4.総合討論(9)
古野もう一つ、今の依存症のお話です。保護者がどうも依存がひどい。例えば、お父さんがずっとゲームをしているとか、子どもがゲームを邪魔すると乱暴してしまうとか、親の生活自体が狂ってしまっているというのは、ゲーム障害の診断基準に当てはまるぐらいの状態です。今、中国と韓国ではというふうにおっしゃいましたが、日本では、まだその辺が表面化していないだけです。
村田そうなんですね。
古野潜在的には100万人以上いると思います。それが20代、30代にすごく多いですから、皆さん方がかかわられている親御さんたちがなっている可能性はかなり高いです。それがかなり深刻な状態だったら、下手に手が出せないです。そこまでではない、まだ話ができるという状態だったら、まずは味方になるところから始めていく。本人自身も気にしている場合が多いのです。まだ依存症までいかない、依存状態は結構ひどいけれど、まだ人に相談できるぐらいのレベルだったら、協力して頑張ってやめてみるということをする。そのためには、まず、自分がどのくらい使っているかというのを認識してもらうところから始めることになります。
神奈川県の久里浜医療センター長の樋口進さんが、その治療の専門家です(脚注1)。最近、『スマホゲーム依存症』という本を出されています。それを見ていただくと、どういうアプローチが必要なのかということがわかると思います。もう手が出せませんというレベルの人には手を出さないほうがいいです。まず、子どもをいかに守るかということを考えたほうがいいと思います。ご家族がしっかりしていて、お父さんだけが問題というのだったら、そのご家族で何とか頑張って影響が出ないようにしてもらうという考え方になると思います。お父さんはお父さんで治療に向かっていってもらわないといけないのですけれども、それは本当に難しいです。それはもう皆さんの立場ですることではないと思います。皆さんは、子どもがちゃんと育つように、子どもがちゃんと育つ家庭環境をできるだけいい状態でつくれるように、ということを考えるわけです。
もっと軽い方に関しては、試しにやめてみる「メディアリセット」をやってもらう。そのためには、まず、皆さん方が1週間、スマホを「通話のみ」にしましょう。テレビは「見ない」にしてみましょう。ビデオも「見ない」にしてみましょう。試しに1週間やってみてください。どれだけ苦しいかがわかると思います。そこからやってみるのがいいのではないかと思います。
もう一つは、そういった話を皆さん方からだけするのは難しいと思います。よかったら、私たちのように話せる人間が何人か関東にもおりますし、私も呼ばれれば行きますので、来て話をしてもらって、「あのときにあの先生、こんな話しよったやろ」というふうなことを言っていただくと話しやすいでしょう。一度、外部の講師から保護者にガーンと爆弾を落としてもらって、その後、皆さんがフォローする。皆さんが敵にならないほうがいいです。保護者の味方になってもらう。そのためには敵をつくっておくほうがいいです。敵としてぜひ呼んでください。ちゃんと敵になりますので。
村田我が国の中・高校生のスマホ依存症は50万人以上いるという厚労省研究班の報告が、今から5年ぐらい前に出ていますから、我が国も深刻な問題なのですが、なぜかあまり大きく表面化してこないですね。小児科の外来をやっていても、「ゲームをやっているので、2時3時まで起きている」ということをたくさんお聞きしますけれども、なかなか社会的な動きにはなってきていない。我々もそういうことにも関心を持って、きちんとした行動を起こさなければいけないと思っています。
脚注1
- 樋口 進:独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター長、インターネット依存等の行動嗜癖の予防・治療・研究が専門の一つ