新型コロナ感染症と子どものこころ(7)

それから、被災後2年目に養育の状態を聞いて、3年目にどうなったかなというのを見てみると、お子さんたちに関わりが乏しいとか、肯定的な養育でないとか、こういうのも差が出るのかなと思ったら、意外にそちらは差が出なくて、体罰というのが大きな影響が出ていました。これも2倍近い問題になっています。

被災後の養育とCBCL 総合的問題行動

パンデミックも一つの災害ということが考えられるわけで、先ほど来、貧困の問題というのもありましたが、災害というのが起きたときには、必ずいろいろな意味で格差が生じます。災害前には支援システムで何とか小さい格差で済んでいたのが、この格差が広がっていくというのが災害によって起きることなのです。ですから、こういうふうに災害によって脆弱化していく御家族、お子さんたちに対して、何らかの支援を早めにしてあげて、ここがどんどんこうやって下のほうに行ってしまうということがないようにしてあげないといけないということが言えると思います。

災害後かならず起きる格差の増加

一方で、多少上に向かっていく方々もいるわけですね。プラスの側面としては、今も緊急事態宣言が出ている地域もありますが、緊急事態宣言が出ていると、家庭でのお仕事に結構なっています。私の場合は、家庭での仕事ができる職種じゃないので通っていますけれど、やっぱり電車はすいてきているように思います。

ということは、家で仕事している方々が多くなっている。家族の親密度が高まって、家族のコミュニケーションが増えて、在宅でのお仕事をしているお父さん、お母さんを見ていて、あ、お父さん、お母さん、こんなお仕事をしているんだと身近に感じられたとか、お子さんが手伝いすることが多くなって、お料理なんかが一緒にできるようになったとか、例えば共働きの家庭が多いわけですから、お父さんもお母さんも外で働いて帰ってきて、子どもにぱぱっとお料理を作ってお子さんに食べさせていたというような御家庭が、お父さん、お母さんがおうちにいるようになって、お父さん、お母さんがお料理をして、お子さんもそのお手伝いをするみたいなことで、お子さんたちがいろいろなことができるようになったというような報告もあり、それがプラスに繋がることもあります。

また、遠隔教育があったことで、自分から調べるようになったということもありました。それから、友達と会えないことで友達の大切さを再認識したとか、家族で感染したらどうしようとか、重症になったらどうしようとか、いろいろなことを一緒に話すことができるようになったという家族もいます。これは附属かもしれませんけれども、それまで結構いじめられた子が、割と去年の数か月の休校時期におうちで癒やされて、お子さんと御家族の間がうまくつながって、回復されたというお子さんも中にはいました。

「自粛」のプラスの側面

脆弱家庭のお子さんへの影響です。経済的な問題で親御さんがいら立つとか、精神的な問題を持っていた親御さんの不安や鬱の悪化ですとか、夫婦仲の問題。ずっと家にいて距離が取れないことで争いが多くなったとか。親の不安の増加が、いら立ちとして子どもに影響したとか、子どもも外の居場所がなくなっていら立つとか。先ほども少し自殺のところでもお話ししましたけれども、そういうことがあって、脆弱家庭のお子さんほど、問題が多くなって、結局虐待的な状況になったりというような格差の問題もあります。それからお金の問題でもこういう格差が起きてきているということも含めて、心理的な格差、経済的な格差、全て格差が広がっていくんだということは意識しておくべき問題であろうと思います。

脆弱家庭の子どもへの影響

もう一つ、もともとの脆弱性として、障害とか疾患という問題があります。障害や疾患を持った子どもたちへの影響です。特に医療的ケアを受けているお子さんたちは、やはりコロナ感染を起こしちゃいけないということで、親御さんたちも、自分たちが家にコロナを持って帰ってはいけないと思うので、物すごく緊張されておられる方も多いです。特にほかの人と会えない状態になり、先ほどの「孤立化」が、より強まっている場合もあります。もともとこういうお子さんをケアされている中で、ほかの人に分かってもらえないという孤立感を抱いている方々は、少なくないと思います。それに加えてコロナの問題でほかの人との接触をしないということで、孤立感が高まっていくということもあります。

それから難聴のお子さんたちです。マスクで言葉が読み取れないことでの疎外感ですね。みんながマスクをしているわけですから、これは物すごく疎外感があるだろうと思います。

それから発達障害のお子さんです。自閉スペクトラム症と言われるお子さんたちの場合は、感染症に関して独特の認知をしている場合があります。とても奇妙な認知の中で不安が高まって、いらいらしてきている。よくよく聞くと、物すごく強く、感染を起こしちゃいけない、感染があった場所には行っちゃいけないという認識を持っていたり、その他の独特の認知を持っていたり、感覚過敏でマスクをつけられないということもあります。

ADHDのお子さんは落ち着きない行動ですから、家の中で、割と狭いおうちで、落ち着きない子が一日中いたりしたら、家族はいら立つわけです。休校のときは一日中いるということでしたけれども、今でもお父さんやお母さんがおうちで仕事をしている。そこにADHDのお子さんがいるというと、なかなかいらいらしてきてしまうということにつながっている場合もあります。

もう一つ、虐待あるいはネグレクトとかいろいろな問題でアタッチメントの問題を持っていたりトラウマを負っているお子さんたちというのは、不安や鬱というのが強くなりますし、ひきこもりが多くなります。下手すると、その中で自傷、自分を傷つける行動が起きてきたり、自殺企図が増加したり。この問題を持っているお子さんたちのケアも非常に重要なものになってくると思います。

脆弱性(障害や疾患)を持った子どものへの影響