4.子どもたちのリスクマネジメント能力を育む
3に述べてきましたように戸外の自然環境は、これから求められる多様な能力を培う貴重な場です。ですが一方で室内よりも、予想を超えたリスクも秘めているために、安全管理、リスクマネジメントがとても重要になっていくとも言えます。遊具等の扱いから痛ましい事故も報告されています。そのためにどうしてもリスク要因を取り除くことに目が向かいがちですし、安全ガイドラインやマニュアルも自治体や園では準備されていると思います。しかし子どもたちが自分たちで自分の身を守る能力を育てることもまた大事なことと言えます。「安全のための配慮」において「子どもがどの程度の運動能力と危険回避能力をもつのか、どのような状況で事故が起きやすいかという見通しをもてないと、ハザードがもたらすリスクを強く感じすぎて『気をつけて』の声かけ、あるいはさらに遊びの制止や中断をしてしまいがちになります。遊びのなかに潜むハザードやリスクに気づく感受性と観察力をもつことによって、子ども自身が自分で遊びを楽しみながらリスクを予知して自分で身を守れる能力を指導して育てていくことも、戸外環境の中で育てていきたい能力ということができるでしょう。
図5.遊具の本質として内在するハザード
【引用参考文献】
- 秋田喜代美・辻谷真知子・石田佳織・宮田まり子・宮本雄太(2018)「園庭環境の調査検討―園庭研究の動向と園庭環境の多様性の検討」東京大学大学院教育学研究科紀要,5743−66.
- 秋田喜代美・辻谷真知子・石田佳織・宮田まり子・宮本雄太(2019)「園庭環境に関する研究の展望」東京大学大学院教育学研究科紀要、58,495−533.
- 秋田喜代美・石田佳織・辻谷真知子・宮田まり子・宮本雄太(2019)『園庭を豊かな育ちの場に:実践につながる質の向上のヒントと事例』.ひかりのくにp128.
- 辻谷真知子・秋田喜代美・宮田まり子・石田佳織(2021)「未就学児保護者の近隣戸外環境活用に関する認識―大学キャンパスの入構制限に着目して―」国際幼児教育学会,第42回J17,66−69.(オンライン)
- 宮田まり子・秋田喜代美・辻谷真知子・石田佳織(2021)「保育所近隣にある大学構内の入構制限による影響:―コロナ禍における都市部保育の実態調査から見えた構造的課題」国際幼児教育学会第42回,J33,126−129.(オンライン)