新型コロナ感染症と子どものこころ(10)
質問への回答
御質問をいただいているので、ここで御質問に対して少しお話をさせていただこうと思います。
質問1 「保育園でマスクで対応しているのをどう考えたらいいか」
結構多くの方々から、いただいております。表情が見えない。これで大丈夫なんだろうかという御質問でした。
保育園もそうなんですけれども、私も実は乳児院という場所でも少し関わらせていただいているんです。保育園以上に、乳児院は24時間ずっとマスクの顔しか見ていないのです。先ほど格差の話をしましたけれども、少し言葉が遅れているお子さん、言葉の獲得がなかなか難しいお子さん、あるいは表情を読み取るのがあまり得意ではないお子さんほど、やはりマスクの問題で言葉の獲得が遅れたりというようなことが起きているように私は感じています。正確なデータがまだ出ているわけではないんですけれども、そこのところは、私も非常に心配しているところです。
確かに特に乳児院なんかでは、結構先ほども出てきた障害を持っている、あるいは疾病を持っているようなお子さんもおられますので、とても不安になって、マスクをずっとしてしまうということがあります。これは考え方なので、私が言っていることが正しいというわけではなく、個人的な見解になるのですが、乳幼児期の1年というのは大人の10年以上に当たるとよく言うんですけれども、やっぱり1年がとても大切なのです。発達の上でとても大切な1年ということになります。ですから、1週間、2週間、あるいはせいぜい1か月、2か月の間だったらば、まだいいかもしれませんけれども、1年以上にわたってずっとマスクの人としか接していないということは、非常に大きな問題ではないかと私も思っています。
これは、推奨できることかどうかというのは非常に問題があるかもしれないんですけれども、私自身は、マウスシールドを使うのも致し方ないかなと思っています。マウスシールドは、不織布のマスクに比べるとかなり感染予防の効果は少ないです。少ないんですけれども、でも、着けないよりはましということがあります。布マスクで鼻を出しているぐらいなら、マウスシールドでもよいかもしれません。お食事で「もぐもぐ」を教える時とか、言葉を適切に伝える時には小声で話すことを前提にマウスシールドを使うことも許されて良いと思います。ただ、フェースシールドがありますよね。フェースシールドはもともとは目を守るものですので、結構下のほうにウイルスが落ちていってしまうということもあるので、できればフェースシールドよりは、マウスシールドほうがいいのかなと思います。どのような対応をするのかはてんびんだと思います。子どもの発達と感染予防をどうてんびんにかけるかです。特に子どもは感染することもさせることも少ないですので、そこも考慮しても良いと思います。現在の知見を理解した上で工夫をしてみても良いのではないかと思います。
なお、子どもはマスクの必要はないと言われています。少なくとも2歳以下は、するほうが危険です。それから、5歳以下はマスクをしなくていいということは、WHOも出しています。ですので、子どもはする必要ないと思います。
本来、集団の場合は、週1回PCRの検査をするみたいなことがあれば、もう少し予防できるのかもしれません。週1回PCRをやったからといって、70%かPCR検査も当たりませんので100%ではないのですけれども、毎週行えば、手当てになるんだろうと思います。今、まだそういう段階に日本の国はないので、そういう集団の生活の人たちには定期的にPCR検査をするという段階までいっていませんので、残念ながらそれはありませんが、いずれはそういう形ができてくる必要があるのかもしれません。
質問2 「コロナの問題があるときのメンタルヘルス、そしてその支援は」
これに関しては、先ほどずっとお話をさせていただきました。特に保育園での支援ということを考えますと、子どもの表情、子どもの状態にまず敏感になることだと思います。おうちでいろいろなお母さん、お父さんの問題があって、毎日来ていた子どもの表情が何となくここのところ曇っているとか、そういうことに関して敏感になってあげて、大丈夫かなということを考えてあげることが大切でしょう。
同時に、先ほど災害後の問題についてお話をさせていただきましたが、お母さんたち、お父さんたちの精神状態というのが、子どもさんたちに非常に響きますので、お母さんやお父さんへの支援も大切です。大丈夫ですか、本当にこういう状態でつらいですよね、といった日常の会話の中で、少しお母さんやお父さんの御相談に乗っていただくということが、子どもたちのメンタルヘルスにも非常に重要だということになると思っています。
ということで、御質問にもお答えさせていただきました。本当は、皆さんとお会いして、会場でお話をしたかったんですけれど、これこそ新型コロナウイルス感染症のおかげでこのような形になってしまいましたけれども、またどこかでお会いできたらうれしいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。