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子どもは、社会で育てるみんなの宝物

東京家政大学ナースリールーム主任 井桁 容子先生

子育ての悩みの背景にあること

これまで、いろいろな子育てについての悩みの相談に乗ってきました。そんな中で、いろいろ話を聞くうちに、悩みの根本的なところは子どものことではなく、結果的にはその人の成育歴、特に母親との関係が大きく影響していたということがよくあります。出産も里帰りせず、産後も育児にゆとりがないのに自分の実家に帰ろうとしないので、それとなく理由を尋ねてみると「母も仕事をしていますので…」とか「介護があるので…」などそれなりの理由はあるようなのですが、どうもそれだけではなさそうなのです。自分の母親に弱音を吐くと「私は頑張ってきたのに、何を甘えているの?!」と、反対に叱咤されて傷ついてしまい、自己肯定感がさらに持てなくなって子育てに自信を無くしてしまったり、「もう子育てはたくさん。自由に生きさせて」と孫の世話を断られたりしているのです。あるとき保護者から子育てについての相談を受けていると、「先生は、いつも子どもの味方なんですね。私の味方になってくれない…」というので、「それはそうですよ、だってお母さんは、こうして自分の気持ちをことばにして、困ったことを解決できるけど、子どもたちは自分の気持ちをうまく表現できないし、表現させてもらえる間も与えられないことが多いですからね。不公平にならないように通訳しておかなくちゃ。」と笑って答えたら、みるみるお母さんの瞳が涙でいっぱいになりました。そして、「私も先生みたいなお母さんに育てられたかったなあ…」というのです。そして続けてこう言いました。「私は、自分の母親の顔色ばかり見て育ちました。どうしたら母親に認めてもらえるか、褒められるかと…。でも、あるときそれが頑張りきれなくなって、お母さん、私はダメな子どもだと思ってあきらめてといったんです。そうしたら、私の母はなんと答えたとおもいますか?それじゃあ、私が恥ずかしいでしょ!!って…。これまで私が頑張らされたのは、私のためではなくて母親自身のためだったと分かって、すごく傷ついて、その後すごく荒れました」

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