新型コロナ感染症と子どものこころ(4)
関東大震災ぐらい古い時代になりますと、朝鮮半島の方々が毒をまいたみたいなデマが伝わって、そういう方々を殺害してしまったという物すごく凄惨な事件がありました。最近は正確な情報が多くなり、透明化が進んできたことによって、そういうことまでいくようなことは少なくはなってきていると思いますが、やはりSNSに頼る若者たちにとって、SNSによる情報でデマが拡散していくというようなことも出てくるということになってきていると思います。
長期にわたっているので、最初に申し上げたようにみんな疲労感が出てきているなどというのも社会心理的な状態、つまり子どもを取り巻く環境に影響していると思います。
学校の状態を、時々患者さんで来ているお子さんたちに聞いてみると、結構「つまらない」という反応もあります。もちろん、普通だよと言う子どもが多いんですけれども、中につまらないというお子さんがいます。何でかなと言うと、やはり先生方がさっきの過覚醒で、感染対策でぴりぴりしておられるんですよね。だから子ども同士がちょっと近づくと、ほら、離れなさいと言われてしまう。そういうところで、子どもたちに怒っている先生が増えてしまったということで、つまらないとか学校に行くと怖いとかという子どももいます。不登校のお子さんで、少し学校に行ける状況になってきたのに、先生がぴりぴりして怖いのを見て、また行かれなくなってしまったというお子さんもおられました。
多くの学校で、もちろん全部の学校がそうとは言いませんが、学校の先生方がぴりぴりして、余裕がなくなっていて、お子さん方の声を聴くということが少なくなってしまい、子どもたちの声がなかなか聴かれていないということもあります。こうしなさい、ああしなさいが多くて、子どもたちがこんなこと困っているとか、「どうして?」という疑問との声を聴いて、それに対応しようという余裕が少しなくなっているように思います。子どもたちがちゃんと説明されて、そして自分たちでどうしようというふうに考えたりするような子どものエンパワーメントがなされていないというところが、学校での大きな子どもたちの問題と思っています。
3.予防的に動いた学会等の対応例
日本小児科学会、日本子ども虐待防止学会、日本子ども虐待医学会という3つの学会が共同で、去年の4月に、そういうことがあっては困るだろうということで情報発信しました。日本小児科学会かこの3学会のホームページを見ていただくと出ていますので、興味があったら見ていただければと思います。これはちょうど休校だった時期につくったものなので、現在の状況にはちょっと合わない部分はあるかもしれません。でも、基本に伝えたいメッセージは同じです。
「がんばっているみんなへ 大切なおねがい」ということで、新型コロナウイルスというのが、子どもたちにはあまり重症化はないし、そんなに心配することはないんだけれども、子どもたちからおばあちゃんやおじいちゃんにうつるということがちょっと心配なので、今、休校になっていますよと、当時はその話が出ています。そして、みんないらいらするようになってきてしまう。おうちの中で本当にお母さんやお父さんがいらいらして暴力的なことがあったら、SOSを出していいんだよということで、189に連絡しましょうねということも書いてあります。
それから、うつってしまったお友達を差別してはいけないんですよということに関しても書かせていただいていますし、世界中みんな頑張っているんだよということも伝えて、一緒に頑張ろうねというような形で説明しています。こんなことが起きるかもしれないということで、メッセージをつくらせていただいています。
同時に親向けのメッセージで、親御さんが自分のいらいら度を判断して、イライラの温度計を提案しています。
いらいら度を判断して、リラクセーションをしていらいら度を下げるというようなことをやってみましょうとか、こんなふうにしたらいいですよと、10項目ぐらい親御さん向けのメッセージを出しています。興味があったら読んでいただきたいと思います。同時に、同じ日に厚生労働省と文部科学省への要望を出しています。