質問への回答とまとめ

質問への回答

最後に私のほうから頂いた質問にお答えしながら、シンポジウム全体のまとめをしてみたいと思います。

質問1 「保護者に保育園のリスクをどのようにお伝えするのがよいのですか」

私は、多分保育園に預けるということに関して、保護者の方、いろいろな不安を持っておられるのだと思います。それはやむを得ないと思います。

ただ一方で、先ほども御説明したように、保育園に通う子どもの生活も守らなければいけないと思っています。絶対に感染しないという方法はありません。感染対策を徹底しても、社会の一部である以上は家庭でも保育園でも感染のリスクはあります。しかし、今までの医学的なエビデンスからすると、大きなリスクではないというふうに考えられてきています。

先ほどもお話しましたように、3月からは学校が閉鎖されました。これは、例えばインフルエンザなどの流行の際には、学級閉鎖・学校閉鎖が行われている、そうした点から発想されたものだと思います。インフルエンザでは保育や学校などの感染が、家庭への感染へと広がり、社会への感染を拡大するということが分かっています。私も昨年のこの段階では、学校は閉鎖したほうがいいだろう。保育園も部分的には閉鎖したほうがいいだろう、安全だろうと思っていました。世界中がそう思っていました。

しかし、その後はっきりしてきたことは、新型コロナウイルスは子どもにはかかりにくいということです。最初は中国で報告されました。もしかしたら中国は、皆さん子どもを大事にして外に出さなかったのかなと思いました。しかし、その後、ヨーロッパでも同様でした。そしてアメリカでも同様ですし、日本でもそのとおりです。つまり、子どもたちは新型コロナウイルスにはかかりにくいわけですし、非常に軽症の方ばかりです。無症状あるいは軽症の方ばかりだということが分かってきました。

ヨーロッパでは、川崎病様の心臓に障害が出るような、あるいはアメリカでもそうですけど、そういったようなタイプがあるということが知られていますけれども、幸い日本では、その頻度は非常に低いというふうに考えていただいていいと思います。つまり、これまでのところでは子どもはかかりにくくて軽症であるということです。

したがって、感染のリスクは社会の中で決して保育園が特別に高いということではありません。そういう意味で、社会の中で生きている以上は感染の可能性はある。しかし、保育園がすごくかかりやすいことではないのだということは、保護者の方にお伝えいただければいいのではないかと思います。

質問2 「子どもは親が陽性にならない限り、発熱や風邪症状が続いていても検査されず、まあ、PCR検査を受けないで、園内ではいわゆる風邪が広がっていると。子どもが軽症や無症状で広げている可能性はないのか。そこから保護者、家庭内や職員へ広がっている可能性はないのか」

これはもっともな御質問だと思います。先ほどお話したように、子どもたちは軽症や無症状の方がいます。正直症状から新型コロナかどうかということは分かりません。そして、もしそこから保護者あるいは職員の方にうつったらどうなるんだろう、そういう御心配だと思います。

これも、可能性はなくはないと思いますけれども、幸いなことに、子どもからの感染力については、必ずしも強くないということが分かっています。恐らく感染力が強ければ、子どもたちの保育園あるいは小学校の場合、もっとクラスターが発生しているはずだと考えられています。

また、海外での最近のデータからも、大人から子どもにうつしてしまった率はかなり高いと考えられていますけれども、子どもから大人にうつる率はやはり少ないと考えられています。そこは断定的なことは、はっきり言うことはできないのですけれども、いろいろな研究の成果から、やはり子どもの感染力はそれほど強くないのではないか。子どもから大人がうつされるという可能性はそんなに高くはないんじゃないかと全体としては考えてよさそうな研究の成果が出ています。

少なくともインフルエンザのように、あるいは感染性の腸炎のように、子どもからうつりやすいということはないと思います。

そして、クラスターが起きてしまうのが心配で不安になりますという御意見もあります。そして、子どもたちにとって1番大切なものは何か、そういったような御質問もいただいています。

私は病院で働いていますけれども、新型コロナウイルスでクラスターが起こりやすいのは、正直病院と介護の場所が圧倒的に起こりやすいということがこれまでの経験で感じています。本当に全国の報道を見ていますと、高齢者の介護の施設、あるいは高齢者の病院でやはりクラスターが非常に起こりやすく、1回起こるとなかなか対応が大変ということが分かっています。

しかし、先ほどもお話したように、保育施設はクラスターが起こりやすいということはないという傾向ははっきりしていると思います。起こらないということではないですが、起こりやすくはないということです。

しかし、社会の中どこでもやはりクラスターは起こっているわけですので、決して保育所がクラスターが起こりやすいわけではないですが、安心はできません。今できることをやって、そして子どもたちにとって1番大事なことは、やはり子どもたちの生活を、いつもどおりの生活をしてあげるということだと思います。

子どもたちは成長する大事な時期を日々過ごしているわけですので、皆様の施設で生活する毎日の生活が子どもたちの成長や発達を支えています。その生活をどうやって守るかということが最も大事です。

もちろん先ほどもお話したように、感染がさらに爆発すれば、そういう子どもたちが集団になるということもできないこともあり得るのかもしれませんけれども、それは本当に最後の手段であって、基本的にはやはりクラスターが起こりにくいという環境が分かってきていますので、子どもたちの生活をどうやったら守れるかなということを大人としては工夫していきたいなと思います。

もちろん無症状の子どもからもらう可能性もあるかもしれませんけれども、通常の感染対策をしていただければ、その可能性がものすごく高いということにはならないのではないかなと考えています。

もちろん、また変異株の話が最近出てきてこどもが感染しやすいのではないかなど、いろいろな不確定の要素があり、新型コロナに関しては100%こうだということは言えません。ですけれども、私たちは毎日今できることは何だろうと考えて、絶対なんていうことは誰にも言えないわけですので、できることをやっていくしかないかなと考えます。

それで万が一、どのような形で、例えば身近なところに感染が起こったときに、やはりその方を責めるとかいうことはなく、接していきたいと考えています。

いろいろと今後も不安なことがいっぱい皆様の生活の中でおありになるかと思いますけれども、そして、このシンポジウムでも決して断定的な何かこう解決策をお示しすることはできませんけれども、私としては、皆様が最初にお話ししたように日頃から子どもたちの生活を守るためにこうして保育を続けていただいていることに改めて感謝をして、そしてこれからワクチンが入ってきますので、それによってまた子どもたちの生活、普通の生活がより取り返すことができるようにということを強く願って、私のお話を終わりにさせていただきたいと思います。引き続き皆様の子どもたちへの御支援をお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。