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妊産婦と乳児の精神保健と地域での育児支援

九州大学病院子どものこころの診療部 特任教授 吉田 敬子先生

はじめに

わが国では、いま、子どもの発達とこころの問題に高い関心が寄せられています。子どもには、成長と発達の過程のなかで、さまざまなこころの問題が生じます。そして子どものこころの問題は養育者のストレスやこころの問題と密接な関係があります。

このようなときに、子どもに向き合い、一緒に取り組んでくれるさまざまな職種の人や周囲の者との良い出会いの経験を経て、子どもは思春期を迎えます。養育者も行き詰った状況からこころの余裕が生まれますので、親子関係でも良い体験が増えます。 このようにして子どもたちは青年期を迎え、かれらは親となる機会を得て、次世代の子どもたちが誕生します。女性は母親となり、妊娠出産を経験するわけです。

子どもの誕生の時期は、母親となる女性だけではなく、その子どもや家族にとり、メンタルヘルスの面では大変重要です。その理由は、赤ちゃんの誕生は本来おめでたいことですが、妊産婦は精神面の不調を生じやすい時期でもあるからです。特に産後のうつ病の発症率は10%以上と高いことがわかってきました。うつ病の母親は赤ちゃんと向き合っても、いとしい感情や育児の楽しみを味わうことができません。そうすると母子関係や毎日の育児機能に支障をきたします。また、産後うつ病以外にも、母親は育児に支障をきたす心理的な問題を抱えることもあります。この場合は、母親に対して最も注意深いこころのケアや医学的な治療をすることが求められます。これがうまくいかないと、乳幼児のその後の情緒や社会性、認知や行動面の予後にもマイナスの影響をきたすこともわかってきました。たとえば、子どもによっては小学生高学年になっても、情緒のコントロールができない、衝動性が強い、落ち着きがない、同年齢の友達とうまく強調していくことができない、思春期にはうつ病や素行の障害などの問題もより多くみられるようになります。

このことからも、今の子どもたちが次世代の親となるまで連続して彼らのこころのケアを行えるような縦のつながりの視点が、母子と家族を見ていくうえでは大変重要になります。ここでは、家族のはじまりの時期に特に注目して、乳幼児を持つ母親と家族に対する育児支援について述べていきたいと思います。

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