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第33回母子健康協会シンポジウム 「食物アレルギーのお子さん達が健やかに育つように…ガイドライン作成を機会に」
4.総合討論(7)

(質問者)エピペンについてほとんど無知なので、本当に申し訳ない質問をしてしまうかもしれないのですけれども、今、早めに使ってしまうのは、一応使ったということになるということでした。早めに使うことによって何か悪影響が起こってしまうとか、体にとってよくないことというのは、ほとんどないと考えてよろしいですか。

海老澤早めにもし何にもない人に打つと、すごくドキドキしてきます。あと、顔が真っ白くなります。さっき話したように、15分たつと元どおりに戻ります。だから、お年寄りで血管が脆弱な方、糖尿病がある方、高血圧がある方、そういう方に関しては安易にそういうものを打つべきではないです。逆に脳出血などの危険があるので、危ないですね。子どもは基本的に血管がやわらかいし、フレキシブルなので、そういう大人やお年寄りよりははるかに安全であると考えます。

あと、エピペンを打つということに関して日本は契約ができないのです。例えばアメリカは、小学校に入るときに、食物アレルギーがありますと言うと、エピペンを持っていないと小学校に入れないです。日本はそういうことはないですよね。それはワクチンも一緒です。アメリカはワクチンを一通り全部打っていないと、小学校へ入れてくれないです。

だから、エピペンを使う、使わないということに関して、アメリカと日本の決定的な違いは、アメリカは、例えば教職員とか、保育園で保育士さんが使った場合、食物アレルギー反応が起きて使うことをお母様方と契約するわけです。「万が一、問題が発生しても罪には問いません」、そういうものを交わします。日本ではそれができません。どうしてかというと、「反復継続する可能性がある」というふうに考えられてしまうから、そういう契約を結ぶことは法律的になかなか難しい。それを妨げているのが医師法という法律で、医師法というのは、医療行為とか医行為と言いますけれども、それを医者以外がやってはいけないというルールなのです。注射を打つというのは医行為に入りますので、それを反復継続してやるというと医師法違反になってしまいます。

ただ、今は救急救命士の業務拡大とか、こういうエピペンというものが出てきて、人命救助という観点から、そういうものは本来だったら変えていかなければいけないわけです。ただ、これは法治国家で、日本の得意技なのかもしれませんけれども、法律の解釈というのを微妙に変えて、根本的な法律を変えないで、ぎりぎりのところで、表から見るとこうだけれども裏から見るとこうだと。そういうことで、緊急避難、人命救助という観点からエピペンを緊急時に使うことはよしとしましょう、そういう解釈なのですね。これは法務省、厚労省、文科省、みんなそういう見解で一致しています。

だから、人命救助あるいは緊急避難のために皆さんが使ったとして、何か発生した場合に、それを罪に問うということはまずないと思います。それは善意の行為としてやったわけですから、善意の行為を罪に問うことは基本的にはないと思います。ただ、法律的に言えば、きちんとそういう契約ができるということを将来は見据えていかなければいけないだろうと。自衛隊と一緒ですね。本来は国軍なのに自衛隊と呼んで、軍隊を持たないということにしている。そういうのに非常に似ていますけれども、その辺の根本的なところを理解して、人命救助の際にはやらなければいけないのだと。

例えば、目の前に倒れている人がいて、どう考えてもアナフィラキシーだと。エピペン処方を受けていましたといったときに、何もしなかったら見殺しですよね。それは別に保育園や学校ではなく、その辺の駅とかで発生しても同じことです。これはAEDも一緒です。心室細動になって助けてあげるということは、誰でもやっていいことになっていますし、そういうものなのですね。だから、エピペンに関してのとらえ方は、ぜひそういうふうに考えておいてもらったらいいのではないかと思います。

