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第33回母子健康協会シンポジウム 「食物アレルギーのお子さん達が健やかに育つように…ガイドライン作成を機会に」
3.「ガイドラインの普及と啓発を如何に進めるか」

東京慈恵会医科大名誉教授 前川喜平先生

二.「普及と啓蒙の具体的戦略」

1.全国食物アレルギー専門医療機関連携マップの作成

地域の医療機関を食物アレルギーの経口負荷試験ができる大規模専門病院とできない機関に分け、地域毎に専門医療機関連携マップを作成します。2009年の時点で、小児科学会研修施設の中で246施設が経口負荷試験を行っています。これらの施設と地域の医療機関とで連携マップを作成します。

3年間で負荷試験施設は増加している筈です。食物アレルギー専門病院を中心にして、地域の診療所、保育園、小学校などとの連携マップを作成します。対応はガイドラインに基づいて行います。ガイドラインが全国にかなり普及した後では、この方法は有用です。

しかし、現実はかなり厳しい状態です。そこで考えられるのが次の方法です。

2.食物アレルギー対応モデル地区の作成

現在、食物アレルギーの対応で、ガイドラインに沿って、最も実行されている県は神奈川県と愛知県です。現在、相模原病院アレルギー性疾患研究部が中心となり、相模原市でシステムを構築中です。

また愛知県ではあいち小児保健医療総合センターが中心となり保育園や学校における食物アレルギーの管理が行われております。これらの地域で構築されているシステムをモデルとして、経口負荷試験を実施している医療機関を中心とした地域のシステムを構築します。オセロの駒を反すように、一つ一つ、根気よく地域を塗りつぶしていく必要があります。ことに医師会や地域診療所の先生の考えを変えていくことが重要な課題と言えます。

3.保育園、学校における普及と啓蒙の戦略

校長や園長など上の人をやる気にすることが大切です。校長部会や保育園園長会で講演をするのも方法です。保育士や養護教員はそれから後で教育をします。

食物除去をしている園児や学童については誤食・事故の対応、医療機関への連絡など職員全体で共通の認識を持つようにします。誤食は起こらないのではなく、起こる可能性があるので、対応を常に考えて教育をします。

4.普及と啓発のためのガイドラインの骨子

ガイドラインの骨子は表1に示す通りです。

ガイドラインの骨子(表1)

@食物アレルギーの最初の診断をちゃんとつける:食事日記と負荷テスト、食べて症状がでたか、食物負荷テストを受けたか
A食物アレルギーが関与する乳児アトピー性皮膚炎は生後4〜6か月、離乳食前に対応する、それ以降はアトピー性皮膚炎を治療してからおこなう。アトピー性皮膚炎を治療しないでだらだらと長引かせると、多くの食物に抗体ができ、治療に難渋することがある。
B原因食物決定後の経過観察:必要最小限の食物除去 家庭で行う、少しずつ増量は園ではやらない。食物除去はやるか、やらないかにする
C経口免疫療法:耐性獲得をめざした積極的な治療(伊藤先生講演内容参):なるたけ早期より食べさせるようにする。あまり長期に制限していると、食べられるようになっても食べない。
D食物制限を実施している園児や何かあった時の医療機関への連絡などは全職員が共通認識を持つ。
E食物特異的IgE抗体の正しい理解と活用
F食物アレルギー治癒の診断:どこで治ったかということを、なるべく早く親に伝える。誤食をしないで特異IgE抗体が下がったら、負荷テストを施行する。一般に3歳前後と小学校入学前に施行する。
G食物除去は保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導票を使用して行う。年に1回見直す。(海老澤先生講演資料参)
H病診連携でおこなう。

5.エピぺンの使用:アナフィラキシーの対応

マニュアルではなく、おかしいと感じたら救急車を呼ぶ、その間にエピペンを打つ。園や学校での食物アレルギーの対応は間違いや誤食が起こることを想定して対策を立てる。(海老澤先生講演参)

6.保育園におけるガイドライン

現在までにガイドラインとして表2のものが作成されている。

表2 食物アレルギーガイドライン

ガイドライン
(1)日本保育園保健協議会アレルギー対策委員会編集
保育園におけるアレルギー対応の手引き2011年
日本保育園保健協議会2000円
(2)厚生労働省科学研究班、研究代表海老澤元宏
食物アレルギーの診療の手引き2011
厚生労働科学研究費補助金、非売品
(3)宇理須厚雄、近藤直実監修:食物アレルギー診療ガイドライン2012、
日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会作成2000円
(4)宇理須厚雄、向山徳子、森川昭廣、近藤直実監修食物アレルギー経口負荷試験ガイドライン2009
日本小児アレルギー学会作成1575円
(5)研究分担者:今井孝成:食物アレルギーの栄養指導の手引2011
厚生労働科学研究費補助金、非売品
このうち保育園、幼稚園では日本保育園保健協議会アレルギー対策委員会編集:保育園におけるアレルギー対応の手引き2011年が推薦されます。

※総合討論で保育園では(1)が推薦される。

7.医師への啓発

*医師会講演、学会での講演、医学雑誌、病身連携の推進など
*第13回食物アレルギー研究会 2013年1月27日(日)昭和大学上条講堂 近藤直実会長
*第50回日本小児アレルギー学会会長 海老澤元宏

パシフィコ横浜、2013年10 月19日(土)、20日(日)実地医家向きセミナー等

海老澤、伊藤先生が機会あるごとに講演や雑誌に書くことが必要です。

8.コメデイカル

ふたば 3万部、全国の主な保育園、幼稚園に配布

今回の講演に参加された方や保育園で海老澤先生や伊藤先生にお世話になっている方は、ガイドラインの普及と啓発のために機会ある度に、そのよさをお話してください。

レジメの最後の「保育園での食物アレルギーの対応」というのは、先ほど海老澤先生が詳しく述べましたので省略します。これで私の話を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

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