5.おわりに

以上、戸外環境としての園庭の活用の実態と筆者らの調査で見えてきた知見としての戸外環境の多様性の経験の保障の重要性を紹介してきました。そしてそれらが子どもたちにこれからの社会にも求められる多様な能力を身体面、知的面、社会情動的面、また特にレジリエンスや環境への感受性などの意識を育むことを述べてきました。しかし戸外環境は、室内環境にくらべて安全管理の意識から見るとリスク面も高いために制限がかかりやすいことも述べてきました。デジタルネイティブの子どもも、人間という生物として地球環境の中で共生していくことを学び育つためには、自然環境、戸外環境での体験が求められます。心身の健やかな成長とWELLBEINGのために、改めて自然環境、戸外環境への大人側の創意工夫や専門的見識が問われていくのではないでしょうか。地球規模での環境保全意識を小さい時から遊びの中で培っていける子どもたちを育みたいと願うところです。

【引用参考文献】

  1. 秋田喜代美・辻谷真知子・石田佳織・宮田まり子・宮本雄太(2018)「園庭環境の調査検討―園庭研究の動向と園庭環境の多様性の検討」東京大学大学院教育学研究科紀要,5743−66.
  2. 秋田喜代美・辻谷真知子・石田佳織・宮田まり子・宮本雄太(2019)「園庭環境に関する研究の展望」東京大学大学院教育学研究科紀要、58,495−533.
  3. 秋田喜代美・石田佳織・辻谷真知子・宮田まり子・宮本雄太(2019)『園庭を豊かな育ちの場に:実践につながる質の向上のヒントと事例』.ひかりのくにp128.
  4. 辻谷真知子・秋田喜代美・宮田まり子・石田佳織(2021)「未就学児保護者の近隣戸外環境活用に関する認識―大学キャンパスの入構制限に着目して―」国際幼児教育学会,第42回J17,66−69.(オンライン)
  5. 宮田まり子・秋田喜代美・辻谷真知子・石田佳織(2021)「保育所近隣にある大学構内の入構制限による影響:―コロナ禍における都市部保育の実態調査から見えた構造的課題」国際幼児教育学会第42回,J33,126−129.(オンライン)