第33回母子健康協会シンポジウム 「食物アレルギーのお子さん達が健やかに育つように…ガイドライン作成を機会に」
1.「食物アレルギーへの対応の最近の進歩」
あいち小児保健医療総合センター 内科部長 伊藤浩明先生
アレルギー表示制度が進歩してきますと、アレルギー食というよりも、表示をきちんと見て、アレルゲンの含まれていないものを選べばよい、ということができるようになってきたわけですし、一般の食品メーカーも、きちんと原材料を管理して、アレルゲンの入っていないものを普通の商品として流通することができるようになってきました。これで、アレルギー食というのが何か特別なものではなくなってきたわけです。
もう一つの進歩は、小麦アレルギーの方に対して、米粉を使った商品がかなり普及してきたことが挙げられると思います。実は、新潟県が米の消費増加を目指して、米粉をつくる技術をかなり開発しました。細かくて使い勝手のいい米粉ができたことによって、米粉でつくったうどんとか、米粉だけでつくったパンとか、そういうものがかなり一般の商品として製造できるようになった。しかも、今はインターネットで直接購入することが特別なことではなくなってきたという社会的な状況もあって、今では、卵、牛乳、小麦のアレルギーのあるお子さんでも、お母さんがインターネットで注文すれば、誕生日とクリスマスにはちゃんとケーキが食べられるということが、むしろ、標準的なアレルギーのある方の食生活と言えるようになってきています。ですから、アレルギー食というのが何か特別なものではなくて、一つの個性と言ってしまってもいいぐらい、便利になってきたと思っています。逆に言うと、そういうことを利用して、給食も含めたいろいろな対応はずっとやりやすくなってきたのではないかと思います。
ただし、原材料の管理というのはとても大変です。特に米粉のような粉は、小麦粉を扱っている場所で扱ったら必ず粉として混入してしまいます。原産地が外国だったりすると、日本の水準に照らして、アレルギーに対応できるという前提でないところで原材料が生産されていますので、どうしても米粉の中に小麦粉が混じってくるとか、トウモロコシの粉の中に小麦粉が混じってくるとか、そういうコンタミネーションは避けて通れないのです。ですから、商品を選ぶときにはもちろん表示が原則ですけれども、そこには少し注意が必要だということもあります。コンタミネーションによる事故というのは絶えないと言わざるを得ないです。
東日本大震災のときにも、食物アレルギーの方たちは随分苦労されたと伺っています。避難所に行ったら食べるものがない。おにぎりしか食べずに2週間過ごしたとか、そのような方も例外ではなかったようです。ですから、自宅でそういうときのために備蓄をしておく。そのためのレトルトの食品で、しかもアレルギーにきちんと対応できている食品も、実は商品としてはあるわけです。そういうことも含めて、社会的なアレルギー食の対応が普及してきていると思います。