子どもたちの闘病姿勢に学ぶ

40年前にも病態告知はありましたが、病名告知については保護者の拒否感は強いものでした。ほぼ全ての保護者は、「白血病とは言わないでほしい」、「〇〇がん」という言葉は使わないで説明してほしいというものでした。現在では大部分の保護者が、「正確な情報を子どもに説明してほしい」と言われるようになりました。長期生存率の向上や、小児がん治療の現場の支援体制の充実が大きな要因だと思います。緩和ケアチームは終末期の支援ではなく、診断時からの多職種支援体制であり、患児と家族の総合的サポート体制であることが認知されてきた証拠だと思います。

以前のことかもしれませんが、成人患者さんの場合には、病名を知った途端に闘病意欲をなくした例などが知られていたと思います。個人的にも告知の有無で闘病姿勢が変化したこと経験しましたが、小児がんの子ども達の闘病姿勢は時代に関係なく、常に前向きで本当に立派なものでした。私たち医療者が学ばせてもらいましたし、時には大人として自分の生き方が恥ずかしくなるようなこともありました。治療薬による脱毛や嘔気・嘔吐に対する拒否はなく、その場その場で保護者の期待に応えようと一生懸命に頑張ってくれました。

終末期に高校受験を3日後に控えているからと勉強していた中学生には、心の中でもう無理しなくていいんじゃないかなと伝えましたが、言葉には出せませんでした。普段は無理ばかり言って家族を困らせていた小学校高学年女児は、救急外来で息が止まる寸前に「お母さん、ごめんなさい」と告げて亡くなりました。短い人生である宿命を受け入れ、最後の最後まで前向きに頑張る姿勢を目の当たりにし、自分にその時が来たときに、こんなに立派な姿勢で旅立つ準備ができるのだろうかと思います。まさに人生の師が病気の子どもたちでした。