5.おわりにかえて―ふれあいは人の一生を支える

乳児期の発達課題は、人生における基本的信頼感を獲得することであり、老年期の発達課題は、人生における英知を得て人生を「統合integrity」することであると言われています。

この人間性の発達段階とライフ・タスク(参考)という考え方と理論を開発したエリク・エリクソンの妻ジョウンが晩年の著書の中で、「統合integrity」の語根がTact(触覚)であり、その派生語に触れ合いcontact 、つなげるtack、触れるtouchがあることを、驚きと深い感動とともに指摘しています。彼女は「触れ合いなしには成長はない。事実、触れ合いなしに生きることは不可能である。」(中略)「人生の出発点から我々は基本的信頼感という恵みを与えられている。それがなければ、人生を生きることは不可能であり、それがあるからこそ我々は生き続けてこられたのである。」【文献9】と述べています。

人間性の発達段階とライフ・タスクおよび人間の強さ 参考(図8)

人が生まれ、肌と肌の触れ合いの中ではぐくみ育てられ、その人生の旅路を終えて天に召されるまで、人を支え続ける「触れ合い」を、わたしたちも日々の人とのかかわりの中で大切にしていきたいものです。

タッチケアが親子のかけ橋になり、日常の親子の生活の中に楽しく愛情深い豊かなふれあいが増すこと、オキシトシンをはじめとする育児支援ホルモンに支えられ「安らぎと結びつき」を感じながら育児が行えること、そして、人の一生の根幹を支える基本的信頼感が確かに子どもの中に育ち、親も子どもも大きく成長することを心より願っています。

最後に、写真掲載にあたりましては、ご提供いただきました皆様に、感謝申し上げます。

引用文献

9.エリクソンEH,エリクソンJM.村瀬孝雄・近藤邦夫(2001).ライフサイクルその完結,みすず書房.前書きⅷ.p.164

10.岡堂哲雄監修(1983).小児ケアのための発達臨床心理.へるす出版 p.8.