4.総合討論(13)

古野アメリカの精神疾患のマニュアル、DSM―5というのが2年ぐらい前に出て、それには予備項目として入りました。今度、ICD―11(脚注3)というWHOが定義している病気の一覧の中に、「ゲーム障害」というので入ります。これは日本の樋口先生(脚注1)が大きくかかわっていらっしゃいます。この二つの診断基準はだいぶ違います。

村田ですから言いたいことは、ゲーム障害という形で入るわけですね。

古野そうです。

村田そこが問題で、スマホなど、今ここで議論をしているような問題とは別の時点で問題になっているわけです。そこが僕は非常に不思議に思っているわけです。

古野そうなんですよ。疾患としては特にオンラインのゲームが一番はっきり出ます。オンラインのゲームは薬物中毒と同じぐらいの症状が出てくるので、やはり急を要するということが一つです。

それから、ゲームはまだ利用制限ができます。ゲームは100%制限しても生活には支障は出ない。ところが、インターネットやスマホとなると、100%制限が、少なくとも大人に関してはとても難しい状態です。それから、機能が非常にたくさんあるので、分類しきれないのです。そういうことで、はっきり入らなかったみたいです。ただ、その他の障害の中には、一応、ネット障害というのは入っています。

あと、治療に関して言いますと、韓国が一番進んでいると言われています。それから、中国も軍隊が一緒になって、軍隊的な訓練に取り込んでいると言われています。どうしてかというと、その2つの国の依存が深刻だからです。

欧米は、今まではそんなに大きく扱われていなかったのが、先ほど先生がおっしゃったように、治療が必要な症状の人たちが表にだいぶあらわれてきているということで、治療する病院ができたのはたしか4、5年前でしたね。それくらいの大騒ぎになってきたわけです。日本もそんな状態です。

欧米とアジアでは依存に関しての度合いが違うようです。どうもアジア系のほうがルーズですね。特に子どもに対してルーズで、子どもを依存症にする傾向がもともと強いのかなと思います。要するに、それだけ子どもに対する規律が効きにくいような社会になっているのではないか。

ただ、欧米も今、すでに崩れてきています。急激に崩れてきていると思います。ですから、これから大問題に発展していくのではないかと思います。

村田それから、時間制限ですけれども、インターネットを考えたら、地球の裏側と通信しなければいけないわけですね。そうすると、昼間だけやりなさいと言ったのでは地球の裏側の人とは交信できないということがあって、考えれば考えるほど解決がつかない問題をいっぱい抱えているわけです。そういう認識もしておいていただきたいと思います。

前川まだまだご質問があると思いますけれども、そろそろ時間が来ましたので、締めの言葉にさせていただきます。

子どもに対するメディアの影響については20年以上前から言われておりますが、依然として解決しておりません。今回は、子どもが育つ本質、原理からこの対応について述べさせていただきました。スマホ子育ての対応は千差万別で、個々の事例によって異なります。それから、両親や子どもたちに対して愛情を持って接することが大切です。正解はありません。

いかがですか。今回のシンポジウムに出席して、何か得ることがありましたか。得ることがあった人、手を挙げてみてくれる?(挙手)わあ、うれしいですね。感激です。

短時間で恐縮ですけれども、これをもって本日のシンポジウムを終わりたいと思います。これからもよろしくお願いします。(拍手)

脚注1

  1. 樋口 進:独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター長、インターネット依存等の行動嗜癖の予防・治療・研究が専門の一つ

脚注3

  1. ICD―11:国際疾病分類ICDは、現在ICD―10が広く活用されているが、ICD―11への改定を検討中