母子健康協会 > ふたば > No.77/2013 > 食物アレルギーのお子さん達が健やかに育つように…ガイドライン作成を機会に > 食物アレルギーへの対応の最近の進歩

第33回母子健康協会シンポジウム 「食物アレルギーのお子さん達が健やかに育つように…ガイドライン作成を機会に」
1.「食物アレルギーへの対応の最近の進歩」

あいち小児保健医療総合センター 内科部長 伊藤浩明先生

基本的な言葉はたぶん皆さんご存じかと思いますが、アレルギーとは、何らかの食べ物に対して、体の中で免疫的な反応を起こして症状を起こす病気です。その免疫的な反応というのは、単純に言えば、IgE抗体というものが体の中で働いたために起こることで、そのことをアレルギーと言います。では、どうしてある子どもにIgE抗体がつくられてしまうのか、ということの考え方が、ここ数年でかなり変わってきました。食べ物ですから、口から食べてお腹から吸収されて、それが免疫学的に何か間違ってしまって抗体がつくられるというふうに普通は考えられるのです。これまでもずっとそう考えられてきました。

ところが、基本的には人間の体というのは、お腹から入ったものは食べ物で栄養素、自分にとって必要なものですので、本来それはちゃんと体が受け入れる仕組みがあります。それが何かで壊れてしまってIgE抗体がつくられるのですが、最近注目されているのは、「経皮感作」というキーワードです。アレルゲンというのは、実はお腹から入るだけではなく、皮膚からも体の中に入ってくるし、ホコリとして吸い込めば鼻の中からも入ってくる。いろいろなアレルゲンの入り口があります。特にその中で皮膚から入ってくるアレルゲンに対して、IgE抗体というのがつくられやすいのではないかという考え方です。

なぜ、そういう考え方が最近広まってきたかという理由を、二つ、紹介しています。一つは、これは昔からわかっていることですが、今、食物アレルギーで悩んでいるお子さんの75%ぐらいは、赤ちゃんの頃に少なくとも湿疹があったお子さんです。残り4分の1ぐらいは、湿疹が全くなくて食物アレルギーの方がいますが、多くの方は湿疹があった。しかも、比較的長い間、ジュクジュクした湿疹が乳児期前半に続いていた。一時期、ステロイドが怖いということで、そのジュクジュクした湿疹を我慢して何カ月も過ごしていた。その間に強く抗体ができてしまうなどということがよくあったわけです。

これは、私たちが治療していてよくわかるのですが、そういうジュクジュクして抗体ができてしまった赤ちゃんに湿疹の治療をしっかりします。ステロイド軟膏をきちんと塗っていただいて、湿疹をきちんと治してあげると、IgE抗体は下がります――これは、赤ちゃんのうちだけです。大きくなってからは下がらないです。赤ちゃんの湿疹をしっかり治すとIgE抗体は下がる。ということは、最初から重症化させなければ、IgE抗体は上がらなかったのではないかというふうに考えているわけです。

除去食をしてアトピーを治そうというのが昔の発想だったのですが、最近はそうではなく、アトピーをしっかり治すことで食物アレルギーを防ごう。少なくとも重症化してくることを防ごう、という考え方に大きく変わってきています。その考え方が少しずつ普及してきて、ステロイドの怖さよりも、食物アレルギーを残してしまうことのほうが重大だということが、一般の小児科の先生方にも理解していただいたおかげで、重症のアトピー性皮膚炎になって入院しなければいけないお子さんの数が徐々に減ってきていると感じています。いいことだと思います。この成果が将来に向けて、重症の食物アレルギーが減っていくという成果に結びつくように、今、私たち専門医が努力をしているところです。

