寄稿 「こどもの発熱の原因とその対処法」
九州大学大学院医学研究院 成長発達医学分野 小児科教授 原 寿郎先生
微熱にはとくに厳密な定義があるわけではなく、一般的には37・0〜37・9℃で、体熱感がある場合をいいます。体温の個人差がかなりあることを考慮すれば、37・0℃以上でも必ずしも微熱とはいえない場合もあり、また37・0℃未満でも必ずしも平熱とはいえない場合もあります。また、体温には日内変動があり、午前中は低く正午から夕方にかけて最高値に達し、変動の幅が約0・5℃あることも考慮しなければなりません。微熱が長期に持続する場合もあり、微熱が生理的なものであるのか、病的意義があるのかを慎重に見極めなければなりません。
微熱を来たす疾患には感染症、悪性腫瘍、膠原病および類縁疾患、薬剤性、内分泌疾患、中枢神経疾患、脱水、貧血、肝疾患などがあります。そのほかに心因性発熱や詐病があります。微熱は器質的疾患に起因する微熱と器質的原因が認められない機能的な微熱に二分されます。器質的微熱は感染症による感染性微熱と随伴性徴熱(微熱が本来の主症状ではなく、原疾患の治療によっておさまるもの)があります。随伴性徴熱には悪性腫瘍、膠原病および類縁疾患、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、貧血、心不全、脱水などに起因する発熱があります。この中でもっとも頻度の高いのは結核などの感染性微熱です。その他悪性腫瘍、膠原病、薬剤性が多くあります。小児は感染症をはじめとするさまざまな疾患で脱水を来たしやすいことにも留意します。機能的微熱には、感染症治癒後も体温中枢のセットポイントが正常に回復するまでの期間持続する感染後高体温があります。