4.総合討論(12)
質問者すみません。ゲーム脳についてですけれども、長くやっているとよくないということで、冬休みに入る前に子どもたちに、「30分やったらやめようね」と、終業式の日にみんなで約束したんですよ。それで、みんな、「守れたよ」という声が返ってきてうれしかったのですけれども、30分では長過ぎますか。
古野ゲームに関して言うと、毎日やるというのはよくないです。やる日を決めることが大事です。やる日とやらない日をつくる。依存性が高いんですよ。幼児期は結構30分でやめられるのです。これが、毎日やる習慣のまま小学校低学年から進んでいくと、時間がどんどん延びていきます。やらない日をたくさんつくっておく。週に3日~4日はやらないようにと言っています。やる日とやらない日をはっきり区別をつけるということです。
質問者そのような指導のほうが大事ですか?
古野はい。そして、やる時間は、小学生ぐらいになると、かためて1時間とか2時間でもいい。ただし、1週間でトータル3時間というふうに私は基準をつくっています。
質問者ありがとうございます。でも、私は、「ゲームをいっぱいやっていくとおバカな脳になるよ」と言っています。
古野ざっくりは間違いではないです(笑)。
前川先ほどのオキシトシンの関係ですけれども、少なくとも今のスマホによって愛着形成に障害がありますので、オキシトシンの活性は落ちていくのではないかと思います。
これは、スマホ育児ではありません。ゲーム依存症は、前頭前野の報酬:ドパミン回路の側坐核が関係し、ゲームをしないと不安が増し、依存症になるといわれております。
村田あと、古野先生に補足していただきたいのですけれども、いただいた質問に「他の先進国と比べて、スマホの利用の対策の違いはありますか。中国など急激に経済の発展した国と比べて、問題の発生はどうですか。親と一緒に問題に取り組まれますか」というのがあります。先ほど、古野先生のお話にあったように、アメリカの精神医学会がこういう問題に取り組んで、それを臨床的なカテゴリーとしてどのようにしようか、依存症をどう提示しようかと。質問も大変ですから、日本語、英語、5つぐらいの言葉の質問の仕方も、答え方によって変わらないように……。英語をベースにしているけれども、日本語に翻訳するときに、英語を読んだ人と日本語を読んだ人が同じに考えられるかというような細かいことをやって、定義をしたのですが、どうしても話がまとまらなかったことがあるんですね。
結局、どういう形でまとまったかというと、ゲーム依存症ということでまとめたわけです。スマホとか、タブレットとか、コンピューターの依存症という形で、中国であるとか、日本からも先ほど言われた先生が委員で出て(日本はオブザーバーだったかな)、いろいろ細かくやったのですが、最終的にはゲーム依存症という形で決着がつきました。スマホとかこういう問題についての感覚と、彼らが感じている感覚と、ちょっと違うんです。
どうしてそういう形でやったかというと、ゲームの仕方も問題があって、個人で遊んでいるのではなくて、大勢の人を取り込んでやるロールプレーというのがあるんですね。あれが非常に大きな問題だとか、それと発達障害があったり、いろいろそういうバックグラウンドもあるということで、私の認識としては、欧米がこういう問題についていろいろ感じている感じ方と、特に中国、韓国、日本などで感じている感じ方に若干ギャップがあります。
どこにそういうギャップを生ずる背景があるのかは、今後、考えていかなければいけないと思いますが、私が米国精神医学会の診断基準を決める委員会の決定を詳しく読んでみると、今申し上げたような疑問を感じながら、どこか、我々と彼らのこういう問題に対するアプローチの違いがあるのではないか。
ゲーム依存症などを治療する病院ができていますけれども、それも初めてアメリカでできたというのがビッグニュースになるように、ちょっと違う点があるのですが、この辺に関しては古野先生のほうが詳しいと思うので、補足していただければありがたいと思います。私がアメリカの精神医学会の議論をずっと読んだ結果は、今申し上げたようなところです。
古野すみません。私、アメリカは詳しくないです。今おっしゃったのは、DSM―5ですね?(脚注2)
村田そうです。
脚注2
- DSM―5:米国精神医学会が発行する「精神障害の診断と統計マニュアル」の最新版