寄稿 「こどもの発熱の原因とその対処法」
九州大学大学院医学研究院 成長発達医学分野 小児科教授 原 寿郎先生
体温が上昇している場合、ほとんどは発熱ですが、時に高体温の場合があります。この場合、体温調節中枢の設定は正常ですが、外的な熱曝露、熱放散の障害、熱産生の異常増加などにより、体温が調節可能な範囲を超えて上昇した状態を呼びます。熱中症などがあり解熱薬は無効です。
熱中症
熱中症は高温環境における身体の適応障害によって起こる状態の総称と定義されます。子どもにおいてはスポーツなど運動時に発生しやすいですが、車中などの高熱環境に放置されたりしての事故や虐待(ネグレクト)による発症も少なくありません。熱中症は過剰な熱負荷がかかる環境において、発汗による熱放散が間に合わない状態で発症します。つまり、小児では体温調節機構の未熟性があり、小児に起こりやすくなります。小児は暑熱に対する適応力が劣っているため、発汗による放熱が減少した場合(脱水傾向に陥った状態)は熱負荷が増大しなくても発生します。熱中症では低年齢児ほど、一気により重症型へ進行します。熱中症を疑ったら即刻、運動中止や暑熱環境から涼しい場所に身を置き安静と冷却(頭部を低くして横臥させ、身体を冷水で清拭して、体温を下げる)を図り、水分補給に務めます。軽症では経口的補給で十分とされ、電解質と糖分の含まれたミネラル水に加え、少量の塩分摂取が適しています。脱水を認める場合は、電解質異常を伴った中等度の脱水が存在するために、上記の治療に加え、積極的な輸液を開始します。