先ほど、伊藤先生がおっしゃっていましたけれども、では、保育園でどれだけやる場面に遭遇するか。
多分、ほとんどないと思います。ほとんどないというのを承知で使えるようにしてあるのです。その「使えるようにしてある」ということが非常に重要です。万が一のことというのは絶対にゼロではないから、万が一のときに何にもできないという状況になっていたら困りますよね。そういうものなのだというふうにぜひ認識していただいて、そのためには、症状をどういうふうに見ていくか。先ほど私が言いましたように、呼吸器症状というのは非常に危険なのだという認識を持たれて、救急車を呼んで、その間にもし呼吸器症状が進行してくるような状況だったら使おう、ということをきちんと皆さんが決めてくだされば、それで問題ないだろうと思います。以上です。

前川ありがとうございます。

ほかにどなたか、ございますか。よろしいですか。よろしければ、そろそろ時間になってきましたので終わりたいと思います。

今日のシンポジウムに参加されて、皆様、何か得ることがありましたか?得ることのあった方、手を挙げてみてくれますか?――沢山の手が挙がってますね、うれしいですね。大多数の方が何か得たのだと思います。企画した私としては満足です。

食物アレルギーのガイドラインができたというのは、普及・啓発のための第一歩だと思っています。これを一つの武器にして、いかに全国津々浦々までこの考えを普及・啓蒙していく事がこれからの課題です。海老澤先生、伊藤先生、その他の先生方や僕らを含めて努力していかなければいけないと思います。ファイトです、ガイドラインと本日のシンポジウムが大きなうねりとなって、全国制覇の日がくることを心より祈っております。先生方、特に何かコメントはありますか。よろしいですか。

それでは、これでシンポジウムを終わりたいと思います。

最後に、海老澤先生と伊藤先生に盛大な拍手をお願いします。(拍手)

司会 それでは、皆様、これをもちまして、本日のシンポジウムを終了させていただきます。

改めまして、とてもご熱心にご講演いただきまし
た先生方に、盛大な拍手を、もう一度お願いいたします。(拍手)

〔閉 会〕

講師紹介

前川 喜平(まえかわ きへい)
東京慈恵会医科大学名誉教授
神奈川県立保健福祉大学名誉教授
日本小児保健協会名誉会長
日本タッチケア研究会名誉会長
小児科と小児歯科の保健検討委員会長
東京慈恵会医科大学卒業後、同大学小児科教授、神奈川県立保健福祉大学教授を経て、2010年より衣笠老健施設長
1996年より(財)母子健康協会主催のシンポジウム総括を務める。同協会理事主な著書に「小児神経と発達の診かた」(新興医学出版社)、「乳児検診の神経学的チェック法」(南山堂)、「小児の神経と発達の診かた」(新興医学出版社)など
伊藤 浩明(いとう こうめい)
あいち小児保健医療総合センター内科部長
昭和61年名古屋大学医学部卒業。名古屋大学大学院、テキサス大学ガルベストン校留学などを経て、平成13年よりあいち小児保健医療総合センターアレルギー科医長。平成20年より中央検査部長、平成22年より内科部長。
日本小児科学会専門医、日本アレルギー学会指導医。
認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク副理事長。
著書(共著)
食物アレルギーの基礎と対応 (宇理須厚雄監修、認定NPO法人アレルギー支援ネットワーク編集)株式会社みらい・よくわかる食物アレルギーの基礎知識(環境再生保全機構)
海老澤 元宏(えびさわもとひろ)
国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部長、東京慈恵会医科大学客員教授、
1985年東京慈恵会医科大学卒業後、国立小児病院アレルギー科レジデント、ジョンス・ホプキンス大学ポストドクトラルフェローシップ、国立相模原病院小児科医長を経て2001年より現職。World Allergy Organization(理事)、アメリカアレルギー学会(国際委員会委員長)日本アレルギー学会(理事)、日本小児アレルギー学会(理事)、食物アレルギー研究会(世話人代表)、日本小児科学会(代議員)。
アレルギー物質を含む食品表示、保育所・学校でのアレルギー対策等の国の施策に関与。
主な著書に「食物アレルギーの栄養指導(医歯薬出版)」「子どものアレルギーがすべて分かる本(講談社)」、「子供が喜ぶ食物アレルギーレシピ100(成美堂出版)」、「小児科臨床ピクシス5年代別アレルギー疾患への対応(中山書店)」、「小児アレルギーシリーズ食物アレルギー(診断と治療社)」など。
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