第33回母子健康協会シンポジウム 「食物アレルギーのお子さん達が健やかに育つように…ガイドライン作成を機会に」
2.「保育所における食物アレルギーの対応」
国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部 部長 海老澤元宏先生
海老澤よろしくお願いします。私は、今の伊藤先生のお話を受けて、保育所における食物アレルギーの対応と、誤食時の対処の方法に関してお話ししたいと思います。今日は、皆さんにお配りしたレジュメのほうに大体のことは書いてあるので、それを参考にしながら聞いてください。
伊藤先生からお話があったように、食物アレルギーというのは、赤ちゃんのときにアトピー性皮膚炎を伴って発症してくる方が非常に多いということと、それが離乳食を始める頃になると、食べて皮膚が真っ赤になったり、咳が出たり、「即時型症状」と言いますけれども、そういうものに変わってくるわけです。そこで、皆さんが担当しなければいけない保育所では、どういうお子さんたちが入ってくるのかというところから最初に説明したいと思います。
「表1:臨床型分類」を見ていただくと、新生児・乳児消化管アレルギー、これは新生児期と乳児期で、下痢、血便の症状を呈して、これは主に人工栄養で起きてくるのですけれども、この方々を皆さんがお預かりする頻度というのは非常に少ないだろうと考えます。ただ、生後3カ月ぐらいとかでも、便にもし血が混じるとかそういうようなことがあったら、食物アレルギーの一病型でそういうものもあるということを知っておいてください。通常、生後1週間以内ぐらいに多くは問題になります。
食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎、これが一番食物アレルギーの発症のパターンとしては多くて、生後3カ月以内ぐらいに顔面の湿疹から始まります。乳児のアトピー性皮膚炎の定義というのは、2カ月以上、慢性に経過するというのが一つポイントになるのと、もう一つは、かゆみがあるということです。したがって、かゆみがあって2カ月以上継続するような場合に乳児のアトピー性皮膚炎を疑います。乳児のアトピー性皮膚炎にすべて食物アレルギーが合併しているわけではないのですが、かなりの割合で食物アレルギーは合併しています。乳児アトピー性皮膚炎を、スキンケアとステロイド外用療法をやっていてもなかなかよくならない場合——3年前のレジュメに書いてありますけれども、フローチャートで、きちんとそういうものに沿って対応しても、なかなかよくならないような場合、食物アレルギーの合併があって、先ほど伊藤先生がおっしゃっていた、
IgE抗体が検出できるようになってきます。そういうお子さんたち、例えば卵や牛乳にIgE抗体の反応があるのに、それを知らないで離乳食で与えてしまうと、いきなり症状が出るということになります。ですから、早い段階で、食物アレルギーが合併しているのかどうかということと、アトピー性皮膚炎がキチンとコントロールできているかどうかというこの2つ、大変重要になります。
即時型食物アレルギーというのは、ここには「乳児〜幼児」と書いてありますが、乳児ですと、人工栄養を与えたときに全身が真っ赤になる、牛乳アレルギーの最初の即時型発症というのはそういうことで見られることがありますし、日本で一番頻度が高
い卵などは、離乳食を始めたときに与えて症状出現ということも、きっと初発になるでしょう。さらに、小麦(うどん)を与えたときにじんま疹が出たとか、そういうことで発症することがあります。もちろん、そばとか、魚とか、ピーナッツとか、ほかにも原因になるものはあります。ただ、頻度から言うと、圧倒的なのはやはり卵、牛乳、小麦です。
それと、「特殊型」と下に書いてありますが、保育所で多分問題になるのは、果物アレルギー、口腔アレルギー症候群で、「幼児期〜成人期果物・野菜など」になります。幼児期の口腔アレルギー症候群というのは大人と少し違います。大人の場合には、先に花粉症があって、シラカバとかハンノキという花粉に反応があって、それで、バラ科の果物、例えばリンゴやナシなどを食べると症状が出るという順番なのですが、小児ではもともと食物アレルギーがあるお子さんが、卵、牛乳のほかに果物アレルギーを合併していて、口の中に入れると症状が出るということがあります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーというのは、大体、小学校以上が多いです。ですから、保育所ではあまり問題にならないのではないかと思います。ただ、一応病気の概念だけは知っておいてほしいのです。例えば小麦を食べても、動かなくておとなしくしていれば何ともない、しかし、2時間以内ぐらいに激しく動き回ったりすると症状が出る。ですから、かなりの量を食べた状態でないとこのアレルギーは起きません。うどんを1人前食べるとか、パン6枚切りを1枚食べるとか、ほんのちょっと食べて症状が出るというよりも、しっかり食べて運動して症状が出るということです。これは非常に稀な疾患で、中学生で6、000人に1人ぐらいというようなデータがあります。
以上の大体のまとめを皆さんが頭の中に入れておいていただくと、とても理解しやすいだろうと思います。