イントロダクション「2020年を振り返って」(3)
さて、この2020年の新型コロナで私たちがどんなことを経験してきたのか、少し私なりに、自分自身が感じたことも含めて書いてみました。左の上からずっと縦に見ていっていただければいいのですけれども、まず最初に、私どももやっぱり未知の感染症に対する不安というのが非常に強くありました。一体どうやって感染するんだろう、感染したらどうなるんだろう。最初は本当に分からなかったから不安です。ですけれども、先ほどお話ししたように知識を蓄えるにつれて、徐々にそれに対する対策もできてきました。
そして、まずは自分への感染の不安です。皆様もそうだったと思います。自分がうつったらどうしよう。例えば電車の中で咳をしている人の隣に座っただけでも、何か大丈夫かなと思ってしまう、そういったような気持ちがあると思います。
もう1つは、皆さんお仕事をされていて、家族にうつす不安というのもお持ちだと思います。自分が感染することで家族にうつしてしまうのではないか。特に御家族の中に高齢者の方がいらっしゃる方の不安というのは、やはり非常に強いと思います。
それからあと1つの大きな不安は、家族から訴えられる不安です。つまり、私たち医療者に関して言うと、例えば病院でコロナをもらってしまうのではないかという家族から大丈夫なのということを聞かれます。あるいは、人によっては、そんな仕事をするのは危ないから辞めてくださいと言われるというようなことも報道で聞きました。
ですけれども、そういう訴えられるというのは、仕事をしなければという非常に強い使命感で仕事をしている人たちにとっては、かえって大きな精神的なストレスになると思います。そういったこともあったと思います。
それから、今度は真ん中の段にいきますと、感染対応というのは本当に疲れると思います。通常はしなくていいことをいっぱいしないといけない。本当にそれに対する身体的な疲労もあると思います。また、そういう感染対策の細々したところに注意しなければいけないということによる緊張からの精神的な疲労感もあると思います。
そして、第1波が来て第2波が来て第3波、流行が続くことへの精神的な疲労感もあると思います。そして、不安の中で1つ大きい、特に管理をされている皆様の場合に非常に大きな不安は、もし職場で発生したらどうなるんだろう、そういう不安もあると思います。
それ、右上に移りますけれども、そうする中で私たちの中の気持ちとしては、そういう感染のリスクから逃げたいなという気持ちも正直あると思います。
また一方で、これは私どもの病院の看護師さんなんかでもそうだったのですけれども、子どもへの罪悪感ですね。それはどういうことかというと、要するにコロナが陽性だということをお子さんに対したときに、十分にしてあげられない、要するに感染をしているのでこちらが感染対策をしなければいけないので、十分にしてあげられないということへの罪悪感です。もしかしたら保育園でも子どもたちにいつもどおりの保育、例えば、抱っこしてあげたりとかいろいろ本来やりたい保育ができないということへの罪悪感というようなものの、もしかしたらおありになったのかなと想像しています。
それからまた職場等では、ソーシャルディスタンスをとるということで、やはり人と人が孤立しやすいという状況があります。お昼ご飯も一緒に食べてはいけないわけですし、仕事が終わった後の会食もいけないわけです。本当にそういう意味では、人と人とがつながってはいけないような困ったウイルスですけれども、そういう中で孤立感を乗り越えてどういうふうに人と人がつながるかというのも大事なことになります。
それから、最後に、先ほどの職場で発生したときの不安の1つの要素としては、やはり感染者への偏見・差別、そういったことへの非常におそれというものもあると思います。本当にこういういろいろなことを毎日考えながら生活していただいたというのが2020年ではなかったかと思います。
ただ、一方で、こういう経験をしながら皆様のところでも、ある意味ではいろいろ試練が多かっただけに、学ばれてきたことも多いのではないかなと思います。
私自身は、1つはやはり感謝、あるいはそうやっていろいろな困難に立ち向かっているスタッフへの敬意、そういったものの大切さを非常に感じる1年間でした。本当に、私は、自分の病院のスタッフの皆さんが本当によくやってくれたことに感謝をしています。