妊産婦と乳児の精神保健と地域での育児支援
九州大学病院子どものこころの診療部 特任教授 吉田 敬子先生
母親の精神科診断や心理的な問題にはさまざまなものがみられますが、母子と家族から見た精神面支援での共通する着目点は、
1)まず母親の精神面について、育児を主に母親が担えるかどうか、育児機能の視点から評価する。
2)母親の心理的な問題や病態にかかわらず、育児能力が今あるかどうかにかかわらず、わが子に対する情緒的な絆がどのくらいあるか、わが子がかわいいと感じているかどうかを把握する。
3)その母親の夫や実母などの関係が良好かどうかを把握して、家族が母親に対して受容的で育児支援をしていく力があるかを見極める。
4)乳児の側に育てられにくい医学的な疾患や状態があるか、であると思います。
これが本稿で述べた3つの質問票をうまく活用し、子どもの状態を把握するとほぼ包括的に把握できると考えています。
多領域多職種によるケアと治療ストラテジーは、その他の状況におかれている妊産婦にも適応できるものが多く、ドメスティックバイオレンスの被害者、特にそのリスクの多い10代の妊産婦のケースでは、福祉機関と連携することも必要な場合があります。さらに今後は流死産や不妊治療を経験して出産した女性の心理と病理などの理解とケアについても適用できることが多いと考えています。