライドの写真は、今から30年くらい前、東京駅の総武線から下りていく地下のところに、千葉工業大学が出していた宣伝からとってきたものです。この写真の状況というのは、人と人とのつき合いと全く同じ状況を醸し出しているわけであります。

そこで、まずアメリカの紹介をしますが、こういうことを言っています。

「米国小児科学会は両親と小児科医に勧告する。

子どもたちが上手にメディアを使うには、両親は子どもがメディアをどのように使っているかを知らなくてはならない。

研究は、メディアを過剰に使っている子どもは、注意、学力、睡眠、食事に問題が生じ、また、肥満にもつながる。これに加えて、インターネットと携帯電話は違法な、そして、危険な行動の基盤をつくることを示している。

スクリーンタイムを制限し、教育的なメディア、本、新聞、ボードゲーム――これはいろいろ野球ゲームをやったりするものです――のような電子形態でないものを与え、また、子どもと一緒にメディアを見ることによって、メディアの使い方を教えることができる。

両親は子どものいる部屋にテレビ、パソコン、ビデオゲームを置かないこと。夕食中はテレビを見ないこと。子どもと娯楽用メディアを1日1時間から2時間にすることを約束し、しかも、質の高い内容のものを使うこと。子どもは戸外の遊び、読書、趣味、自由遊びでの想像力を働かせることが重要である。

結論として、テレビや娯楽メディアは、2歳以下の子どもには避けるべきである。子どもの脳は最初の1年間で急速に発達するし、幼い子どもは、スクリーンではなく人々と交流することによって最もよく学ぶのである」。

これを“live person”あるいは、いろいろな実物を与えるのは“real presentation”という言葉を使っています。

そして我が国では、我々、日本小児医療保健協議会という組織が提案書を出しておりますが、それを引用するには長いので、こちらに、日本小児科医会が出している「スマホに子守りをさせないで!」というものを選びました。

スマホに子守りをさせないで!

ところが、これに大きな反論が出ているわけです。一部を読んでみますと、「スマホ子守りやめてという正論やめて!」と。「そんなこと言ったってやってられないじゃないか」「スマホ子守りの親もいいじゃない?」「医師がするそもそもの議論は」というようなことで、「勝手なことを言っている」という理由の反論がたくさん載っています。

「スマホに子守りをさせないで!」はエビデンスがないという意見は、私に言わせると、スマホがvirtual worldをつくり出すコンピューターであり、また、スマホが誘うインターネットの世界は、独立した“virtual world-the Internet”であることについて理解がないということなのです。その世界を現実の世界だと子どもが理解してしまうわけでもあります。要するに、親と同じものというふうに、少なくとも2歳から3歳くらいの子どもは認識してしまうということであります。