1.戸外環境としての園庭利用の実態

世界ではじめての園、キンダーガーテンを唱え、幼稚園の父とも呼ばれるフレーベルは、『幼稚園における子どもたちの庭』において、「自然をよく知り、それと融合することは一面から見ると、個々人ならびに全人類の実りの多いかつ祝福に満ちた教育および陶冶の確たる基礎なのである」と、庭という自然の中での教育の重要性を唱え、「幼稚園の思想は、必然的に一つの庭を要求し、さらにこの庭の中に、子どもたちのためのもろもろの庭を要求する」(下線部 筆者)と述べ、園庭の中にさまざまな機能を果たす場があることの必要性を述べています。また日本の幼児教育の父と言われる倉橋惣三も「遊園は幼稚園の設備の中で最も充分なる条件を完備しうる場、最も良き保育の場は「広き遊園」である」と「婦人と子ども」14巻7号1914において述べています。国際的にみても、日本においても、園庭は歴史的に子どもの発達と教育において極めて重要な場として認識されてきています。

では、戸外環境としての園庭の実態はどうなのでしょうか。戸外環境の重要性については、さまざまな研究がなされその必要性が述べられてきていますが、筆者らは日本で初めて、全国の1740園の回答を得て園庭利用の実態調査を2016年に実施しました。そこで明らかになったことは、園の保育形態にもよりますが、幼児は1日に少なくとも2時間以上は戸外を利用している園が最も多いことがわかってきました。6-8時間と大半を使っている園もあれば、1時間以内と限られている園もあります。そして戸外において何を目的にしているのかを調べた結果明らかになったのは、自然を生かした活動を行うことはどの園でも重視しているのに対して、体力や運動能力を育てることを重視している園と、疑問に思ったことや園にあったことややってみたいことを行うことを重視する園というように、重視することが園によって同じ戸外活動でも違っていることでした。

また都市部等では園庭のない園もありますし、また園庭だけが戸外のすべてではありません。図1は、地域活用というところから戸外のどのような場を活用しているのかを2018年に全国1230園に調査した結果です。公園だけではなく田畑やあぜ道、神社や教会と同時に小学校、水族館、図書館などが活用されていることがみえてきました。

そこでの活用目的としては「自然に触れあう」「季節感を味わう」「体を思い切り動かす」「感性を育てる」などの目的を選択する園が多いことも示されてきました。

図1.園が最もよく活用している地域の場所とその数 ①

図1.園が最もよく活用している地域の場所とその数 ①

図1.園が最もよく活用している地域の場所とその数 ②

図1.園が最もよく活用している地域の場所とその数 ②

【引用参考文献】

  1. 秋田喜代美・辻谷真知子・石田佳織・宮田まり子・宮本雄太(2018)「園庭環境の調査検討―園庭研究の動向と園庭環境の多様性の検討」東京大学大学院教育学研究科紀要,5743−66.
  2. 秋田喜代美・辻谷真知子・石田佳織・宮田まり子・宮本雄太(2019)「園庭環境に関する研究の展望」東京大学大学院教育学研究科紀要、58,495−533.
  3. 秋田喜代美・石田佳織・辻谷真知子・宮田まり子・宮本雄太(2019)『園庭を豊かな育ちの場に:実践につながる質の向上のヒントと事例』.ひかりのくにp128.
  4. 辻谷真知子・秋田喜代美・宮田まり子・石田佳織(2021)「未就学児保護者の近隣戸外環境活用に関する認識―大学キャンパスの入構制限に着目して―」国際幼児教育学会,第42回J17,66−69.(オンライン)
  5. 宮田まり子・秋田喜代美・辻谷真知子・石田佳織(2021)「保育所近隣にある大学構内の入構制限による影響:―コロナ禍における都市部保育の実態調査から見えた構造的課題」国際幼児教育学会第42回,J33,126−129.(オンライン)