新型コロナ感染症と子どものこころ(3)
2.子どもの環境の変化
子どもは環境によって左右されることが非常に多いわけですから、環境の変化ということをしっかりと捉えておかないといけないだろうと思います。
どんな環境の変化があるかなと考えるために、新型コロナ感染症をCOVID-19というわけですけれど、COVIDによる社会心理的影響ということを考えてみます。まず先ほども不安ですよねと言いましたが、新しい感染症なので、不確実性への不安があります。どうなるんだろう。今まで存在するものであれば、大体こうなりますよというのがわかっているので、例えば専門家などがそれを伝えれば、あ、なるほど、そうなるのかということで安心できるという部分があるわけです。しかし、この感染症は新しいので分かりませんと言われると、さらに不安になるということがあります。
それから、ステイホームということが言われるということで、先ほど言いました孤立化して、閉塞感、孤立感というのが高まってくる。
また、感染予防のための緊張もあります。常に感染から自分の身を守らなきゃ。あるいは、もっと言えば家族の身を守らなければ。あるいは、子どもたちと働いている方々は、子どもたちの身を守らなきゃということが物すごく強い緊張感を強いるわけですよね。それが常に覚醒レベルを上げて、緊張して生きていかなきゃならない、過覚醒状態になるのです。その背景にもう一つあるのは、例えば学校とか保育園とかどこでもそうなんですけれども、感染者を出してはいけないというような形での過緊張、過覚醒ということが起きているということも言えるんではないかなと思います。
過覚醒状態になると人間はどうなるかというと、当然ずっとぴりぴりしているわけですから、何かちょっと気になることがあるとすごいいらいらしてきたり、すぐにそっちのほうを向いてすぐに対処しなきゃならないということで、すごく動きが多くなったりします。その結果、ちょっとでも何かあるとすごくいらいらして、それは駄目でしょうと、子どもをどなったりということが出てきがちです。
ですので、その中にいる、つまり、この環境にいる子どもたちの中には、常に怒られているとかどなられているとかという印象の中で暮らしている子どもたちもいます。また、子どもたち自身もある程度分かってくると、自分たちで何とか感染を防がなきゃということで、子どもたち自身が過覚醒状態になっているということも決して少なくないと思います。
そして、生活が困窮してくるグループがある。そういう状態になると、今後の生活への不安ということも出てくるということが、社会的には出てきているわけです。
更に、繰り返されるテレビなどからの情報の問題もあります。毎日毎日、繰り返されます。割と健康な方々は自分でうまく取捨選択して、安心できる範囲を探していくんですけれども、毎日毎日の情報をうまく取捨選択できない方々というのは、自分が制御できない情報を上手く遠ざけることができず、それだけでだんだん不安が高まったり、鬱状態になってしまうということもあります。例えば、今、医療崩壊、医療崩壊と毎日のようにテレビで言われていると、コロナにかかっちゃいけないというだけじゃなくて、ほかの病気にもなっちゃいけないということで、すごく緊張されてしまう、不安になってしまう、鬱になってしまうという方々もおられるということになってきます。そして、これが、自分が頑張れば何とかなるよというものではないものですから、どうしても無力感が出てきてしまう。
そして、こうやって閉塞感があって孤立感もあり、過覚醒の状態にあり、緊張しながら生きていくと、さっき申し上げたようにいらいらしてくる。そして、その怒りのはけ口が欲しい。ということで、他者への攻撃が強くなってきて、いろいろな形で攻撃をしてくる。これがともすると感染した方々への攻撃という形で出てきてしまいがちなんです。コロナにかかったということは、決して悪いことではないわけです。かかってしまったら、みんなからケアを受けなきゃならない立場になった方々なのに、その方々への攻撃が向いてしまうということは、あってはならないことなんですけれども、怒りのはけ口が欲しいという社会的な心理的な状態の中で、この攻撃性というのも出てきてしまう。
そして、デマが起きたり、攻撃が集団化する危険性があります。ただ、昔に比べれば、かなり情報が正確に入るようになってきて、情報の透明化ということもあって、このデマによる問題というのは少しずつ少なくなってはいるとは思います。ただ、例えば熊本の地震のときに、動物園からライオンが逃げたみたいな話がデマとして伝わっていったみたいなこともありました。今回もよく見ていると、とんでもないものがコロナに効くんだというようなデマが、ずっと流れているというような時期もありました。それは正確な情報が流されることで大分収まってきてはいると思いますが、やはりそういうデマ情報が伝わっていく危険性というのもあると思います。