寄稿 「こどもの発熱の原因とその対処法」
九州大学大学院医学研究院 成長発達医学分野 小児科教授 原 寿郎先生
体温は、①年齢、②測定部位、③測定方法・手技、④測定時刻、⑤測定環境などに影響されますが、通常では周囲の温度の変化に大きく影響されることなく、ほぼ一定に保たれています。しかし、個人差がみられるとともに1日のうちでも変動を示します。体温は午前2〜6時ごろが最低で、午後5〜8時ごろにもっとも高くなり、正常では日内変動が0・5℃内外です。年齢、測定部位ごとの正常の状態での測定値が異なります。体温を測る部位は腋窩が多く、赤外線法を利用して鼓膜を使う場合もあります。
A.腋窩温
日本ではもっともよく測定に用いられますが、外層部の温度であり、環境温度、測定の仕方によって値が変動するため、国際的には信頼される測定部位と考えられていません。発熱で末梢血管の収縮や発汗が起こると深部体温よりも低い温度となることがあり、片麻痺があると健側に比べ患側では腋窩温が低くなります。
B.鼓膜・外耳温
赤外線式鼓膜体温計が用いられ、短時間で簡便に測定できることから小児を中心に用いられています。理論的には中枢温(視床下部温度)をもっともよく反映します。しかし測定値の変動幅が大きく、また耳垢(みみあか)は鼓膜温の測定値を低下させるので注意を要します。