2番目にこの考え方が一般に浸透したきっかけとなったのは、皆さんも多分ご存じだと思いますが、小麦の加水分解をした石けんを使うことによって小麦アレルギーになってしまった方が、全国で何千人も出てきた。間違いない事実ですね。この方たちは、ずっと小麦は食べていてアレルギーにならなかったのに、そういう食物の成分が皮膚や粘膜から体に入ったことで明らかにアレルギーを発症したということで、明らかにこれは経皮感作、あるいは経粘膜的な感作。石けんで顔を洗いますから、目の結膜から入るわけです。経皮的、経粘膜的な抗原が入ってくることによってアレルギーを発症したという、明らかな事実なわけです。このことで、こういう考え方が生まれてきました。

ですから、食物アレルギーというのは、湿疹の原因になっているという理解をするよりも、湿疹が悪いと食物アレルギーが治りにくいですよ、湿疹は湿疹としてちゃんと治療をしましょう、という考え方がより明確になってきたと考えています。

次のポイントは、食物アレルギーというのはきちんと診断しましょう、正しく診断しましょうということが、ようやく大きな声で言えるようになってきました。治療の原則は、「正しい診断に基づいて必要最小限の除去をすること」ということがようやく言えるようになってきました。

それはなぜかというと、食物経口負荷試験という、病院の中で直接食べていただいて症状が出るかどうかを確認する検査がかなり一般の病院にも普及してきたためです。実際そういうことのできるお医者さんが増えてきて、まだまだ全国的に局在はありますけれども、かなりそれをやって当たり前、それはスタンダードですと言えるようになってきました。血液検査というのは、IgE抗体がありますということの証明ですが、IgE抗体があったらみんながアレルギーの症状を起こすわけではないのです。抗体は陽性であっても、食べて症状の出ない方というのはたくさんいて、それをアレルギーとあえて言う必要はない。ですから、抗体があって、さらに食べたときの症状が確認されて初めて、正しい診断ですと言えるわけです。


IgE抗体がどのくらいの意味を持っているかということを示しているのが、<表1>のプロバビリティーカーブという図です。専門的な図ですので、この意味を完全に理解していただく必要はありませんが、これが何を言っているかというと、抗体価がある程度陽性、例えばこの図で言うと3と書いてあるあたり、真ん中ぐらいの陽性の方で、本当に卵や牛乳のアレルギーと診断できる方は50%ぐらい、ということです。抗体が陽性ということは、ある程度アレルギーである確率は示しているけれども、それだけであなたはアレルギーですと診断できているわけではないということを示しています。ですから、最終的には食べたときの症状を確認することによって診断したことになります。当たり前なんですけれども、この当たり前のことが、ようやく医療としてきちんと提供できるようになってきたと思っています。

次のポイントは、アレルギーとなってしまったからには、きちんと除去をして安全な食事をしていただくことが何よりも大事なわけです。その原則は今でも変わっていません。昔はアレルギー食というと、すごく特殊なものだという感覚がありました。小麦のアレルギーがあると、アワ、ヒエ、キビを食べる。アレルギー食と言うと、ヒエクッキーとか、そういったものを食べるという感じだったのが、今は随分変化してきました。その一番原動力になっているのは、アレルギー食品の表示制度です。これは本当に優れた制度で、卵、乳、小麦、エビ、カニ、落花生、そば、この7品目に関しては、ごくわずかでも原材料に使ってあったら表示をしなくてはならないと義務化されたわけです。義務化されたことによって、裏返して言えば、表示されていないものはその原材料は含まないというふうに読み取れるようになった。給食で責任持ってアレルギー食を提供するためにも、これがなかったら提供できないですね。これがすべてのアレルギー対策を支えているわけです。

母子健康協会 > ふたば > No.77/2013 > 食物アレルギーのお子さん達が健やかに育つように…ガイドライン作成を機会に > 食物アレルギーへの対応の最近の進歩(2)
事業内容のご紹介 協会の概要活動の概要設立の経緯協会のあゆみ健康優良幼児表彰の歴史
最近の活動のご紹介
小児医学研究への助成 機関誌「ふたば」の発行シンポジウムの開催 Link:Glico