イントロダクション「2020年を振り返って」(4)

それから、2番目に正しい情報や知識の重要性です。毎日のようにいろいろな情報がマスコミを通じて伝わってきました。その中には、いろいろな、不安をあおるような情報もありましたし、逆にそれが非常に正しかったこともあります。その中でどういうふうに正しい情報を得て、その知識を選んでいくのか、そういったことが非常に重要だったなと思います。

そして、感染対策は決して答えを教えてくれるわけではありませんので、現場、現場でそういう情報を整理して工夫して感染対策を実行しなければなりませんでした。そういう意味で、その知識を工夫して実行する力というのが試されたかなと思います。私たちの病院でも毎週のようにみんなで会議をして、そこでいろいろと議論して対策を決めていきました。

最後にクエスチョンとするのは、これからワクチンの接種等が始まるようですけれども、まだまだ乗り越えなければいけないことが多々あると思います。そこで私たちもそういう経験の中で育っていくのではないかなと思います。

2020年に新型コロナで経験したこと

私は今、日本小児科学会の代表をさせていただいておりますけれども、2020年5月にちょうど保育所、幼稚園、学校再開後の留意点についてということで発表をさせていただいた声明があります。その中で非常に強調したことは、感染対策を徹底した上での、ここは学校となっておりますけれども、保育所も同じだと思います。誰もが感染する可能性があるということです。社会の中の存在であれば、今は必ず感染する可能性はあります。しかし、必要な感染対策を粛々とやっていくということが大事なわけです。

2番目に、感染者や関係者が責められることのない社会が大事だということを訴えました。誰かが感染したからといっても、それはその人の責任というよりも、それはやはりやむを得ないことですので、感染者があるいは関係者が例えばクラスターを発生したからといっても、ちゃんとした感染対策をやっていたのであれば、それはやむを得ないということです。

そして、私たちが非常に強く訴えたかったのは、幸いにも子どもが重症化しないということもありますので、むしろ休園や休校がまず子どもに与えた影響を考えたいと思いました。つまり、子どもにとってやはり毎日の生活が、保育園・保育所を中心にして生活している子どもにとってはやはりその生活の場が奪われるということになります。

また、保護者の方や、社会に及ぼした影響というのもやはり考慮する必要があると思いました。そういう意味で、学校とか保育所を最初閉鎖したりしたということはやむを得ないことだと思っていましたけれども、十分な知識の上で、やはりそういうところを開いて子どもたちの生活をできるだけ保障するということが大事じゃないかなと考えました。

もちろんそれは流行の状況にもよりますので、もっと流行が残念ながら広がったという場合にはまた考えなければいけませんけれども、必ずしも子どもたちが医学的な証拠によれば感染の中心にはなりませんので、そのことを大人としても考えていただきたいということを訴えました。

「新型コロナウイルス感染症に対する保育所・幼稚園・学校再開後の留意点について」2020年5月

私のイントロダクションは以上ですけれども、また後ほど皆様の御質問には答えたいと思います。どうもありがとうございました。